『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  217

2014-02-26 08:14:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 事は確実な足取りで進んでいる。パリヌルスとオキテスは。顔を合わせてうなづきあった。
 『パリヌルス、お前のところはメンバー編成を終えたのか』
 『それはまだだ。あれから俺はアレテス、ギアスとの打ち合わせで多忙であった。もう、トピタスがメンバーを決めていると思っている』
 『いざ仕事にかかるとなぜか忙しい』
 『そりゃ、そうだろう、手落としなくことを進める、気が休まなくなる。そんなものだろう』
 『お前と俺とが手がける仕事で大変なのは舟艇の建造だ。仕事を吟味して遂行せねばならん』
 『エノスの時と違うのは、船を造る用材が違うことだ。あの時に使った用材は、杉、檜の類だ。しかし、今度は使う用材が変わる。材質の違いを充分に考慮しなければならん。俺たちが判断を誤ってはいけないのが、用材とその材質だ。吟味の上の吟味だ。樹木調査隊の者たちに樹木見本を持ち帰る指示をしておいてくれれば何かと都合がいい』
 『その件は、マクロスとソリタンと打ち合わせ済みだ。安心してくれ』
 『さすがだな、オキテス。お前に抜かりがない。万事、うまくいく』
 パリヌルスは、会話を交わしながら、頭の中では、ソリタンのハシケを思い浮かべていた。『よしっ、あのハシケをあらゆる角度から見てみよう。何か手がかりを得るかもしれん。それから、次にスダヌスが来た折に彼の持ち船を見てみよう。これが俺のやる調査の第一歩だ。用いる用材が構造に関係して新しい技術を生み出す』彼は意中に研究の足掛かりを設定した。彼は、他の者が為しえない研究の手がかりを握りしめた。爪が掌にくい込むほどに拳は強く握りしめられていた。『これさえおさえれば、舟艇建造の仕事の9分9厘はできたも同じだ』と意志を固めた。これで踏み出す一歩の不安の一つを取り除いた。
 彼は、舟艇建造こそ、この集団の重要な仕事と位置づけて考えていたのである。建国の遠大な構想を打ち立てるには、いい樹木の繁茂する土地、肥沃な大地、自然資源、地下資源に恵まれている土地であることが望ましいと考える集団の中の一人であった。


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