『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  218

2014-02-27 07:13:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そういえばそうだな。ここのところ、スダヌスが姿を見せていないな。あ奴元気にしてるかな?』『そうだ、俺は元気だ』あのだみ声がしたような気がした。彼は振り返った。そこには木の枝が風に揺れていた。
 『おいっ、パリヌルス、どうかしたか』
 彼は『いや』と答えて、オキテスのほうを向いた。
 『俺か。ふと考え事をしていた』
 『なに、考えごと?何をだ』
 『あの方角時板に使っている南北を指す鉄棒の事だ』
 『な~んだ、あの鉄棒の事か。そういえば、あの鉄棒の由来について聞いたことがないな』
 『この際だ、今度、軍団長に聞いてみる。オキテス、これから浜に行って、トピタスとメンバーの事について打ち合わせてくる』
 『判った。あれこれ考えているより、生むは易い』
 『そうだな』
 二人は、それぞれの持ち場に向かった。オキテスはオロンテスところへ、パリヌルスは、浜で待つトピタスのところへと足を向けた。
 『おう、トピタス、どんな具合だ。決めたのか』
 『え~え、決めました。メンバーはこの通りです』
 トピタスは、名前を連ねて書き記した木板を手渡した。
 『おう、これか、いいだろう。このうちの3人を明後日、風風感知器班の樹木調査隊に同道させる。オキテスとは話がついている。明日、時を見て、オキテス隊長か、マクロス班長に引き合わせて、段取りを打ち合わせてくれ。以上だ』
 『判りました』
 『それから、今日、夕飯を済ませたら、その10人を連れて、軍団長の宿舎の前に集まってくれ。俺は先に行っている』
 『判りました』
 『何か聞いておきたいことがあるかな』
 『いえ、いまは別にありません』
 『樹木調査が終わり次第仕事にかかる。その時になって、詳細を説明する。それでいいな』
 『え~え、それで結構です。隊長、私は、沈着冷静、用意を周到にして作業にあたります。宜しくお願いします』
 『判った、よろしくな』
 パリヌルスは、トピタスの仕事に対する姿勢の一面をそこに見た。『一歩前へ』を確信させるひと言であった。『これなら仕事を託せる』と安心した。
 彼は、波うちに際にたたずんだ。目線を小島のほうへと移した。ハシケがこっちに向かってくる。ハシケの上には漕ぎ手二人とギアスとサクテスの4人の姿を認めた。
 ハシケが指呼の距離に近づく、船上のギアスとパリヌルスの目があった。どちらともなく手を高くかざして振った。


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