『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY     第6章  クレタ  49

2013-03-08 14:21:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ギアスは、島の西側へと舟艇を向かわせた。浜で探索をしている間に海の様相は変わっていた。穏やかさが消え、波頭が風に散っていた。強めの西風である。舟艇の操作は、櫂と操舵が頼りである。クレタ島までの長い船旅で、ギアスの舟艇操作には慣れがあるようになっていた。ギアスは風と海の状況を読み取り、未知の海域を進む心配りを忘れてはいなかった。彼は岩礁の危険を避けて北上した。
 この小島は、逆三角形状でクレタ島に面している外周3.7キロ余りの小島である。この時代、この島に名前があったかなかったか、それは定かではない。彼らが探索を行った浜は現在のNEA KYDONIAと呼ばれている地区であり、島は現在THEODOROI島と呼ばれている。
 ギアスは操艇に懸命であった。島の北側の方向転換点までには時間がかからなかった。ためらわずに舳先を東に向けた。島の北側通過もあっという間であった。舟艇は島の岸に沿って南下した。船上の者たちは島の東南側の浜を丹念に眺めた。西側、北側の浜に比べて浜としての使い勝手がよさそうに見えた。舫っている船の数が多い。彼らはその舫っている船から、ただならぬ不穏な臭いを嗅ぎ取っていた。
 『ギアス、もういいだろう。船首を東へ向けろ。帰途につこう』
 イリオネスが声をかけた。
 舟艇は進行方向を変えた。ギアスは風を読みとって帆を上げた。


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