彼は、時を知って航走した距離を知ることであった。
薄日でもいい、雲の切れ間からのぞいてほしい、太陽の位置を知りたい、雨の来る前にそれをやり遂げたかった。
彼は、陽の位置がここら辺りだろうと考えられる空の一点から目をはなさず、雲の切れるのを待った。例の方角時板を手にして待った。南北については、鉄の棒磁石で正確といかないまでも見当をつけていた。あとは瞬間の薄日でいい、影の方向だけである。
次の一手は、右手に見えるであろう島影である。彼はこの二点に意識を集中した。彼は船尾のカイクスを呼び寄せた。
『カイクス、どんな具合だ。航跡を見て、船が蛇行しているかいないかだ』
『それでしたら安心してください。いま、その徴候はありません』
『次は、右手に島影が見えないか。島影が見えたらすぐに連絡してくれ』
『判りました』 カイクスは船尾にとってかえした。
来たっ!雲の切れ間だ。陽が射しかけている、太陽の姿を捉えた。彼はこの機を逃さなかった。まさに瞬時の幸運であった。太陽の位置から推し量る時間、方角時板の影の伸びる方向も確かめた。この二つからおおよそではあるが、時刻の見当がついた。あとは浜を出てから航走した距離の算出であった。彼は右頬に雨滴を感じた。
薄日でもいい、雲の切れ間からのぞいてほしい、太陽の位置を知りたい、雨の来る前にそれをやり遂げたかった。
彼は、陽の位置がここら辺りだろうと考えられる空の一点から目をはなさず、雲の切れるのを待った。例の方角時板を手にして待った。南北については、鉄の棒磁石で正確といかないまでも見当をつけていた。あとは瞬間の薄日でいい、影の方向だけである。
次の一手は、右手に見えるであろう島影である。彼はこの二点に意識を集中した。彼は船尾のカイクスを呼び寄せた。
『カイクス、どんな具合だ。航跡を見て、船が蛇行しているかいないかだ』
『それでしたら安心してください。いま、その徴候はありません』
『次は、右手に島影が見えないか。島影が見えたらすぐに連絡してくれ』
『判りました』 カイクスは船尾にとってかえした。
来たっ!雲の切れ間だ。陽が射しかけている、太陽の姿を捉えた。彼はこの機を逃さなかった。まさに瞬時の幸運であった。太陽の位置から推し量る時間、方角時板の影の伸びる方向も確かめた。この二つからおおよそではあるが、時刻の見当がついた。あとは浜を出てから航走した距離の算出であった。彼は右頬に雨滴を感じた。