『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  513

2015-04-24 06:47:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 食卓には、この季節にクレタの山野に自生している山野草でにぎわっている。火であぶった羊肉、大きさが不揃いながら、土鍋で炒り焼かれた淡水魚が山と盛られていた。
 腹を空かせた五人は、酒を酌み交わし、日常、口にしない卓上の食材を口に運んだ。この地方独自の調理法でしつらえられている山野草、それらの独特の味を味わった。
 彼らの口をひきつけたのは、淡水魚の炒り焼きである。薄めの塩味が心地いい。彼らは自分たちの非日常を味わった。
 アヱネアスが一同に話しかける。
 『つれづれに想い、考えるのだが、食べ物を調理する、新しい味わいを創る。これも文化文明のうちかなという想いがする。遠い未来かもしれないが、調理、調味が文明だと言うような時が来るのかと考える』
 『そうですな、長~い長~い時を経て、その様な時が来るかもしれませんな。食べ物の味が舌に慣れ親しんでくる。変化を望む、味に変化をもたらす、新しい味わいを創りだす。すると、そういえるかも、あくまでも<かも>ですよ。オロンテスの焼いているパン、あれは文化だという誇りは持っていますが』
 イリオネスが、相槌を打った。
 彼らは山の味を堪能した。気分は満ち足りていた。
 アヱネアスが一同に声をかけた。
 『諸君、今日はご苦労であった。この山行の目的の一つは為し終えた。神殿の神官が私に話した言葉、いい言葉だ。それを皆に伝えておく。<今日ありて、未来が扉を開く、そして、時代が連なる>だ。感動したな。我々の命脈が途切れることなく連なり、事を為していく。神官が話を締めくくった言葉だ。いい言葉だ、俺は感動した。それともう一つ。祈りだ。神官が言う。<祈りだ。祈りは力を持っている。それは願望であるからだ>俺は、祈りが願望達成のメカであり、システムであると理解した。これが私が君たちに贈る言葉だ。受け取ってくれたまえ』
 『統領、ありがとうございます』
 力いっぱいの拍手が食堂内にこだました。
 宿坊の主人が、とぎれとぎれに聞こえてくる言葉に心がゆすぶられた。夕食の座がはねた。彼らが寝場所に案内されていく、宿坊の主人がクリテスを戸外にひっぱていく。クリテスに問いただした。
 『クリテス殿、どういうことだ、説明してくれ。あの人たちは、いったい誰なんだ?え~っ!』
 『あの方ね。ご主人気になさることはありませんよ。仕事を取り締まっている頭です。船造り集団の頭領です』
 『そうですか。気になったものですから』
 『そんな、気にすることはありません。ところで、明朝、山頂で昇る太陽を迎えたい、空模様はどうだろうね?』


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