『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY        第6章  クレタ  2

2012-12-22 08:50:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は、『統領!』 と呼びかけ、二言三言、言葉を交わして、従者を呼び、主だった者たちを集めるよう指示した。
 『軍団長、どちらに集めましょうか』
 『そうだな、二番船のそばあたりがいい』
 『判りました』 従者は急いで指示されたように一同の招集を終えた。
 『集まれだと、判った』
 怪訝だと思ったが、胸に抱いている不安に気がついた。軍団長と同様の不安を感じていたのである。一同は揚陸した二番船の船陰に集まった。統領とイリオネスはクリテスを伴なって、一同のところへ姿を見せた。イリオネスが皆に声をかける。
 『おうっ!諸君ご苦労であった。よくぞ長途の波濤を乗り切ってくれた。我々は、いま、目指したクレタの地にいる。全く知らない土地である。君たちも不安であろうと察している。しかし、我々にとって幸いなることは、このクレタ生まれのクリテスがいることである。彼から話を聞いて、二、三、打ち合わせてておこうと思っている、いいな。立っていては話もできない、腰を下ろそう』
 一同は円く座を取って腰を下ろした。アエネアスが一同を見渡した。月の光では一同の表情がかすかにうかがえるだけである。彼はおもむろに話し始めた。
 『一同、よくぞがんばってくれた、ありがとう。心から礼を言うぞ。エノスを船出して、今日、陽が落ちていたとはいえ、このクレタ島に着いた。エノスをあとにした者たちがひとりも欠けることなく、全員、無事にこの地に上陸した。本当にご苦労であった』
 彼は、ひとりひとりの手をとって、感謝の気持ちを伝えた。


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