『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第8章 クレタ離脱 110

　オキテスが営業の航海から帰着して一夜が過ぎる、朝を迎える。
　朝行事の浜は、常の賑わいを見せている、オキテスが航海の疲れもみせず姿を見せている。
　アエネアスを囲んで６人の顔がそろう、イリオネスが一同に声をかける。
　『おう、一同、おはよう、いい朝だ。オキテスも営業の航海から帰ってきた。今日、打ち合わせ会議をやる。場所は、統領の宿舎の前庭だ。一同で昼食を一緒する。以上だ。今回の打ち合わせから、ドックスが同席する』
　『了解しました』
　一同が答えて場を解く、各自の持ち場へと散る。
　オキテスとドックスが連れだって去っていく。
　『ドックス、朝めし一緒しよう』
　『いいですね、話をしたい、その思いでいました』
　『解った、場の者ら一同元気かな？』
　『はい、総員、極めて元気です』
　『それは重畳！』
　オキテスとドックス、建造の場の者ら一同と朝食を共にする、オキテスが一同に声をかける。
　『おう、８日間留守にした。一同変わりなく元気か！？』
　『おうっ！おうっ！元気です！』と一同が答える、ドット歓声が沸く、彼らの朝食が終わる。
　オキテスとドックスが始業前の船台の場で話し合う。
　『おう、ドックス、変わりはなかったか？』
　『はい、業務は順調に進行しています。四日前にガリダ方から、建造及び軍船改造の用材の受け入れを済ませました。三日前から軍船の改造業務にかかっています。五日後には、軍船の帆柱の用材が届きます。派遣製材担当が軍船の浜で業務についています』
　『そうか、業務が順調に展開している。朝めしの場で一同の顔を見た、元気溌剌ではないか。作業が始まったら巡回する』
　『解りました』
　場が動き始める、二人は席を立つ、建造の場の巡回に歩を進める、オキテスがじっくりと見て廻る、場の者らに声をかけながらの巡回を終える。
　『オキテス隊長、私、軍船の浜のほうへ行きます』
　『そうか、俺もいく』
　二人は休むことなく軍船の浜へ歩を運ぶ。
　軍船の浜では、パリヌルスが監督指揮して業務を進めている。パリヌルスがオキテスの姿を見とめる、声をかける。
　『おう、オキテス、ごくろう』
　『おう、やってるな、作業の進み具合は？』と言って、軍船の浜の光景を見まわす。
　『おう、うまく進んでいる』
　軍船４隻を裏返して船底を上に向けての作業風景である、船体が大きいだけに作業の大変さが感じられる。
　これらの軍船４隻ともパリヌルスがエドレミドにおいて、トロイの軍船の港として管理していた折に手掛けて建造した船である。
　船体構造等についてはよく知り尽くしている。それだけにパリヌルスは、作業を順調に進展させていた。