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『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  21

2013-05-23 09:13:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 西へ進む舟艇には、そよっとした向かい風であった。スダヌスら浜頭連が舟艇に乗り込んで感じたことは、船足の早いことであった。
 スダヌス浜頭が大声を発した。 
 『パリヌルス殿、これは何と!』驚きの声であった。
 『この船足の速さは。速いっ!また、あの船尾の三角帆は?あれは何ですか、向かい風であるのにかかわらず、邪魔になってはいない』
 『今のところ、あの三角帆の効果効用はつかめていません。まあ~、かっこづけといったところでないですかね』
 ハニタスがパリヌルスに声をかけてきた。
 『パリヌルス殿、向こうに小島が見えますな。あの島の対岸に船をつけてください』
 『判りました』と答えて、ギアスに指示を出した。
 『ギアス、あの小島の対岸に艇をつけてくれ。あの小島はどうだ。舫っている船は五隻ぐらいか、気にすることはない』
 パリヌルスは、『今日の小島』と言いかけて、はっとした。舟艇は浜を離れて、目指した浜に到着するのにさほど時間を要しなかった。まさに、あっという間の船旅といったところであった。
 『パリヌルス殿、速かったですな。これだけの距離を、この時間で、それも向かい風だというのに、俺は感心したぜ。こんな船がギリシアにあるのかね』
 『いやいや、この船は、ギリシアにはない。ここだけだ。しかしだな、ないことはない、あっても四、五隻だな』
 パリヌルスは言いよどんだ。
 『そのうえ、浜へもこの上がり方だ。いったい何なのだ』
 『それはギアスから聞いてもらいたい、あいつの操船の腕だとも思える』
 『パリヌルス殿、そうかな?それは少々違う、と俺は思うが。如何かな』
 『浜頭には、すっかり読まれましたな。船の構造がそのように作られていることは間違いありません。この話は、また、のちほどゆっくりとしましょうや』
 『判った。先ず候補地の問題を片づけよう』
 船上の者たちは浜に降り立った。ハニタス浜頭が、じいっと、小島の様子に目を凝らしている姿を、パリヌルスは見逃してはいなかった。