ユーミン2枚目のオリジナルアルバム。1974年のリリースで、前回紹介した「昨晩お会いしましょう」から7年前に遡る。松任谷由実に改名後、半年に1枚という驚異的なペースでアルバムをリリースしていた時期があり、7年間で10作も作ってしまうパワーはものすごい。
勝手な私の捉え方だが、デビュー作の「ひこうき雲」から引き続き、当時としては非常に洋楽的、ヨーロッパ的なサウンドを創り出している。例えば「サーフアンドスノー」のようにポップなアルバムとは対極にあって、静かであっても地味ではなく、何度も聴き込ませる魅力を持っている。
このアルバムは実は「あの日に帰りたい」がヒットした後、たまたまその荒井由実のアルバムをレコード店の店頭で見つけて、でも当時はラジカセしかもっていなかったので、唯一”カセットテープ”で購入したアルバム。もちろん後年CDを購入したが。ラジカセもモノラルだったので、ステレオで録音されたすべてを楽しめていたわけではないけれど、本当に「擦り切れる」まで聴いたアルバムだ。
昔はユーミンの実家が八王子にあるとかそういうプロフィールを知らなかったので、モトネタなんて知ることもなく、歌詞の世界を自分なりにストレートに受け入れていた気がする。1曲目の「生まれた街で」は、冒頭のキーボードとベースがユニゾンでリードメロディを奏でるイントロがカッコよく、歌詞もラブソングではなく”自分の居場所””アイデンティティ”をテーマにしていて、ある意味ショックを受けた曲なのだ。
今となってはどの曲もスタンダードになりつつあるが、「瞳を閉じて」「海を見ていた午後」などはすごく繊細なアレンジと切ないメロディーや歌詞に打たれたし、「旅立つ秋」や「私のフランソワーズ」はシングル「翳りゆく部屋」への荘厳な印象がある。
このアルバムやデビュー曲に収録されているものは、ほとんどユーミンが10代で作ったものだと思われる。尾崎豊がその代表曲のほとんどを10代で書いたのと同じ、驚くべき早熟な天才だと思う。
もちろんキャリアを重ねていく中で、あくまで私自身の感性の変化に因るのだが、いまひとつのれないアルバムもある。しかし、そんな中にも必ず1曲はその当時キャッチーに感じたり、ずっと聴き続けることになるものが存在する。彼女を凄いと思うのは、今日まで時代に寄り添いながら、時にはリードしながら音楽を創り続けていること。「昨晩お会いしましょう」よりもさらに古い時代のこのアルバムが、今でも私の古ぼけた頭をリフレッシュさせる力があることに、驚きと感謝を覚える。