歴史好きの息子に感化され、前作の「麒麟が来る」から続けてNHK大河ドラマ「青天を衝け」を毎週視聴している。
「麒麟が来る」ではそれまで詳細に描かれたことのなかった明智光秀を長谷川博巳が、織田信長を染谷将太が好演し、今までになかった新しい解釈で光秀と信長の関係が描かれた。クライマックスである本能寺の変で、織田信長が最後を覚悟した場面で「(焼き討ちをしたのが)十兵衛か、であれば是非もなし」と微笑むような表情でつぶやくシーンは、信長と光秀が互いに理解しながらも「立場」と「思い」の違いからついには討つ側、討たれる側に分かれてしまうという悲劇として、非常に印象深いものになった。
つい最近、なんとキリンビールのCMで長谷川・染谷コンビが共演をしているのを見て、光秀と信長の転生を見ているように感じるほど、「麒麟が来る」にハマっていたのだということを自覚している(笑)。
そして「青天を衝け」である。吉沢 亮演じる渋沢栄一を描いているが、渋沢栄一が兄・喜作とともに一橋家の平岡円四郎に拾われ、倒そうとしていた幕府の幕臣に召し抱えられてしまうというやぶへびから、ストーリーが面白くなった。また、吉沢 亮の渋沢栄一もどんどんキャラクターが確立され、先日の明治新政府出仕の件で大隈重信に言い負かされるまでは誰にも負けたことがない口達者のセリフ回しに爽快さを感じるようになった。
パリから帰国し帰省した際に訪れた、尾高惇忠と邂逅するシーンで、尊王攘夷で自分がすべきことは、戦=殺し合いではなく、地に足を付けて働くことが自分の成すべきことと気づき、多くの友人、恩師を失い、その責任を感じながらも、前を向こうとする姿を吉沢 亮が好演している。
尊王攘夷で討幕派だったが、徳川一橋家の家臣となり、また、幕臣であったにも関わらず、これからは明治新政府に出仕し、関わることになった数奇な運命ながら、渋沢栄一が現在の日本経済の基礎となる様々な仕組み、企業をどうやってつくっていくのか、その奮闘ぶりが楽しみになってきた。
それから最後の将軍徳川慶喜を演じる草彅 剛も、セリフそのものは少ないながら、特に平岡兵四郎や渋沢栄一と会話するシーンでの表情・雰囲気の作り方が素晴らしく、慶喜の感情や意志を画面から伝えてくる。もはや一流の名優と感じた。
また今作は、それまで政治の表舞台にたった人物ばかりが描かれていたが、明治維新の前後で市井の人々や、武士の生き残りがどう生き、どう感じていたのかを丹念に描いている。フィクションではあるが、十分にその当時を想像させるに値する脚本と演出になっている点は素晴らしいと思う。
コロナ禍の影響で全44話と通例よりスケジュールは短縮されるそうだが、最後まで応援していきたい。