goo blog サービス終了のお知らせ 

Untersee-Boot

あるいは感想記として

大銀座落語祭2007 ナンちゃんの落語会 ~芝浜~

2007年07月19日 | ウンナンあれこれ
時事通信ホールで行なわれた、『ナンチャンの落語会』へ行ってきました。
客席は浴衣姿の女性や熟年夫婦、カップルなどの老若男女でほぼ満員。
私の席は前から二列めでしたが、右端のほうだったので首がちょと痛くなってしまいました(笑)。

午後5時開演。
舞台の上にめくりが置いてないな~、と思っていたら、まずは林家いっ平さんが登場。
いっ平さんは開口一番、「そう簡単には南原さんは出しません」(笑)。
その後、「兄たちに成り代わりまして・・」とお客さんに挨拶をしたあとは、落語の上下の説明などをしつつ、今日の南原さんは、楽屋にこもりっぱなしで敵の多いヤドカリみたいになってる、という話も(笑)。
楽屋にこもりっぱなしというのは南原さんならさもありなん、という感じで、ちょっと笑ってしまいました(笑)。
約5分でいっ平さんは退場し、続いて林家たこ平さんが落語を約15分。

そして、5時23分。
舞台上にめくりが置かれ、野球拳の出囃子にのって南原さんが登場。
南原さんは、末廣亭の時と同じ(かな?)若草色の着物に、少し濃い緑に白い縞の入った羽織り姿。
まずは、「皆さんと会えて非常に嬉しいです」という挨拶。
そして、今回やる『芝浜』についての話をあれこれと。
小朝師匠から「じゃ、今年『芝浜』ね」と言われた南原さんは、「芝浜は知ってますけど、上手い断り方を知りませんでした」(笑)。
去年、小朝師匠から薦められてやった『仔猫』は、南原さんはどんな噺か知らなくて、40分もある噺だと後で知ってビックリしたと言ってましたが、知ってても知らなくても、いずれにしても小朝師匠から言われたらやるしかないのでしょう(笑)。
小朝師匠が南原さんに薦める落語は女性が登場するものが多い(といっても2席ですが)ようですが、南原さんは女性を演じるのが合ってると小朝師匠は思ってる・・のかな?
おなべに引き続き、今回の『芝浜』の奥さんもちょっと可愛い感じになっていましたが、それついては後ほど。
「今年は『芝浜』」と言われたにも係わらず、小朝師匠からはなしのつぶてだったそうで。
南原さんいわく、「今回はまったくの独学で」とのことでしたが、お客さんの一人から「え~!?」という声があがり、場内は大笑(笑)。
南原さんは、「皆さんが不安だと私も不安に・・」と言って笑ってました(笑)
で、今度番組でカンニングの竹山さんが落語をやる、という話に。
落語を知らない竹山さんは、『子は鎹』をやることになっても、「はい、わかりました」とあっさり答えたそうで。
南原さんは竹山さんに、「(野球の素人が)レッドソックス行って投げるようなもんだよ」という、得意の例え話をしたそうです(笑)。
楽屋に竹山さんが来ていた、とのことでしたが、そういえば、南原さんの落語が終わった後のロビーで、竹山さんはコメント撮りのようなことをしてました。
何の番組なのか気になるとこですが、それはさておき。

その後は、お芝居(熱海)で一緒だった昇太さんに、今度『芝浜』をやる、という話をすると、「マジで~!?なんで断んないの~」と言われたという話や、昇太さんはカラオケで♪俺の話を聞け~、♪5分だけでもいい~、と歌うので、いつもいっぱい話してるだろ!という南原さんのツッコミ話などがありつつ、『芝浜』は夫婦の噺だという話題へ。
よく、コンビは夫婦みたいだと言われるけど実際はぜんぜん違うんですけどね、と言う南原さんは、内村さんについて、「あんなヤツとはぜったい夫婦にはなりません」とキッパリ(笑)。
「家に帰ってもロッキーばっかり、1、2、3、4、5・・」と南原さんは言ってましたが、内村さんは『ロッキー5』も繰り返し見てるのかな(笑)。
あと、内村さんはロッキーだけではなくブルース・リーも繰り返し見てると思いますが、それについては今回は触れてませんでした(笑)。
で、10年くらい前に内村さんとキス事件があったという話に。
南原さんいわく、"業務上過失キス"(笑)。
業務上過失キスは番組で・・とのことでしたが、これは多分『振り返れば奴がいる』のパロディーをやった時のことでしょう。
男性とキスをすると男と女に分かれ、キスしたあとの内村さんは楽屋でドーンと座ってた、と言ってましたが、この話はその昔のA.N.N.でもしてたっけ。
そのときは確か、内村さんは「キスは奪うもんだから」と言ってました(笑)。
そして、夫婦は「男と女が屋根の上で生活する・・」と南原さんが言ったところで、最前列のお客さんから何やら声が・・・。
南原さんは「え!?僕、何て言いました?」と、言い間違いにぜんぜん気づいてない様子(笑)。
お客さんから「屋根の上」と指摘されると、「不安だな~」と言ってた南原さんでしたが・・・。
演者が不安だと観てるほうも不安になります(笑)。
そんなハプニング、というか、天然の言い間違いがありつつ(笑)、男と女は脳が違うという話に。
南原さんいわく、男は集中する、女は整理するために喋る・・とのことでしたが、これはラジオなどでも話していた、けっこうお馴染みの南原理論・・いや、何かの受け売りかな(笑)。
で、夫婦でいざこざが起きるのはだいたい決まっていて、夜の11時半、スポーツニュースの時間。
「レストランに行ったけど11時半からじゃないと入れてくれなかった」という奥さんの話に、夫が「交渉すれば?」と答えても、「そんなこと聞いてるんじゃないの!」「私の話を聞いて!」ということに。
そんないざこざを収めるには、「美味しいものを食べる」と、南原さん。
でも、客席はちょっと微妙な反応で、「あまりにも簡単ですいません」と謝っていた南原さんでした(笑)。
南原さんいわく、美味しいものを食べたときと恋愛のときのエンドルフィンは同じ、美味しいものを食べて怒る人はいない、「なんだ、この大トロ、口の中でとろけるじゃねーか!」と言う人はいない、とのこと。
ここで、おもむろに羽織を脱ぐ南原さん。
羽織を脱ぐときにちょっと手間取っていましたが、そこは見なかったことにして(笑)。
江戸時代の人はけっこうグルメで新鮮な魚を食べていた、当時は魚河岸が築地と芝の2ヶ所にあった・・という話をして、ここからいよいよ本題に入りますが、『芝浜』がどんな話なのかは割愛します。

『芝浜』は有名な噺だけに、南原さんがどう演じるのか期待半分、不安半分(笑)で聴いていましたが・・・。
南原さん演じる魚勝の奥さんは、しっかり者というより、健気でちょっと可愛い感じのキャラクター。
旦那が酒と話してる場面でも、ちょっと可愛く、「バカ!」(笑)
それから、私が好きなのは、拾ってきたお金の話は夢だったと騙したあとの奥さんの「大丈夫、働こう」という台詞。
奥さんの決意というようなものが現れていてかなりいい感じでした。
魚勝は、江戸っ子らしく(かな?・笑)お調子者でちょっととぼけた感じ。
酒を飲んで起こされて「十二単さん」と奥さんに言ってみたり、奥さんから話があると言われ財布を渡され「みなまで言うな、わかりました数えましょ」と言ってみたりと、これまたいい感じのキャラになってました。

噺全体で言うと、南原さんの『芝浜』は、夫婦の間の会話やちょっとした幸せ、というようなことに重点を置いていたようで。
このへんはマクラの話から上手くつながっていましたし、最後に奥さんが独白する場面でもそのへんのところが切々と語られていました。
夫婦の会話が・・云々ということに焦点を当てるというのは、ちょっと現代ふうの『芝浜』という感じで、最初は少し違和感もありましたが、でも、これはこれでありなのかな、とも思ったり・・・。
ただ、夫婦の会話・・云々ということに重点を置いて話していたためか、魚勝が騙されていたことを知り「夢だってそう言ったじゃ・・」と言う場面や、酒を3年ぶりに飲むと決める場面などは、あっさりし過ぎていて、ちょっと拍子抜けの感もありました。
それから、この噺で一番のポイントだと思っていた、拾ってきたお金のことを夢だと言われ、魚勝が騙される場面は・・・。
奥さんが「起きてくれなかった」と繰り返すなど、いろいろ工夫されていましたが、ちょっと説得力に欠けたかも。
この場面は、聴いてるお客さんは嘘だと分かっているだけに、いかに巧く騙すか、騙されるか、というのが見所だと思いますが、そのへんがもう一つだったのはちょっと残念でした。
そして、サゲの台詞ですが・・・。
個人的には、「また夢になるといけねぇ」のほうが良かったと思いました。
「また夢になるといけねぇ」なら、その後、無言でありながらも笑顔の夫婦・・とい場面を想像出来て、余韻を残しつつもいい感じで終わりますが、「また夢になったらどうするんでぃ」だと、この後もまだ会話が続きそうで、ちょっとキレが悪い感じです。
サゲのセリフを変えたのが南原さん自身の判断なのかどうかはわかりませんが、これもちょっと残念でした。

と、あれこれと書きましたが、南原さんの『芝浜』が良くなかったのかと聞かれれば、答えは否。
南原さんらしい『芝浜』で良かったですし、十二分に楽しませてもらいました。
『芝浜』は全体的に笑いは少ない噺ですが、最初のほうで魚勝が酒と話をしたりして細かい笑いを取ったり、とぼけた魚勝や可愛い感じの奥さんもそれぞれいいキャラとして登場してました。
それに、夫婦のやり取りでも、良いなと思う場面がいくつもありました。
ただ、落語初心者の南原さんが『芝浜』に挑戦してよく出来ました・・では満足出来ない体になってしまいましたので(笑)、気になることも注文したいことも多くなってしまうということで、悪しからず。
南原さんにとって今回が初めての『芝浜』、この先回数を重ねていけばまた変わってくると思いますし、それもまた楽しみです。

6時15分、『芝浜』を口演し終わった南原さんに客席からは大きな拍手。
南原さんは深々とお辞儀をして、"美・サイレント"よろしく声にならない声で(笑)、「ありがとうございました(かな?)」。
高座から降りて、南原さんもう一度お辞儀をして退場。
お疲れ様でした、でありました。



10分弱の休憩のあと、第2部は"上方の噺家による志ん朝トリビュート"。
まずは、笑福亭恭瓶師匠の『風呂敷』。
ジカに冠をかぶらず・・・ってな感じのバカバカしい噺に大笑い。
恭瓶さんは、良い意味で鶴瓶さんの弟子らしくない感じでした(笑)。

続いて、桂坊枝師匠の『火焔太鼓』。
まず、志ん朝師匠から形見分けで貰ったという羽織りの話でひと盛り上がり。
わざわざ前座さんに白手袋をさせ、羽織りを取りにこさせるという手が込んだ演出に、思わず笑ってしまいました(笑)。
このへんは、サービス精神旺盛、といいますか、あの手この手で盛り上げようとする関西の人らしい感じでした。
あと、「坊枝、行くだろ?」という志ん朝師匠のモノマネも似ていて、ちょっと笑(笑)。
そして、文枝師匠が古美術が好きだという話から、本題の噺への入り方もスムーズで、笑いながらも感心してしまいました。
坊枝師匠は、テンポもよく早口で、表情も豊か。
「50両!」という、テンション高い甲高い声にも大笑いしつつ、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
ただ、サゲの台詞が、お馴染みの「半鐘はいけないよ、おじゃんになるから」ではなく、「笛はやめとこう、またピーピー言うといかん」となっていて、最後の最後にちょっと肩透かしを食らった感じでした。

続いては、桂かい枝師匠の『野ざらし』。
マクラで、手拭いをプレゼント・・云々という話をしていましたが、ちょっと騙されかけてしまいました(笑)。
「パンフレットにねずみ色の紙が・・」と言われ、一瞬、探そうとした自分が情けない(笑)。
噺のほうも、眉毛を動かしながらの顔芸など(笑)、面白かったです。

そしてトリは、桂文太師匠の『黄金餅』。
この噺は江戸が舞台ですが、文太師匠の『黄金餅』は大阪が舞台。
大阪では『ヨモギ餅』という演題でやっているとのこと。
道中付けも、大阪の町(でいいのかな?)を棺桶を担いで一行はふらふらに(笑)。
ただ、この場面、「○○を出まして、○○を出まして、○○を出まして・・」と、「出まして」という言葉がちょっと多く、聴いてて気持ちがよくなるテンポの良さはもう一つでした。
でも、お経を読む場面や、骨になった体を包丁でほじくりながら、「ピカッときました、これですよ」と言いながら鼻歌交じりでお金を探す場面などは大笑い。
骨の中からお金を探すなんて、よくよく考えてみればけっこうグロテスクですが、文太師匠の陽気な鼻歌にかかると、そんなことは微塵も感じさせず、大笑いの場面になってました。
あ、それから、サゲのセリフがよく聞き取れなくて、イマイチ意味が分からなかったのが唯一の気がかりでありました(笑)。
で、文太師匠の『黄金餅』が無事終わり、これで終わりかと思いきや、文太師匠からお客さんへ扇子のプレゼントが!?
文太師匠は、「大阪では杉良太郎と言われてる」そうで(笑)。
香川や宮崎、新潟などからはるばる来た人に扇子をプレゼント。
最後は前座さんと一緒に文太師匠も客席に扇子を投げていましたが、残念ながら私の席には飛んできませんでした。
こういうときは前のほうの席は不利だな~(笑)。
そんなこんなで、客席に扇子が飛び交い最後にまたひと盛り上がりする中、8時14分、すべての演目が終了。

1部、2部を合わせると3時間以上の長丁場でしたが、楽しい時間を過ごすことが出来ました。
銀座の夜風に気持ちよく吹かれながら、来年も南原さんの落語が聴けることを期待しつつ・・。

以上、"ナンちゃんの落語会"のレポ(のようなもの)と感想記でありました。
長々と書いてしまい、読んでくださった方は、さぞくたびれたことでしょう。
書いた私もくたびれました(by『黄金餅』・笑)。
あ、文太師匠の『ヨモギ餅』なら、「フラフラでございます」です(笑)。


コメント