狂言とコントが結婚したら・・・。
う~む、どうなるんだろう?という期待と不安を胸に抱きつつ、一路、国立能楽堂へ。
客席は、制服姿の中学生やスーツを着たサラリーマンふうの人、カップルや着物姿のご婦人など、まさに老若男女といった感じで満員でした。
私の席は正面席の3列目、右端ほう。
目の前に能舞台がドーン、ついでにワキ柱もドーンとそびえ立ってました(笑)。
途中、柱の陰になって何度か首を左右にずらさなくてはいけませんでしたが、南原さんが「萌え~~」と言ったときの細かな顔芸(笑)も目の前で見れましたし、天野君がアドリブを飛ばした時の三味線のお姉さんとのやり取りも間近で見ることが出来ましたので、多少柱の陰になっても全然オッケーな良い席でした。
まずは黒紋付姿の南原さんのご挨拶。
静々と登場した南原さんの立ち居振る舞いは綺麗で、この所作を見た瞬間に、今回やる現代狂言への南原さんの真摯な姿勢と意気込みが伝わってきました。
そして、挨拶の中で言ってた「皆さんの想像力がこの舞台を宇宙にも・・」という言葉は、狂言の世界をよく言い表していたように思いますし、「皆さんは狂言とコントの間に生まれる子供の助産士さんの気持ちで・・」という言葉は、現代狂言というものを初めて見るお客さん(もちろん私も含めて)の、「どんな舞台なんだろう?」という、ちょっと構えた雰囲気を解きほぐすのに効果的な言葉だったように思います。
あとは、「見所は狂言とルー大柴、狂言とトゥギャザーしようぜ」、「狂言とウド、600年の歴史と天野く~ん!」ってなことを言って笑いをとり、客席を温めてた南原さんでした(笑)。
最初の演目は『萩大名』。
野村万蔵さんをはじめ、萬狂言の方々による狂言です。
私は狂言を見るのは初めてだったので、客席が暗くならずに普通に始まった舞台にちょっとビックリ。
あと、狂言独特の言い回しに慣れないこともあり、最初はちょっと戸惑いながら見てましたが、大名と太郎冠者が茶屋へ行ったあたりからは独特の言い回しにも慣れてきて、面白がって見ることが出来ました。
中でも、太郎冠者がいなくなり大名が苦し紛れで詠んだ「十重咲きいずる太郎冠者の向こう脛」という歌には大笑い。
ちゃんと前フリがあっての「太郎冠者の向こう脛」というボケには、大笑いしながらも「よく出来てるな~」と感心してしまいました。
それから、笑いだけではなく、梅や萩の花を見る場面では、本当にあるんじゃないかと思わず後ろを振り返りそうになりました。
う~む、これが芸なんだな~、と、大いに感心。
その場にないものがあるように見えるというのが狂言なんですね。
あと、茶屋の主人は最初から舞台の上に居るのに居ないことになっている、というのも違和感を感じませんでしたし、狂言の面白さを十分堪能することが出来ました。
続いての演目は『萩代議』。
ルー大柴さん、エネルギーの平子君に森君、そしてドロンズ石本君による現代ふう狂言。
『萩大名』をアレンジして今の時代に置き換えたものです。
ルーさんの濃~いキャラが、下品で無教養なテキサス大卒(笑)の代議士に合ってて大笑い(笑)。
最初にルー大柴さんがこの現代狂言に参加すると聞いた時は、「なんでルー?」と思いましたが、この役ならルーさんにピッタリです(笑)。
ただ、ルーさんの所作、というか立ち姿は今ひとつ綺麗ではなく、サマになってなかったように見え、ちょっと気になりましたが、心意気と笑顔でカバー、ということで(笑)。
あと、今年一押しのギャグ、「キャッチ!キャッチ!キャッチ!」は・・・。
客席で私も笑ってしまいましたが、多分、流行語大賞は無理でしょう(笑)。
エネルギーの平子君は声も良かったですし、立ち居振る舞いも綺麗でちょっと感心。
森君はまだ若いにもかかわらず、財界の通人に見えました(笑)。
それから、ドロンズ石本君はずっと正座をしたままで後見(黒子みたいな役です)お疲れ様でした(笑)。
この『萩代議』は基本的に狂言の形を踏襲していますが、台詞は現代ふうのものが多かったですし、細かなギャグなども入って、よりわかりやすくて面白い舞台でした。
そして最後の演目は『連句』。
南原さん演じる東方朔(とうほうさく)という神様が、美しい言葉を探しに現代の日本にやってくるというお話で、この『連句』は、楽士3人による音楽つきです。
揚幕が上がり、橋掛をスキップ(?・笑)しながら登場する南原さん。
まずは、「西の方、天上より下りました東方朔と申す神様です」という自己紹介をして、天上の木や花を元気にさせるためには美しい言葉が必要なので探しに行きます、と、これから何をするかもちゃんと説明。
このへんが狂言のお約束で、とってもわかりやすいところです。
それにお約束ですから不自然じゃありませんし。
あ、でも、途中に出てきたウド君の、「詐欺師です」という自己紹介は、ものすごく不自然でワザとらしかったな~(笑)。
でも、そのわざとらしさが面白かったので、これはこれで、ウド君らしくて良かったです。
現代の日本にやって来た東方朔は人にぶつかり、おっとっとっと(もちろん他に人は居なくてそういう演技です)。
そんな中、秋葉原で天野君演じるオタクに出逢いますが、天野君は黄色いキャップをかぶり、白いつなぎのような衣装で、喋りかたも普通です。
天野君は、烏帽子をかぶり朱色の派手な衣装の南原さんを見て、「それ何のキャラ?」ってなことを言いますが、確かに、秋葉原であの衣装だったらコスプレマニアで通るかもしれません(笑)。
そんなオタクの天野君に連れられて南原さんはフィギュアショップへ向かいますが、その時も登場した時と同じように二人してスキップ。
天野君は「普通に歩いた方が速いと思うけどな~」と、軽~い独り言ツッコミ(笑)。
天野君は現代人の目線で、神様・南原さんの所作や言葉遣いなどにツッコミを入れ笑いをとって、現代では不自然な東方朔の立ち居振る舞いを自然なものに見せてました。
フィギュアショップで、「胸のあたりがゾワゾワ」としてしまった東方朔は、天野君に教えられた言葉「萌え~~」を、感情込めて言っちゃいます(笑)。
最初の方で書きましたが、この時の南原さんは、ちょっと危ない目線で口の辺りを細かく震わせるという細かい顔芸をしてました(笑)。
東方朔はお気に入りの着せ替えフィギュアの前で「触ろうかな、やめようかな」ってなことをやって名残惜しそうにしながらも、次はメイドカフェへ。
すっかりノリノリの東方朔は天野君の前をスキップして行こうとしますが、、「あんた道知らないでしょう」と、天野君からのツッコミ(笑)。
メイドカフェに着くと、「お帰りなさいませご主人様」という店員の言葉を聞いた東方朔は、「ここは天野氏のお屋敷でござったか」と、勘違い。
でも、そうではないとわかると「嘘でござったか」と言いますが、天野君は「嘘じゃない!」と、即座に否定(笑)。
このへんのやり取りはいかにもオタクっぽくて、大笑いしてしまいました。
あと、ここで天野君と三味線のお姉さんとのアドリブのやり取りがあり、それにも大笑い。
「普段はやさしいんですよね~」と言う天野君に、三味線のお姉さんは、♪ベンベン(笑)。
で、「うざい」「キモイ」と言われ続けたという天野君のネガティブな言葉に東方朔は、青菜に塩。
どんどん元気がなくなってしまいますが、天野君が言ってない、「めがねブタ」という言葉もドサクサ紛れに言ってしまうお茶目な東方朔でした(笑)。
そうこうしてるうちに、詐欺師のウド君登場(笑)。
ウド君は黄色いスーツで喋り方も歩き方も普通。
まったくもって現代人、というか、いつものウド君でした(笑)。
インチキ商品の説明をするとこでも、たどたどしい喋りで天野君から頭にツッコまれてるし(笑)。
ウド君は天野君に、「初めて会ったんですよね」って一応言いますが、もうこのへんはそんなこと関係なしで、キャイ~ンのコンビ芸でした(笑)。
ウド君が身振りをつけて商品の説明をするとこでは、倒れていた南原さんが起き上がろうとしてるのに何度も繰り返しやり続け、南原さんは顔を伏せながら肩を震わせて笑ってました(笑)。
そんなウド君は自分が詐欺師なのに悪徳建築業者に騙された、という話を聞いた東方朔は、仮面ライダーのポーズから、「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン」で、ウド君の自宅へGO!(大笑)
神様は何でも出来て便利です(笑)。
それに、ジャンプして場面転換を一瞬で出来ちゃう狂言の良さがこのへんにも出てました。
あと、このとき南原さんは、コンパクトを覗いて顔をパタパタする、という細かいギャグもやってました(笑)。
悪徳建築業者のドロンズ石本君と、ウド君の奥さんのエネルギー・森君が登場して建てられて欠陥住宅について二人でやり取りをしますが、森君の奥さん姿は妙に似合ってたな~(笑)。
で、その森君は、去り際にウド君の頭をぺシッと叩いて一言、「このダメ亭主」。
ウド君は、「やさしき人よ今いずこ」。
そんな、のらりくらりと言い訳をして逃げてしまったドロンズ石本君を見て、神様・南原さんは、「アチョ~」と、ブルース・リー怒りの鉄拳(大笑)。
すこし前のラジオで、ブルース・リーのDVDを貸してくれと内村さんに言ったのはこれだったのか、と、思わずニンマリしてしまいました(笑)。
これはもう、やってられへん(関西弁で言ってたわけではありません・笑)ということで、南原さん一行は酒を飲んで踊ろうということになり、またもやジャンプ一つで瞬間移動。
酔っ払った東方朔が踊ると言い、何を踊るのかと思いきや、やおら舞いを舞い始めます。
これ、私の中では、今回の舞台でお気に入りの場面の一つです。はい。
普通の狂言だったら、舞いを見たら綺麗だな~と思うだけだと思いますが、南原さんの舞は、綺麗だと思わせながらも、踊ると言って何でそんな舞を舞ってんだっ?というボケにもなっていて、思わず笑ってしまう。
狂言の中に現代を取り入れ、狂言とコントの融合がいい感じで出来ている、というのがこの場面だったと思います。
後ろで仕方なしにチョコンと正座して見てる天野君やウド君たちも、この場面の面白さを倍増させてくれてました。
その後、代議士の秘書役のエネルギー平子君に(あれ?平子君はいつ登場したんだっけ?(笑)、すいません、記憶があやふやですが、とにかく平子君が居ました)、「女にな~れ~」と、魔法をかけて女にしてしまう東方朔。
で、今度は女になった平子君と南原さんがタンゴを披露!?
パンフレットに、[ダンス指導・二ツ森司]と載ってたのを見て、???と思っていたのですが、こういうことだったんですね。
足袋を履いた足もとがちょっと滑って踊りにくそうにしていた場面もありましたが、能舞台でタンゴ、っていうのもなかなか良いもんです(笑)。
最後もビシッとキメてタンゴを踊り終えた南原さん。
「どこで習ったの?」と聞かれると、「二子玉川の司ダンススクールで習いました」ってなことを言ってました(笑)。
その後は、宇宙戦艦ヤマトの音楽がかかったりして、天野君はじめ、代議士のルーさん(あれ?ルーさんもいつ登場したんだっけ?・笑)も一緒になって、踊れ踊れで大騒ぎ。
でも、夕焼け小焼けの音楽が流れ出してクラブは閉店してしまいます。
そこへ、東方朔の帰りが遅いと心配した大神様の野村万蔵さんが、童子の野村太一郎さんを連れて登場。
野村万蔵さんが出てくると、さすがに舞台が締まります。
で、美しい言葉は見つかったかと聞かれ、答えに窮する東方朔は、仕方なくこれまでに聞いた言葉をつなぎ合わせて言いますが・・・。
「心 萌え やさしき人は今いずこ 胸いっぱいに 夕焼け小焼け」
童子が歌にして詠んだのを聞いて、大神様は「良い言葉じゃ」、と満足げ。
客席で聞いてた私も、思わず良い言葉だな~と、妙に感動してしまいました(笑)。
バラバラの言葉、それも変な場面で出てきた言葉なのに、それををつなぎ合わせると、五七五七七の心に響くいい歌、『連句』になっている。
う~ん、よく出来てるな~~。
そして、大神様から「良い言葉に出会ったか?」と聞かれた東方朔は、「良い人に出会いました」。
この言葉にも妙に説得力があり良かったな~。
その後、夕焼け小焼けの音楽でしんみりしてしまったウド君はじめ、平子君、ルーさんが、それぞれ退場。
そして、東方朔の南原さんと天野君は友情の印として、それぞれの帽子、烏帽子とキャップを交換。
けっこうしんみりする場面なのですが、つなぎに烏帽子をかぶってる天野君の姿が面白くて、思わず笑ってしまいました(笑)。
天野君も去り、大神様と童子も退場し、最後に残った南原さんも交換したキャップを逆さにかぶり、登場した時と同じようにスキップしながら退場。
会場は割れんばかりの大きな拍手。
いや、これは大袈裟ではなく、本当に大きな拍手でした。
もちろん私も目一杯拍手をしました。
大きな拍手がやがて手拍子に変わり、カーテンコール(って言うのかな?・笑)。
私はスタンディング・オべーションをしようかと一瞬思ったのですが、結局やらずじまい。
このへんが日本人、決定力がないところです(笑)。
手拍子&拍手は鳴り止むことなく続きましたが、楽士の皆さんの音楽、特に笛の音がさらに大きな手拍子を誘い、カーテンコールは3回(4回だったかな?)続きました。
ということで、レポふうのものを書きましたが、かなり端折ってますし、記憶が曖昧でいい加減なところもあり、申し訳ないっす。
間違ってる部分もあるかとおもいますが、そのへんのところはご容赦を。
現代狂言『連句』の感想をひと言で言えば、とにかく面白かった。
これに尽きます。
最初から最後までずっと笑ってました。
この「面白い」というのは大事で、いくら新しいことをやったとしても、面白くなければ仕方ありません。
「新しいことをやりました、でも面白くありませんでした」では、単なる独りよがりの頭でっかちな企画ということになってしまいます。
これだけ面白い舞台になった現代狂言、狂言とコントの融合という試みは、大成功だったと断言していいと思います。
実を言えば、観に行く前はちょっと不安でした。
新しいことに挑戦する南原さんは好きですし、私自身もこういう新しいものが好きなのですが、「もしかしたら南原さんの意気込みが空回りしちゃうんじゃないかな?」って。
でも、そんな心配は杞憂でした。
野村万之丞さんがウリナリで何度もいってた言葉、「見えないものを信じる」。
この現代狂言は、そんな、見えないものを信じた人たちが創り上げた素晴らしい舞台でした。
誰もやっていない、手本のない中で創り上げた現代狂言。
まだまだ手探りの部分も多いと思います。
今回見ていて、アドリブを飛ばして笑いをとったりしてる場面などは、「どこまでやるんだろう?あまりやり過ぎても違うんじゃないかな?」と、大笑いしながらもちょっと思った部分もありましたし。
とは言っても、これは旗揚げ公演。
これからも試行錯誤をしながら、さらに面白い舞台を創っていってくれることでしょう。
本当に、楽しみです。
あと、こんな面白い舞台を、たった4公演しかしないというのは、あまりにももったいなさ過ぎます。
いろいろ事情はあるかと思いますが、今度は是非々々、公演数を増やして欲しいっす。
あ、もちろん、今回の舞台の再演っていうのも全然オッケーですが(笑)。
こんな貴重な舞台を見ることができ、現代狂言の助産士として立ち会えて本当に良かったです。
狂言とコントが結婚したら・・・。
とても面白くて楽しい、立派な子供が産まれましたとさ。
つづく・・・。
う~む、どうなるんだろう?という期待と不安を胸に抱きつつ、一路、国立能楽堂へ。
客席は、制服姿の中学生やスーツを着たサラリーマンふうの人、カップルや着物姿のご婦人など、まさに老若男女といった感じで満員でした。
私の席は正面席の3列目、右端ほう。
目の前に能舞台がドーン、ついでにワキ柱もドーンとそびえ立ってました(笑)。
途中、柱の陰になって何度か首を左右にずらさなくてはいけませんでしたが、南原さんが「萌え~~」と言ったときの細かな顔芸(笑)も目の前で見れましたし、天野君がアドリブを飛ばした時の三味線のお姉さんとのやり取りも間近で見ることが出来ましたので、多少柱の陰になっても全然オッケーな良い席でした。
まずは黒紋付姿の南原さんのご挨拶。
静々と登場した南原さんの立ち居振る舞いは綺麗で、この所作を見た瞬間に、今回やる現代狂言への南原さんの真摯な姿勢と意気込みが伝わってきました。
そして、挨拶の中で言ってた「皆さんの想像力がこの舞台を宇宙にも・・」という言葉は、狂言の世界をよく言い表していたように思いますし、「皆さんは狂言とコントの間に生まれる子供の助産士さんの気持ちで・・」という言葉は、現代狂言というものを初めて見るお客さん(もちろん私も含めて)の、「どんな舞台なんだろう?」という、ちょっと構えた雰囲気を解きほぐすのに効果的な言葉だったように思います。
あとは、「見所は狂言とルー大柴、狂言とトゥギャザーしようぜ」、「狂言とウド、600年の歴史と天野く~ん!」ってなことを言って笑いをとり、客席を温めてた南原さんでした(笑)。
最初の演目は『萩大名』。
野村万蔵さんをはじめ、萬狂言の方々による狂言です。
私は狂言を見るのは初めてだったので、客席が暗くならずに普通に始まった舞台にちょっとビックリ。
あと、狂言独特の言い回しに慣れないこともあり、最初はちょっと戸惑いながら見てましたが、大名と太郎冠者が茶屋へ行ったあたりからは独特の言い回しにも慣れてきて、面白がって見ることが出来ました。
中でも、太郎冠者がいなくなり大名が苦し紛れで詠んだ「十重咲きいずる太郎冠者の向こう脛」という歌には大笑い。
ちゃんと前フリがあっての「太郎冠者の向こう脛」というボケには、大笑いしながらも「よく出来てるな~」と感心してしまいました。
それから、笑いだけではなく、梅や萩の花を見る場面では、本当にあるんじゃないかと思わず後ろを振り返りそうになりました。
う~む、これが芸なんだな~、と、大いに感心。
その場にないものがあるように見えるというのが狂言なんですね。
あと、茶屋の主人は最初から舞台の上に居るのに居ないことになっている、というのも違和感を感じませんでしたし、狂言の面白さを十分堪能することが出来ました。
続いての演目は『萩代議』。
ルー大柴さん、エネルギーの平子君に森君、そしてドロンズ石本君による現代ふう狂言。
『萩大名』をアレンジして今の時代に置き換えたものです。
ルーさんの濃~いキャラが、下品で無教養なテキサス大卒(笑)の代議士に合ってて大笑い(笑)。
最初にルー大柴さんがこの現代狂言に参加すると聞いた時は、「なんでルー?」と思いましたが、この役ならルーさんにピッタリです(笑)。
ただ、ルーさんの所作、というか立ち姿は今ひとつ綺麗ではなく、サマになってなかったように見え、ちょっと気になりましたが、心意気と笑顔でカバー、ということで(笑)。
あと、今年一押しのギャグ、「キャッチ!キャッチ!キャッチ!」は・・・。
客席で私も笑ってしまいましたが、多分、流行語大賞は無理でしょう(笑)。
エネルギーの平子君は声も良かったですし、立ち居振る舞いも綺麗でちょっと感心。
森君はまだ若いにもかかわらず、財界の通人に見えました(笑)。
それから、ドロンズ石本君はずっと正座をしたままで後見(黒子みたいな役です)お疲れ様でした(笑)。
この『萩代議』は基本的に狂言の形を踏襲していますが、台詞は現代ふうのものが多かったですし、細かなギャグなども入って、よりわかりやすくて面白い舞台でした。
そして最後の演目は『連句』。
南原さん演じる東方朔(とうほうさく)という神様が、美しい言葉を探しに現代の日本にやってくるというお話で、この『連句』は、楽士3人による音楽つきです。
揚幕が上がり、橋掛をスキップ(?・笑)しながら登場する南原さん。
まずは、「西の方、天上より下りました東方朔と申す神様です」という自己紹介をして、天上の木や花を元気にさせるためには美しい言葉が必要なので探しに行きます、と、これから何をするかもちゃんと説明。
このへんが狂言のお約束で、とってもわかりやすいところです。
それにお約束ですから不自然じゃありませんし。
あ、でも、途中に出てきたウド君の、「詐欺師です」という自己紹介は、ものすごく不自然でワザとらしかったな~(笑)。
でも、そのわざとらしさが面白かったので、これはこれで、ウド君らしくて良かったです。
現代の日本にやって来た東方朔は人にぶつかり、おっとっとっと(もちろん他に人は居なくてそういう演技です)。
そんな中、秋葉原で天野君演じるオタクに出逢いますが、天野君は黄色いキャップをかぶり、白いつなぎのような衣装で、喋りかたも普通です。
天野君は、烏帽子をかぶり朱色の派手な衣装の南原さんを見て、「それ何のキャラ?」ってなことを言いますが、確かに、秋葉原であの衣装だったらコスプレマニアで通るかもしれません(笑)。
そんなオタクの天野君に連れられて南原さんはフィギュアショップへ向かいますが、その時も登場した時と同じように二人してスキップ。
天野君は「普通に歩いた方が速いと思うけどな~」と、軽~い独り言ツッコミ(笑)。
天野君は現代人の目線で、神様・南原さんの所作や言葉遣いなどにツッコミを入れ笑いをとって、現代では不自然な東方朔の立ち居振る舞いを自然なものに見せてました。
フィギュアショップで、「胸のあたりがゾワゾワ」としてしまった東方朔は、天野君に教えられた言葉「萌え~~」を、感情込めて言っちゃいます(笑)。
最初の方で書きましたが、この時の南原さんは、ちょっと危ない目線で口の辺りを細かく震わせるという細かい顔芸をしてました(笑)。
東方朔はお気に入りの着せ替えフィギュアの前で「触ろうかな、やめようかな」ってなことをやって名残惜しそうにしながらも、次はメイドカフェへ。
すっかりノリノリの東方朔は天野君の前をスキップして行こうとしますが、、「あんた道知らないでしょう」と、天野君からのツッコミ(笑)。
メイドカフェに着くと、「お帰りなさいませご主人様」という店員の言葉を聞いた東方朔は、「ここは天野氏のお屋敷でござったか」と、勘違い。
でも、そうではないとわかると「嘘でござったか」と言いますが、天野君は「嘘じゃない!」と、即座に否定(笑)。
このへんのやり取りはいかにもオタクっぽくて、大笑いしてしまいました。
あと、ここで天野君と三味線のお姉さんとのアドリブのやり取りがあり、それにも大笑い。
「普段はやさしいんですよね~」と言う天野君に、三味線のお姉さんは、♪ベンベン(笑)。
で、「うざい」「キモイ」と言われ続けたという天野君のネガティブな言葉に東方朔は、青菜に塩。
どんどん元気がなくなってしまいますが、天野君が言ってない、「めがねブタ」という言葉もドサクサ紛れに言ってしまうお茶目な東方朔でした(笑)。
そうこうしてるうちに、詐欺師のウド君登場(笑)。
ウド君は黄色いスーツで喋り方も歩き方も普通。
まったくもって現代人、というか、いつものウド君でした(笑)。
インチキ商品の説明をするとこでも、たどたどしい喋りで天野君から頭にツッコまれてるし(笑)。
ウド君は天野君に、「初めて会ったんですよね」って一応言いますが、もうこのへんはそんなこと関係なしで、キャイ~ンのコンビ芸でした(笑)。
ウド君が身振りをつけて商品の説明をするとこでは、倒れていた南原さんが起き上がろうとしてるのに何度も繰り返しやり続け、南原さんは顔を伏せながら肩を震わせて笑ってました(笑)。
そんなウド君は自分が詐欺師なのに悪徳建築業者に騙された、という話を聞いた東方朔は、仮面ライダーのポーズから、「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン」で、ウド君の自宅へGO!(大笑)
神様は何でも出来て便利です(笑)。
それに、ジャンプして場面転換を一瞬で出来ちゃう狂言の良さがこのへんにも出てました。
あと、このとき南原さんは、コンパクトを覗いて顔をパタパタする、という細かいギャグもやってました(笑)。
悪徳建築業者のドロンズ石本君と、ウド君の奥さんのエネルギー・森君が登場して建てられて欠陥住宅について二人でやり取りをしますが、森君の奥さん姿は妙に似合ってたな~(笑)。
で、その森君は、去り際にウド君の頭をぺシッと叩いて一言、「このダメ亭主」。
ウド君は、「やさしき人よ今いずこ」。
そんな、のらりくらりと言い訳をして逃げてしまったドロンズ石本君を見て、神様・南原さんは、「アチョ~」と、ブルース・リー怒りの鉄拳(大笑)。
すこし前のラジオで、ブルース・リーのDVDを貸してくれと内村さんに言ったのはこれだったのか、と、思わずニンマリしてしまいました(笑)。
これはもう、やってられへん(関西弁で言ってたわけではありません・笑)ということで、南原さん一行は酒を飲んで踊ろうということになり、またもやジャンプ一つで瞬間移動。
酔っ払った東方朔が踊ると言い、何を踊るのかと思いきや、やおら舞いを舞い始めます。
これ、私の中では、今回の舞台でお気に入りの場面の一つです。はい。
普通の狂言だったら、舞いを見たら綺麗だな~と思うだけだと思いますが、南原さんの舞は、綺麗だと思わせながらも、踊ると言って何でそんな舞を舞ってんだっ?というボケにもなっていて、思わず笑ってしまう。
狂言の中に現代を取り入れ、狂言とコントの融合がいい感じで出来ている、というのがこの場面だったと思います。
後ろで仕方なしにチョコンと正座して見てる天野君やウド君たちも、この場面の面白さを倍増させてくれてました。
その後、代議士の秘書役のエネルギー平子君に(あれ?平子君はいつ登場したんだっけ?(笑)、すいません、記憶があやふやですが、とにかく平子君が居ました)、「女にな~れ~」と、魔法をかけて女にしてしまう東方朔。
で、今度は女になった平子君と南原さんがタンゴを披露!?
パンフレットに、[ダンス指導・二ツ森司]と載ってたのを見て、???と思っていたのですが、こういうことだったんですね。
足袋を履いた足もとがちょっと滑って踊りにくそうにしていた場面もありましたが、能舞台でタンゴ、っていうのもなかなか良いもんです(笑)。
最後もビシッとキメてタンゴを踊り終えた南原さん。
「どこで習ったの?」と聞かれると、「二子玉川の司ダンススクールで習いました」ってなことを言ってました(笑)。
その後は、宇宙戦艦ヤマトの音楽がかかったりして、天野君はじめ、代議士のルーさん(あれ?ルーさんもいつ登場したんだっけ?・笑)も一緒になって、踊れ踊れで大騒ぎ。
でも、夕焼け小焼けの音楽が流れ出してクラブは閉店してしまいます。
そこへ、東方朔の帰りが遅いと心配した大神様の野村万蔵さんが、童子の野村太一郎さんを連れて登場。
野村万蔵さんが出てくると、さすがに舞台が締まります。
で、美しい言葉は見つかったかと聞かれ、答えに窮する東方朔は、仕方なくこれまでに聞いた言葉をつなぎ合わせて言いますが・・・。
「心 萌え やさしき人は今いずこ 胸いっぱいに 夕焼け小焼け」
童子が歌にして詠んだのを聞いて、大神様は「良い言葉じゃ」、と満足げ。
客席で聞いてた私も、思わず良い言葉だな~と、妙に感動してしまいました(笑)。
バラバラの言葉、それも変な場面で出てきた言葉なのに、それををつなぎ合わせると、五七五七七の心に響くいい歌、『連句』になっている。
う~ん、よく出来てるな~~。
そして、大神様から「良い言葉に出会ったか?」と聞かれた東方朔は、「良い人に出会いました」。
この言葉にも妙に説得力があり良かったな~。
その後、夕焼け小焼けの音楽でしんみりしてしまったウド君はじめ、平子君、ルーさんが、それぞれ退場。
そして、東方朔の南原さんと天野君は友情の印として、それぞれの帽子、烏帽子とキャップを交換。
けっこうしんみりする場面なのですが、つなぎに烏帽子をかぶってる天野君の姿が面白くて、思わず笑ってしまいました(笑)。
天野君も去り、大神様と童子も退場し、最後に残った南原さんも交換したキャップを逆さにかぶり、登場した時と同じようにスキップしながら退場。
会場は割れんばかりの大きな拍手。
いや、これは大袈裟ではなく、本当に大きな拍手でした。
もちろん私も目一杯拍手をしました。
大きな拍手がやがて手拍子に変わり、カーテンコール(って言うのかな?・笑)。
私はスタンディング・オべーションをしようかと一瞬思ったのですが、結局やらずじまい。
このへんが日本人、決定力がないところです(笑)。
手拍子&拍手は鳴り止むことなく続きましたが、楽士の皆さんの音楽、特に笛の音がさらに大きな手拍子を誘い、カーテンコールは3回(4回だったかな?)続きました。
ということで、レポふうのものを書きましたが、かなり端折ってますし、記憶が曖昧でいい加減なところもあり、申し訳ないっす。
間違ってる部分もあるかとおもいますが、そのへんのところはご容赦を。
現代狂言『連句』の感想をひと言で言えば、とにかく面白かった。
これに尽きます。
最初から最後までずっと笑ってました。
この「面白い」というのは大事で、いくら新しいことをやったとしても、面白くなければ仕方ありません。
「新しいことをやりました、でも面白くありませんでした」では、単なる独りよがりの頭でっかちな企画ということになってしまいます。
これだけ面白い舞台になった現代狂言、狂言とコントの融合という試みは、大成功だったと断言していいと思います。
実を言えば、観に行く前はちょっと不安でした。
新しいことに挑戦する南原さんは好きですし、私自身もこういう新しいものが好きなのですが、「もしかしたら南原さんの意気込みが空回りしちゃうんじゃないかな?」って。
でも、そんな心配は杞憂でした。
野村万之丞さんがウリナリで何度もいってた言葉、「見えないものを信じる」。
この現代狂言は、そんな、見えないものを信じた人たちが創り上げた素晴らしい舞台でした。
誰もやっていない、手本のない中で創り上げた現代狂言。
まだまだ手探りの部分も多いと思います。
今回見ていて、アドリブを飛ばして笑いをとったりしてる場面などは、「どこまでやるんだろう?あまりやり過ぎても違うんじゃないかな?」と、大笑いしながらもちょっと思った部分もありましたし。
とは言っても、これは旗揚げ公演。
これからも試行錯誤をしながら、さらに面白い舞台を創っていってくれることでしょう。
本当に、楽しみです。
あと、こんな面白い舞台を、たった4公演しかしないというのは、あまりにももったいなさ過ぎます。
いろいろ事情はあるかと思いますが、今度は是非々々、公演数を増やして欲しいっす。
あ、もちろん、今回の舞台の再演っていうのも全然オッケーですが(笑)。
こんな貴重な舞台を見ることができ、現代狂言の助産士として立ち会えて本当に良かったです。
狂言とコントが結婚したら・・・。
とても面白くて楽しい、立派な子供が産まれましたとさ。
つづく・・・。