日経新聞のWEBサイトをみていたら「ビーガン(=完全菜食食)」の記事があった。
日経新聞:完全菜食ビーガンの可能性 34億人市場の入り口に
「ビーガン」と呼ばれる肉や魚だけではなく鶏卵や牛乳などを食べない菜食主義の人たちが、観光などで訪れた時の食事の問題を提議した記事だが、個人的にはさほど心配することではないのでは?という気がしている。
何故なら、日本には「精進料理」と呼ばれる肉や魚は当然、鶏卵や牛乳などを使わない料理が、古くからあるからだ。
確かに、旅行者が訪れるような観光地には「精進料理店」が多いとは思わないが、「精進料理の本」は書店で数多く見かけることができる。
私も、お盆の料理をつくるため購入し、お盆の時には参考にしている。
「精進料理」と言っても、現代的にアレンジされたお料理も多く、「精進料理=和食」では無いような提案もされている。
日本料理店でなくても「精進料理のレシピ」は、参考にできる内容が多いはずだ。
問題があるとすれば、食事をする場所よりも日常生活で購入する様々な食品(カップ麺やスナック菓子を含むおやつ)などが、「ビーガン向け」となっていない、ということだと思う。
工業製品化された食品の場合、製造ラインの都合上、鶏卵や牛乳などを完全に排除することはできない。
それは、カップ麺やお菓子の裏側に書いてある「アレルギー表示」を見ればわかる。
「ビーガン向け」の専用製造ラインをつくるのは、企業側にとっても負担が大きいだろう。
それが「ビーガン向け食品」が一般化しない、最大の理由なのでは?
日経では「34億人」という大きな数字をインバウンドの数字として挙げているが、果たして34億人のビーガンが日本に来るのか?と言うと、話は違うはずだ。
日本に来る為に飛行機などを利用する必要がある場合、搭乗する飛行機会社が提供する機内食も「ビーガン向け」のものでなくてはならない、ということになる。
そこまでして、オリンピック観戦の為に来日する海外の観光客はどれほどいるのだろう?という、疑問もある。
むしろ問題となるのは「ハラール食」なのではないだろうか?
「ハラール食」と呼ばれるイスラム教にのっとった「食品」は、日本でも徐々に増えていると感じている。
近所のスーパーで見つけたこめ油のパッケージには、アラビア語と日本語で「ハラール対応」と表示されていた。
随分遠い話だと思っていた「ハラール食」のほうが、身近な問題なのだと実感した。
しかし「ハラール食」について、どれだけ社会的理解が進んでいるのか?と言うと、話は別だろう。
「ビーガン」のような、完全菜食であれば排除するものも、分かりやすい。
もしかしたら「アレルギー対応食」のほうが、大変かもしれない。
それに対して「ハラール食」というのは、宗教というバックボーンを知る必要がある。
日本では馴染みがあるとは思えない、イスラム教という文化を知り、その上で食材を調達し、調理をする必要があるからだ。
インドネシアは身近な国ではあるが、イスラム教徒の多い国としても有名で、観光で来日する人達だけではなく、仕事を得る為に来日する人達も少なくないはずだ。
とすれば「ビーガン」よりも「ハラール食」についての理解を進めるほうが、先のような気がするのだ。