名古屋にある百貨店の一つ「丸栄」が、百貨店事業から撤退する、というニュースが先日あった。
CBCニュース:丸栄 百貨店事業から撤退も (音声あり)
名古屋以外にお住まいの方にとって「丸栄」という百貨店は、馴染みがないと思う。
「三越・伊勢丹・高島屋・大丸・松坂屋」のような、全国展開をしている百貨店ではなく、地方百貨店の老舗として名古屋では親しまれてきた百貨店だからだ。
この「丸栄」に限らず、全国にある地方百貨店がここ2,3年次々と閉店をしている。
地方の地元資本による百貨店そのものは、全国展開をしている百貨店と比べると、その規模も小さく品揃えという点でも、不利な点があると思う。
「百貨店で買い物」が、週末の楽しみだったり、特別な買い物(というイベント)であった昭和の時代、地元資本の百貨店の存在は、その地域にとっては「顔」でもあったはずだ。
その「地域の顔」が、ドンドン閉店していくということは、その地域全体が元気がなくなってきているような、印象にもつながっていくような気がしている。
小売そのものが、百貨店から大手スーパーが展開する「ショッピングモール」へと主役が移り、今ではAmazonや楽天などを中心としたネット通販が、小売りの主役へと変化し始めている。
そう考えると、地元資本による地方の百貨店はとても厳しい状況になっていることは、十分理解できる。
何より基本「定価販売」である百貨店は、バブル経済崩壊後苦戦を強いられるのも当然かもしれない。
以前に比べ、「セール」を打つ回数は増えたが、それでも百貨店の基本は「定価販売」ということになるだろう。
一方、バブルが崩壊してから多くの百貨店がしてきたことの一つは、「場貸し」だ。
売り場の一部を「他の小売り業に貸す」というテナント収入で、収益を上げてきた。
以前は、海外の有名ファッションブランドが中心だったが、ブランド戦略で路面店へシフトするようになると、百貨店らしさを感じさせない事業者が入ってくるようになってきた。
名古屋の随一の老舗・松坂屋は、バブルの頃に建てた別館の複数フロアーを「ヨドバシカメラ」、1階の通りに面した場所にはH&Mが入っている。
H&Mはまだアパレルなので、それほど違和感があるわけではないが、ヨドバシカメラのフロアーは、さすがに違和感がある。
「あれ?!ここって松坂屋だったけ?」というくらい、松坂屋感は無い。
今回の丸栄は、既に製薬会社である興和が支援し、子会社化するようだ。
製薬会社の興和と言っても思い浮かばない方もいらっしゃるかもしれないが、「キューピーコーワ―」という商品名を聞くとすぐにわかると思う。
その興和は随分前から、テナントビルをいくつも所有していることを考えると、百貨店事業ではなくテナントビルとして活用するということも、当然だろう。
百貨店に限らず、「買い物の楽しさ」ということが、忘れられているような気がしてならない。
AmazonをはじめとするECサイトは、確かに便利だがそこには「買い物に行く」という楽しさがあるのだろうか?
商品を見ながらアレコレ迷ったり、何気なく目にとまった商品に「素敵!」と手に取ったりする、ワクワク感などは、実際に買い物に行かなくては経験できないコトのように思えるのだが・・・。