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博物館や美術館を観光資源にするには・・・

2017-04-16 22:26:03 | アラカルト

大臣という職にある方々は、時折とんでもない発言をされることがある。
いわゆる「暴言・放言」と言われる類になるのだが、この「暴言・放言」には、「品性に欠けている」と感じる言葉もあれば、「学校の成績は優秀だけど、それ以外は・・・???」という言葉まで、いろいろある。
今日、新聞社のサイトを賑わした山本地方創生相の「一番のがんは、学芸員」という発言は、「学校の勉強はできたけど、教養は?」と感じさせる言葉だったように思う。
讀賣新聞:山本地方創生相「一番のがんは学芸員」と発言

どうやら山本地方創生相の思い描いている「地方創生」は、「美術館や博物館を観光資源にして、地方の活性化に結びつける」ということらしい。
この発言を聞く限りでは、そのように思える。
確かに、パリの「オルセー美術館」や「ルーブル美術館」、ロンドンの「大英博物館」、ニューヨークの「メトロポリタン美術館」や「スミソニアン」など、すぐに思い浮かぶ美術館や博物館が海外にはいくつもある。
これらは、もともと著名な収蔵品が多くあり、常設展だけでも多くの観光客を呼び寄せることができる美術館や博物館だ。
では日本の場合はどうなのだろう?

「国立」と名の付く美術館や博物館の多くは東京に集中し、地方の美術館や博物館はその地域の名士と言われる人たちが私財を投じてつくられているか、県や市の運営によるものが多いはずだ。
私財を投じてつくられた美術館としては、倉敷の「大原美術館」などが有名なところだろうか?
「大原美術館」だけではなく、今でも私財を投じ、公益法人として運営をされている美術館はいくつもある。
しかし、その規模は海外の著名な美術館や博物館などと比べ、こじんまりしている。

そう考えると、山本地方創生相が考えるような「美術館や博物館を観光資源にして、地方活性化」というのは、現実的な発想ではないと思うのだ。
まして、美術館や博物館の「展示企画」をする学芸員を、邪魔者扱いにするような発言をするということは、美術館や博物館がどのように運営されているのか知らない、ということになるだろう。
「学芸員の仕事」を理解していない、ということもあるだろう。

もう一つ山本地方創生相の発言が、勘違い発言のように思えるのは、地方の美術館や博物館の運営そのものがとても厳しい状況にある、という点だ。
収蔵品などが少ないために、多くの企画展などは「他の美術館からの借受」ということになる。
名古屋市が運営している「ボストン美術館」などは、その名前の通り米国の「ボストン美術館」から、美術品を一定期間借受をして展示していた。
その「借受期間が終了」するため、美術館の閉館が決まっている。
理由は、財政的問題だ。
朝日新聞:名古屋ボストン美術館、閉館が決定 18年度末までに

ただし、ここ10年くらいの間で「アートでまちおこし」という動きがあることも確かだ。
新潟の「妻有・大地の芸術祭」や、瀬戸内海の直島を中心に開催された「瀬戸内国際芸術祭」だ。
このような芸術祭は、国内外からも注目され会期中は、その地域の人口を大きく上回る人たちが集まる。
その点だけを考えれば、「芸術で地域活性化」の成功例と言えるだろう。
だからと言って、日本全国の地方で同様の「芸術祭」ができるわけではない。
なぜなら、「芸術祭」を開催するために「優秀な学芸員」とイベントプロデューサーが必要だからだ。
「イベントプロデューサー」と言っても広告代理店ではなく、芸術や博物館などを熟知していて「金儲け」ではない視点の出資者を集めることができる人物だ。

「美術館や博物館を地域活性化の起爆剤に」というのは簡単だが、現実はとても難しく開催をするための重要なキーパーソンである学芸員を蔑ろにする発言をするというのは、いかがなものだろう。