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「ユナイテッド航空の乗客引きずり事件」で考えること

2017-04-12 11:44:56 | アラカルト

昨日、ユナイテッド航空機内で起きた「乗客引きずり出し事件」。
この事件をユナイテッド航空が起こした事件を、様々な視点で考えてみると「今の社会」が見えてくるような気がする。

Huffington Post:ユナイテッド航空機「オーバーブッキング」、警官が乗客をボコボコにして引きずり出す(動画)

まず事件の発端は、自社の4人の社員移動の為にオーバーブッキング状態にしてしまった、ということのようだ。
航空会社にとって「オーバーブッキング」そのものは、特別なコトではないらしい。
なぜなら、キャンセルが発生するコトを見込んで予約を取る、と言われいるからだ。
ところが今回は、キャンセルが発生せず予約で満席になってしまったため、社員4人が搭乗するための席を確保するために、このような事態が起きてしまった、という。

多くの人が感じていることだと思うのだが、「自社の社員の為に予約乗客を降ろす」という発想と行動を航空会社がする、という日本企業(だけではないと思うが)では考えられない対応だ。
通常であれば、自社社員を別便に搭乗させれば良いだけの話で、何が何でもこの事件が起きた便でなければいけない、という理由があったのだろうか?という点だろう。
警官によって引きずり降ろされた乗客は、予約をし正規料金を支払っているのだ。
企業側にとっては「利益を生み出してくれている人」だ。
「お客様は、神様です」という発想のない国だとしても、信じがたい行動だと言わざる得ない。

もう一つ考える必要があるのは、今回、自社社員の代わりに降ろされた人たちというのが、「白人ではなかった」という点だ。
「任意で降りてもらう人を選んだ」と、ユナイテッド航空側は説明しているが、選ばれた4人が4人とも白人ではない、というのは何か意図的なモノを感じる。
そのような行動が自然発生的に起きたとすれば、それは「無意識の中にある差別」だろう。
「公民権運動」が激しかった時代なら話はともかく、今でもこのような行動が起きるということは、人の中にある「無意識の差別」は、とても根強いモノである、ということだろう。
「他者を「差別」や「侮蔑」することで、自己存在を確認する」ということだろうか?
それとも、「社会の中で何気なく、継続的差別的発言や行動が行われている」のか?
トランプさんが登場してから、その「何気ない継続的差別」が表面化してきている、ということになるのだろうか?

「社会的変化」という視点で考えると、このニュースの切っ掛けとなったのが、居合わせた乗客がスマホで撮影をした映像で、SNSであっという間に拡散した、という点だ。
これまでも、社会を大きく揺るがすニュースの幾つかは、「たまたま居合わせた市民」がSNSなどを通して発信したモノがある。
「報道」の発信者がプロの記者ではなく市民になってきている、を可能とさせているのは紛れもなくSNSという、今の時代ならではの出来事だったと思う。
それだけではなく、スマホの画像の質が格段に上がり、鮮明な画像が撮影できるようになった、ということも関係している。

今日になって、ユナイテッド航空側は謝罪声明を発表しているが、「時既に遅し」感がある。
自社が行ったイメージダウンは、今後どれほどの影響を与え続けるのかは、ユナイテッド航空側もわからないだろう。
それほど、今回の「乗客引きずり事件」は大きなインパクトがある出来事だった。
様々な企業は「利益を上げる」のが、企業の使命ではなく社会の一員として、生活者が何を期待し、その期待にどう応えるのか?ということを、改めて考える必要があると思う。
当たり前と言えば当たり前のコトだが、企業リスクを減らす最大の思考だと思う。