日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

様々なことを考えさせられた週末

2014-01-12 18:25:42 | 徒然

昨年、「がん征圧月間」に合わせて放送されたNHK・Eテレの「ハートネットTV・がんと就労」というテーマのフォーラムに、昨日出かけてきた。

「がん」と言う病気そのものは、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人が罹り、3人に1人は、がんで亡くなっている。いわば「日本の国民病」の様な病気だ。そして、がんの研究、治療は日進月歩。腫瘍内科医(「抗がん剤」など薬によってがんを治療する専門医)の中には「がんは、死ぬ病気ではなく、慢性疾患になってきている」という医師も、少なく無い。
それだけ薬による治療成績が上がり、「余命○○ヶ月」と宣告される患者よりも、がんと言う病気と上手に付き合いながら、長い人生を終える患者のほうが増えつつある。

しかし、現実は「がん=死ぬ病」というイメージが社会的に強く、「がんに罹患した」と上司に報告しただけで、「会社を辞めなくてはならない」という雰囲気になることを恐れ、退職をする人が多いと言う現実がある。
会社の規模が大きければ、「傷病手当」などの福利厚生制度がしっかりしているので、その心配はまだ少ないが、昨今の様に不安定な非正規雇用者が多い中で、その不安定な雇用の状態で「がんに罹患」してしまうと、患者さんはいきなり収入の道が断たれるケースが少なくない。
零細企業においては、福利厚生面は当然、元々余剰人員などいるはずもなく、社員ががんで倒れることは、意外だが経営的な問題になりやすいと言う面があると言う。

それに拍車をかけるのが「高齢化社会」という点だ。
「高齢化社会」というのは、単に「高齢者が多い社会」というだけでは無い。
「労働人口が減ってきている社会」と言い換えられ、「労働人口の減少」は、税収や社会保障費の収入の減少ということにも繋がっている。
 「労働人口の減少対策」として、「65歳定年」や「女性の就労の促進」等が進められる大きな理由だ。だが、現実はどうだろうか?
統計で見ると、日本人男性の「がん罹患年齢」が急上昇するのが60代なのだ。60歳で定年された方が、数年後がんで亡くなったと言う話を、聞いたことがある方は多いのではないだろうか?

「女性の就労」と言う問題にしても、「働く女性」そのものは増えているが、その多くがパートタイマーなどの「非正規雇用」だ。もちろん、働く女性側にも「扶養控除内で働きたい」という希望が多いからなのだが、その希望ができるのは、主たる世帯収入がある夫がいる場合で、離婚などによりシングルマザーとなって仕事をしている女性が「非正規雇用」であるケースも多い。また、「派遣社員、契約社員」という働き方も一般的になってきている点も、「女性の就労」と言う点で、難しさであり、病気になった場合、退職させやすい環境だと言える。

昨年11月、厚生労働省の試算によると、「がん」を理由にした退職などによる社会的経済損失は、1兆8千億円だという。
実は平成24年6月に決まった「がん対策基本推進計画」では、「就労問題」が取り上げられている(具体的に「就労」という項目とはなっていない。「働く世代のがん対策」と「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」等が該当する内容)。
厚生労働省:がん対策基本計画(注意:pdfファイル)
企業側も「がん対策」に取り組むと言う時期が来ているのに、それが企業にも社会にも理解されていない現実・・・と言うことを考えさせれらたのだった。
いずれにしても、「お金の切れ目が、命の切れ目」という社会は、問題だと思う。