はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

熊の冬眠

2007年12月31日 | ほん
 24日に「贈与の霊」の話を書きました。その日に読んでいた本が中沢新一著『愛と経済のロゴス』。
 さて、クリスマス・イブの日に贈り物どうのこうのという年齢ではないんですが、今年一つだけもらった「贈り物」があります。従妹が送ってくれた画像付メール。この画像というのが「テディ・ベア」の絵。「なんじゃ、こりゃ」意味不明、と僕は思いました。このイトコというのが、以前に書いたピカソ好きの従妹ですが。この女、フツウの主婦なのにときに「謎」をちらつかせあなどれません。

 27日の記事で中沢新一の同じシリーズ『人類最古の哲学』から、「豆」の話をしました。その時はその本のまだ3分の1しか読んでいなかったのですが、読み進むと『シンデレラ』の民話のことが書いてありました。
 私達が知っている『シンデレラ』の物語は、妖精が出てきて魔法でかぼちゃの馬車を出すというバージョンですが、これはフランスの作家シャルル・ペローが書いたもの。実際は他にも色々なバージョンとあるといいます。シャルル・ペロー版は上流階級のお嬢様向けに書いたもののようです。
 グリム童話版では、妖精ではなく、「豆」と「鳥」と「ヘーゲルの木」がその役目を果たします。灰かぶりの少女(シンデレラ)が継母に「豆」をばらまかれてそれを全部拾うように命じられるのですが、それを鳥たちがたすけてくれます。そうやって徐々に灰かぶりの少女は「精霊界」と仲良くなり、その後「ヘーゲルの木」が舞踏会に出る知恵を貸してくれるのです。それが「王子様」との縁をとりもってくれます。「ヘーゲルの木」というのはケルト文明では聖なる木とされていて、生の世界と死の世界をつなぐものだったそうです。
 ポルトガル版『シンデレラ』では「魚」。
 そんな感じで400以上の『シンデレラ』の民話があるんですが、もともとはシンデレラは「精霊世界」と「この世」をつなぐシャーマンだというのです。「この世」にはない「知恵」をもたらすものですね。
 そして、世界最古の文書の記録にある『シンデレラ』は、なんと中国にあるんだそうです! しかもそれを発見してヨーロッパに最初に発表したのが、日本人南方熊楠(みなかたくまくす)なんですって。そしてこの中国版『シンデレラ』で「精霊界」と「王子様」の仲介役をするものは、「金の目の魚」なのだそうです。
 ん?   金の目の魚! 
 僕はその本のその箇所を28日に読み、はっと気づきました。前日27日に「金目鯛」を食べ、そのタイトルの記事と絵を書いている!  …こういうふしぎなことが起るからやめられないんです、「本」は! アア、不思議だなぁ。
 こんなふうになにかがグイグイ僕を「本」の深みにひっぱって行くのです。…どこまで行くのでしょう? わからない… 


 その中沢新一著『人類最古の哲学』を読み終わったので、昨日、そのシリーズの続編を読み始めました。その本のタイトルは『熊から王へ』。 …んん、熊?
 「熊」という人間に人気者のこの動物は、山の森のヌシです。寒冷地に住み、冬は穴にこもって冬眠します。冬のあいだずっと眠って夢を見ます。
 そんな「熊」の、古代でのイメージは「シャーマン」だというのです。「この世」と「あの世」、「人間界」と「自然界」、「かたい」世界と「やわらかい」世界、それらを結びつけるのがシャーマンです。
 人間は熊を食べ、(イメージの中で)熊に食べられます。
 ここではっと気づきました。「熊… あっ、テディ・ベア!!

 そういうことか! と、妙に納得したのでありました。うーん、そういえば今の僕の生活は、「人間界」から離れて「穴」の中で暮らしている冬眠中の「熊」のようです。
 なるほど、今のおれは「冬眠中の熊」か!
 「本」を読む…それは夢の世界にいるということか! その「夢」のなかに、時どき現実が交じってくるわけだ。夢の中なら「ふしぎ」が起ってもふしぎじゃない。それなら…時期がくれば…春になれば、目も覚めるだろう。じゃあ、いいさ、ウン、もうすこし眠っていよう…。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする