経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

公開担当者の仕事

2006-12-08 | イベント・セミナー
 今月26日に、ディーブレイン主催の「株式公開プロジェクトリーダー養成講座」で「株式公開と知的財産戦略」の講義を担当します。
 株式公開に向けた準備というと、業績の向上は当然のこととして、適切な会計処理、社内規程の整備など形式的な要件を満たすための準備が必要になります。一方、知財についてはどうかというと、こういう準備をしなければいけないという形式要件が決まっているわけではありません。これは、知財の位置付けや必要な業務が、企業によって様々であることに起因するものでしょう。
 可能な範囲で、権利別・業種別の一般的な要件を考えてみると、

 まず、特許については、企業によって個別性が高く、かつその影響を事前に予測することは非常に困難なので、個々の権利についての各論において一般論としてこうだ、と規定することは難しいと思います。また、業種によって要求水準も大きく異なってきます。そうすると、個々の権利ではなく企業の取組みとして、その業種として一定の水準に達したことをやっているかどうか、ということがチェックポイントになってくるのではないでしょうか。例えば、バイオ系であれば、重要な技術に対して相応の予算を投下して取り組んでいるかどうかが問われるでしょう。メカ系であれば、企業規模に比した保有特許や出願の件数、特許業務についての管理体制などが確認対象となるのではないかと思います。サービス系であれば、特許が審査の対象となることは少ないでしょう。重要なのが中味であることは勿論なのですが、公開審査で個別の権利まで見てはいられないことが殆どでしょうから、形式的にチェック可能な部分が一つのメルクマールになるものと思われます。

 一方、商標については明らかな問題点があれば発見しやすいので、個々の権利についても説明可能な状態にしておくことが必要でしょう。尤も、経営に影響のあるような重要商標の数はそれほど多くないことが一般的と思うので、社名、コーポレートブランド、主力商品あたりを固めておくことが重要になるものと思われます。

 コンテンツ系やソフトウエア関連では著作権が問題になることもあるでしょうが、著作権そのものは通常は検証のしようがないので、開発委託契約、ライセンス契約などの契約類が揃っているか、契約の内容に大きな問題がないか、契約時のチェック・管理フローが整備されているか、などがチェックポイントになると思います。

 訴訟などの紛争が生じていると確認対象になってくるでしょうが、経営上さほど影響のない争いであることも少なくないと思うので、負けた場合の影響を含めて、きっちり説明できるようにしておくことが必要でしょう。

 一般化できる内容は、とりあえずそんなところでしょうか。