2021年11月8日(月) 選挙権と意思決定
衆議院選挙が終わったが、期待していた地殻変動は起こらず、現政権の圧勝であった。
政権が継続して安定するのを歓迎する向きが多いが、面白味が半減したともいえる。
先日の報道では、立憲民主党の枝野代表、福山幹事長が、敗戦の責任を取って交代する模様で、10日の首班指名を行う臨時国会が、終了後になるという。
この選挙を通して感じた、幾つかの印象を述べる。
〇人権と選挙権
言うまでもなく、人は生まれながらにして皆平等、とは、基本的人権の基だ。
そこから選挙権も生まれるが、近代化後でも、長らく、選挙権は納税者だけだったり、男子のみだけで、婦人には選挙権がなかった。敗戦とともに、漸くにして、世界に通用する基本的人権が、与えられたといえる。成人すべてに、1人1票の選挙権があるようになったのは、そんなに、昔ではない。
選挙では、投票率が云々されるが、投票しない人間も多いのは、いかがなものか。劇薬かもしれないが、投票しない人たちの選挙権を、無くしたらどうなるだろうか?
専制王政を敷くサウジアラビアだが、女性に運天免許証が支給されて話題になったのはごく最近のことだ。世界で、唯一、女性に免許証がなかったようだ。
2017年9月に、女性の運転免許証に関する国王の勅令が出て、翌18年に、新法令が制定されている。
そして、衣装やスカーフも漸くにして、自由になったのだろうか。でも、下図のように、顔を覆う衣装で運転している女性もいるようだ。

また、米軍が撤退後にゆれているアフガニスタンで、女性の参画や女子教育の問題が云々されている。勧善懲悪省など、旧時代の制度が出てきているという。
〇多数決と小選挙区制
多数決は、Majyority多数と、Minority少数とが決まる、単純明快な意思決定法である。
小選挙区制は、区画を区切り、有権者を分けて、区画ごとの定員が1になるようにする制度で、多数決で、1名だけ当選者が決まる。
多数決では、賛成多数で事が決まるが、マイナーな、少数意見をどう扱うかが、問題となる。
国会等でも、十分な審議が尽くされたか否かが、いつも争われる。
数の力で押し切るのが与党のやり方だが、宿題が残っていないか、時間配分がどうだったか等が、目安だろうか。
小選挙区制で、区画割りを行うに当たって、各区画内の有権者数を、同じにすることは不可能なので、区画ごとの有権者数に差が出てくるのは、やむを得ないことだ。
選挙人の数ができるだけ同じになるようにて区角割りを行い、人口が変わると、区角割りも変更される。基本的には、国勢調査の結果に依るが、状況によっては、住民基本台帳の集計によることもある。
区画ごとの有権者数の違いから、衆議院、参議院の選挙で、一票の格差が出てきて、問題となる。今回の衆院選では、以下の様になっている。
最小区画 鳥取1区 231313人
最大区画 東京13区 482445人
一票の格差 2.08495≒2.09
の様に、格差は2倍を超えている。
区画ごとの数選挙人の数が、2倍をこえるのは、個人の権利に関する憲法上の重要問題で、司法からは修正が求められるのだが、当の国会では、のらりくらりで、対策が出てこない。
(衆議院「1票の格差」2.09倍 区割り見直しも再び2倍超に _ 2021衆院選 _ NHKニュース.html )
上記サイトにある、東京13区は、筆者の住む選挙区というのはショック!
1870年頃、アメリカの、マサチューセッツ州で、当時のゲリー知事が、自分に都合がいいように区角割りを変更した、という話がある。
このような、我田引水の区角割り法は、ゲリー知事の名前から、ゲリマンダー(Gerrymander)と呼ばれている。
(ゲリマンダー - Wikipedia.html を参照)
〇比例代表制
政党名で投票し、得票を、予め提出されたリストの順位で配分し当選者を決めるやり方だ。
政党間の議席配分は、ドント方式と言われ、惜敗率*の大きい順に当選となる。
*最高得点で当選して候補者と得票を比較した数値。惜敗率の大きい順から当選者が決まる。
ドント方式という呼称は、考案した、ベルギーの数学者の名前からきているという。
(ドント方式 - Wikipedia.html 参照)
本来は、合理性のある選挙制度と思われる。が、次項の、小選挙区比例代表並立制や、似たような呼称の小選挙区比例代表併用制*もあり、複雑で、すっきりしない印象が残る。
*比例代表併用制
比例代表によって議席を割り振り、小選挙区の結果に基き、当選者を決める仕組み。 ドイツ、ニュージーランドの、国会議員選挙で、使われていて、今期で引退する、ドイツのメルケル首相や、ニュージーランドのアーダーン首相も、この制度で選ばれているので、馴染みやすい。
〇小選挙区比例代表並立制
投票者は、個人名でなく、支持する政党名で投票する。
小選挙区に出ている候補者を、比例代表の候補者にも載せて置くことができ、小選挙区で敗れた場合は、比例で復活できる仕組みだ。
小選挙区には出ず、比例区のみの候補者もいる。(共産党 志位和夫委員長など。)
復活当選者は、当初は肩身が狭い思いをするのだが、それも、しばらくの間だけで、復活当選というレッテルは消えてしまうようだ。
とはいえ、政権与党自民党の肝心かなめの甘利幹事長が、小選挙区の神奈川13区で落選し、比例で復活当選したものの、責任を取って幹事長を辞任し、茂木氏に交代する一幕もあった。自民党の現役幹事長が、小選挙区で敗れるのは、初めての事といい、辞任せざるを得なかったようだ。
〇ボルダルール
投票時に、候補者に優先順位の得点をつけた投票を行い、この得点の多い順に当選者を決める投票法で、投票者が、各候補者に得点をつけて投票する点が、やや、面倒だ。
ボルダルールの呼称は、提案者の名前からきていて、ボルダーは、フランスの数学者で、250年も前に、この方式を考案したようだ。
政治の分野では使用例はわずかで、スロベニア、ナウルなどで使われている様だ。
( ボルダ得点 - Wikipedia.html を参照)
( 多数決の代替案「ボルダルール」のメリット・デメリットを分かりやすく どさんこ北国の経済教室.html を参照)
一方、各種賞の選考などでの使用例はあり、MLBのシーズンMVPの選出に使われているようだ。今月13日頃に、大谷翔平選手が、MVPに選出される可能性が大きいというのには、期待がかかる。
〇いろいろな選挙
*上位者による決選投票
・オリンピック開催都市の決定 IOC総会で、東京開催に決定
立候補都市 1回目投票 同率決戦 2回目投票
東京(日本) 42 60
イスタンブール(トルコ)26 49 36
マドリード(スペイン) 26 45
(第125次IOC総会 - Wikipedia.html 参照)

ロゲ会長の有名なポーズ!
・フランスの大統領選挙
一次投票で過半数を獲得した候補者が居ないときは、上位2候補で、決選投票を行い決定する。
現マクロン大統領は、この様にして選出されている。
・米国大統領選での方法
選挙人を選ぶ間接選挙である。
州単位の総取り方式のため、差が大きくなる。
・国民投票・住民投票
・憲法改正時の手続きの中に、国民投票が組み入れられている。
・大阪都構想が、住民投票で争われが、否決された。
・アイルランドで、2015年5月に行われた、同性婚の可否を巡って行われた国民投票の結果、同性婚が、世界 で初めて認められ、カトリック教会側は大変な衝撃を受けた。当ブログの下記記事で取り上げている。
選挙と住民投票 3 (2015/6/2)

上図は、LGBTのシンボル旗