ケイの読書日記

個人が書く書評

今村昌弘 「屍人荘の殺人」 東京創元社

2022-06-12 14:13:46 | その他
 数年前にすごく話題になっていたミステリ。2018年国内版「このミステリがすごい!」第1位受賞。なるほどね。
 クローズドサークルってのは一般的には、台風が来てペンションに通じる一本道が土砂崩れにより通行止めとか、海に浮かぶ小さな島にバカンスに来たが、船が流されてしまいorエンジンが故障して、小島に取り残される…といった状況を意味するが…。この「屍人荘の殺人」では、大勢のゾンビによってペンションが取り囲まれ、しかも電話や携帯がつながらないといった新しいタイプのクローズドサークルなのだ。
 えーーー!!なんて荒唐無稽な設定! さぞかしトリックもバカバカしいんだろうと思われたそこのアナタ! トリックはすごく緻密なんです。感心しました。

 ゾンビがなぜ大量発生したかというと、人為的なウイルステロ。自分の研究を人間で実験してみたいという研究者と、世の中をひっくり返したいというテロリストたちが合流し、ゾンビになるウイルスを人が密集しているロックフェスティバルでまき散らす。それどころか、自分自身にもウイルスを注射して自らゾンビとなり、他の人間を襲っている。

 色んなゾンビ映画で様々なゾンビが登場するが、ここに出てくるゾンビは吸血鬼タイプで、嚙まれるとアウト。体液で感染するらしい。空気感染はしない。もともと死んでいるので、1週間もすれば腐敗して動けなくなる。(夏場だと2、3日?)
 通報を受けた政府は、周辺を封鎖し、混乱がおきないよう情報統制する。だからペンションから外部へ電話が繋がらなかったり、スマホが圏外になっているのだ。
 中世ヨーロッパで、ペストが大流行している町を封鎖し、町に通じる道路に軍隊を配置し、町から人間が逃げ出さないようにして町を焼き払ったらしいが…それに近いんだろう。

 それにしても、ものすごい悪臭だろうね。でも嗅覚は慣れるのが早いというから、どうってことないかも。感染力が100%なんてウイルスあるんだろうか?ここのゾンビは、食料として人間を喰らう訳ではなく仲間を増やそうとして襲っているからタチが悪い。
 でもそうすると、世界中の人が全部ゾンビになってしまったら、結局ゾンビも絶えるしかないね。

 ゾンビが強烈すぎて、肝心のトリックの方に頭が回らない。でも、本当に精巧にできたトリックなのだ。ぜひご一読あれ!
コメント
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