ケイの読書日記

個人が書く書評

塩田武士 「罪の声」 講談社文庫

2022-06-04 16:11:15 | その他
 このブログを読んでくださってる皆様は「グリコ森永事件」を覚えていらっしゃるだろうか。この小説「罪の声」はその事件を下敷きにしている。1984年の事件だから、まだ生まれていない人も多いだろう。昭和の有名な未解決事件だ。

 私は当時20代半ばで、個人的にすごく忙しい時期だったし、お菓子を買うような年齢でもなかったので、ニュースで騒いでるなという印象だけで、しっかり新聞や週刊誌を読んだという記憶がない。
 ただ、大企業の社長が誘拐され、身代金が要求されたのが発端だったので驚いた。誘拐というのは、小さな子どもを標的にするものであって、成人男性を誘拐すると様々な事を記憶されて犯人にとって都合が悪いのだ。子どもを誘拐しても、後からぺらぺらと話されると自分たちが捕まってしまうので、誘拐した子どもを殺すケースがほとんど。
 でも、この事件では、社長は無事、解放された。

 その後、商品のお菓子に毒を入れると企業を脅して、企業からお金を脅し取ろうとした。実際、コンビニなどで毒入り菓子が見つかり、グリコ製品は店頭から撤去され、グリコは大打撃を受けた。犯人たちは、その他、数社を脅迫したことが分かっている。
 犯人たちは、表向きはお金を脅し取ることに失敗して、何も得ていない。でも、こういった計画的犯罪をやろうと思うと、準備のお金がものすごくいるんだ。犯人たちが何も得ず、あきらめるわけがない。この小説の中では、仕手筋がグリコの株を上げ下げして儲けたんじゃないかと書いている。

 それから、この「グリコ森永事件」で一番心に引っかかってるのが、場所の指定に子どもの声を使っているんだ。合成した音声でなく生の声。幼い男の子の声と若い女の子の声。なぜ? その声からアシがつくんじゃないの? もちろん犯人たちの身内だろうし、録音時には脅迫に使うなんて知らなかっただろうけど、ニュースで何度も自分の声が流れて、肝が冷えただろうね。人生終わったと絶望したんじゃないか。
 海外にいるのかな? 脅されてる? それとも殺されちゃったのかな?

 その子たちにも親がいるだろうに、よく我が子にやらせたよ。ボイスチェンジャーとか合成音を使ってやれよ。児童虐待だ!!!と当時は強く思ったね。
 生きていれば、今40歳過ぎ。50歳近いかもしれない。元気にしているだろうか?
コメント
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