ケイの読書日記

個人が書く書評

都筑道夫「朱漆の壁に血がしたたる」

2010-06-18 13:29:24 | Weblog
 心霊探偵・物部太郎と片岡直次郎のシリーズ第三弾。

 能登の旧家の、内部を真っ赤な朱漆で塗った土蔵の中で美女が殺害され、犯人としてそのすぐそばにいた直次郎が逮捕される。

 ものぐさ太郎の末裔を自認する、超なまけもの・物部太郎もさすがに部下の窮状をほってはおけず、調査に乗り出す。

 ストーリーやトリックは…可も無く不可も無く、という所か。
 しかし、最後まで面白く読めた。なぜか?やっぱり、ものぐさ太郎とその部下・直次郎のキャラによるものだと思う。
 例えば、直次郎が駐在所から手錠を掛けられたまま、太郎に help me と頼む時の会話が全く噛み合わなくて漫才のように面白い。

 それに、太郎が大金持ちのぼんぼんという設定のせいか、作者の都筑道夫の育ちがいいのが滲み出るせいか、太郎の服装や持ち物や趣味がすごくオシャレで垢抜けているのだ。
 そういった雰囲気を楽しむ事が出来る。


 ものぐさ太郎シリーズは、この第三作目で終了した様だ。『なめくじ長屋シリーズ』なんて止めて、こっちを書けばいいのに。やっぱり本格風味だから難しいのだろうか?
 ああ、残念!! 都筑道夫じゃなくても、誰がこのシリーズを書きたいという推理作家はいないんだろうか?
コメント
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