本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

鐘銘事件その後

2010-08-21 10:47:18 | Weblog
 昨日の続き。
 鐘銘事件に端を発した徳川側の要求した条件とは何か。
 その条件を、坪内逍遥の『桐一葉』では淀君に語らせている。以下丸写し。

「ナニナニ、三ヶ条の難題とは『秀頼どの、要害の地に居城あるゆゑ、世上の雑説止む時なく、天下動乱の基ゐなれば、暫く大阪をお開きあって、郡山大和国又は其の他望みの処へ』所替へとは慮外至極」

「『さもなくば諸大名同様に、毎年将軍家へ参勤あるか』エエ参勤とは何のたはごと」

「『ただしは御母公人質として、江戸表へお下りあるか』エエ穢らはしい、慮外千万」

 要するに、大阪城を出るか、参勤交代するか、淀君を人質に出すかというのが条件である。このひとつを呑めばよいとされていたが、徳川側としては、淀君がどれも受け入れないことを承知のことだろう。

 片桐且元は、淀君を江戸に行かせるのがよいとした。それで糾弾される。これが、『桐一葉』のテーマである。文語体で読みにくい面もあるが、たまに明治前半の戯曲もよいものだ。

コメントを投稿