本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

誤用2

2016-06-20 08:54:12 | Weblog
 社会学博士の肩書を持つ著者の本に「…ほかの権利との不平等や衝突を招いてしまう恐れがある」という文があった。ここにある「恐れ」は不適当である。
 
 漢和辞典によると「恐」とは、①「おそれる」の下にこわがる(恐怖)、かしこまる(恐縮)、②「おどす」(恐喝)、③「おそろしい」とある。ただ、心配の意には「虞」を用いるとある。
 ついでに、同辞典の「虞」を開くと、その意味は「うれい」、「心配」、「危惧」とある。
 
 要するに、冒頭の引用文は「不平等や衝突を招いてしまう虞がある」としなければならない。
 法律文では往々にして「…虞がある」の表現が出てくる。むろん「心配になる」、「危惧する」の意味である。こわいことになるという恐れではない。
 このように法律に使用するので、「虞」の字が常用漢字に残してあるのだ。

 もっとも、この誤用を認知したのは新聞協会の新聞用語懇談会がまとめた漢字表だろう。どの新聞社も『用字用語の手引』を出しているが、「おそれ」の漢字(怖れ、惧れ、懼れ、虞)はすべてを「恐れ」の表記にくるめてしまったからだ。

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