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古紙100%にこだわる環境省の愚行

2007-09-01 16:25:27 | 生物・生態系・自然・環境
 8月30日付け『朝日新聞』夕刊によると、省庁用のコピー用紙の規格をめぐって、林野庁と環境省が対立しているという(ウェブ魚拓)。
 政府が使うコピー用紙の古紙配合率は100%と定められているのに対し、林野庁が間伐材をコピー用紙に利用するよう求めているが、100%にこだわる環境省が反対しているのだそうだ。
 アジア諸国で古紙需要が高まり、わが国の古紙の輸出が進んだため調達コストが高まり、製紙業界は古紙使用割合の引き下げを求めているともいう。


《同省の担当者は「古紙100%のコピー用紙は資源循環の象徴。公費を使って地球環境を改善していくのが制度の趣旨で、リサイクルの後退につながるような見直しは軽々にはできない」と主張する。間伐材についても、持続可能な森林経営に役立つとの国際的な定義が確立されていないと突き放す。現時点で古紙100%の基準を変える必要はないとしている。》


 間伐が森林の保全に有効というのは常識かと思っていたが。
 業界団体の主張にはそれなりの根拠があろうものを。

 たしかに、古紙100%は資源循環の象徴だろうが、古紙100%は70%より環境に優しいと言えるのか。
 古紙100%といっても、回収した古紙がすんなり新しいコピー用紙になるわけではあるまい。分別したり、溶かしたり、インクを抜いたり、漂白したりといったさまざまな工程が必要なはずだ。そのために工場を動かすのにエネルギーが必要だし、環境も汚染する(汚染しないようにするためにもまたコストがかかる)。普通に考えれば、古紙含有率が高い方が環境負荷が高いと言えるのではないだろうか。


 そういえば、先週発売の『週刊ダイヤモンド』8/25号は、「ゴミ争奪 リサイクルの罠」と題する特集を掲載している。その中の「環境負荷を余計に高める矛盾だらけのリサイクル」に、次のような記述があった。


《「大量生産・消費・廃棄から脱却し、限りある資源を有効に活用する。そのため、ゴミ発生を抑制し、排出したゴミはできるだけ資源として適正に利用し、どうしても利用できないものは適正に処分する」――。リサイクルの理念は、基本法ではこううたわれている。あくまでリサイクルは「資源の適正な利用」が原則なのだ。だが、あまたあるリサイクルのうち、これを実現しているものは少ない。
 たとえば、日本製紙は古紙一〇〇%配合紙の販売を全面廃止した。じつは、紙のリサイクルは、パルプから新しく紙をつくる場合よりも石油を多く使う。一〇〇%再生紙の環境負荷の高さは製紙業界では半ば常識だったが、古紙含有率が高いほど環境に優しいという消費者のイメージが根強いなか、なかなか真実を打ち出せないでいた。「リサイクルは全面的に善」という思想が「適正な利用」を阻む。》


 環境省が古紙100%の根拠とするグリーン購入法の第1条には、こうある。


《第一条 この法律は、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人による環境物品等の調達の推進、環境物品等に関する情報の提供その他の環境物品等への需要の転換を促進するために必要な事項を定めることにより、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を図り、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。》


 目的は「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築」にあるのであって、資源循環100%をうたうことにあるのではない。
 石油やレアメタルのような地下資源と違って、森林は再生可能な資源だ。資源循環100%にこだわる意味がどれほどあるだろう。そのために石油を無駄遣いしてどうするというのだろう。


 「グリーン購入法」で検索していたら、環境省のホームページにこんなQ&Aがあった。


《今年度中に「古紙パルプ配合率100%品」の生産が中止され、グリーン購入法に適合するコピー用紙が市場からなくなると聞いていますが、判断基準の見直し等は行わないのでしょうか。

海外への古紙流出による古紙不足を受け、一部の製紙メーカーが「古紙パルプ配合率100%品」の生産を中止するようですが、コピー用紙等の基準上100%となっている品目については、他メーカーへのヒアリング結果をうけ、基準を満たす製品の生産は継続されることから、緊急の見直し予定はございません。》


 古紙不足で古紙100%を維持するためには、製品は割高にならざるを得ないのではないだろうか。
 敢えてそれを使うというのか! 官公庁が! 税金で! 環境負荷も高いのに!
 こういうのは、省庁エゴ以外の何物でもないと思う。

 武田邦彦の『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)が売れていると聞く。
 昔からこの種の本はちらほら出ていたが、ベストセラーにまでなったのは今回が初めてではないだろうか。
 私はこの人の本は、以前『「リサイクル」してはいけない』(青春出版社)を読んだことがある。一部、これはどうかなという記述もあったが、基本的にはこの人の主張は間違っていないと思う。
 この種の本が読まれているのであれば、リサイクルに対する硬直した考え方も少しは変わってくるだろうか。



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