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浜田和幸参院議員の「一本釣り」に思うこと(2)――離党は悪か

2011-07-03 00:22:40 | 現代日本政治
(前回の記事はこちら

 浜田と同じ鳥取選出の石破茂政調会長のブログにはこうある。

浜田議員
2011年6月27日 (月)

 本日、鳥取県選挙区選出の浜田和幸参議院議員が自民党を離党し、菅改造内閣の総務政務官に就任することとなりました。
 先週末から様々な報道はあったものの、同氏から私に対して何の連絡も相談もなかったため、こちらから探して連絡がついたのが今朝のこと。
 私からは「一国の国会議員の判断にとやかく言うつもりはない。但し、私は、自分に一票を投じ、今の立場にしてくれた人たちの思いに背くことは決して許されることとは思わない」とだけ申し上げました。
 昨年夏、出遅れ、知名度の低い同氏を当選させるため、どれほどの鳥取県の自民党員が、あの酷暑の中、必死で活動したか。それに少しでも感謝の気持ちがあればあのような行動にはならないはずです。
 自民党は復興に協力していない、というのなら、党の復興関係会議でどれほど発言したのか。連立を巡って開催された両院議員会議に出席して意見を一回でも述べたのか。残念の極みであり、このような人物を推したことに、鳥取県の有権者に対して、全国の自民党支持者に対して申し訳ない思いで一杯です。
 
 歴史の混乱期には必ずこのような、自分が操られていることに気付かない道化的な人物が登場します。自分でも内心忸怩たるものがあったのでしょうか、離党届は本人が持ってくるのではなく、秘書に持参させました。誠に潔くありません。
 私自身、浜田氏を当選させるまでは自分の責務だと思ってきましたが、その後の活動に対してはすべて彼自身の責任と思い、あれこれ言うことを控えてきました。冷たいようですが、国会議員の自覚と責任とはそういうものだと思っています。それが「面倒見が悪い」と言われる所以であることもよく承知は致しておりますが、子供ではあるまいし、甘えるべきではありません。

 人の心を弄ぶこのような手法を使う菅内閣は決して長くないことを断言しておきます。自民党に対決姿勢を鮮明にした以上、脱原発を争点とした解散・総選挙も現実味を帯びてきました。いよいよ国の命運を賭けた戦いが始まるように思います。



悲しい一週間
2011年7月 1日 (金)

 浜田議員の件につき、多くのご意見を頂きました。あれから五日が経過し、何ともやりきれない、残念で悲しくて、口惜しくてたまらない思いで一杯です。 
 あのような行動をしながら一言も詫びることなく、地元に説明することもなく、ひたすら自己正当化を図るような人物が実際にいたということに対する驚きと自分の認識の甘さに対する嫌悪感。そんな人物であることが見抜けなかった己の愚かさ。そしてそのような者を鳥取県の有権者にお願いした申し訳なさ。自民党と私を信じて厳寒の中、酷暑の中、後援会活動や選挙運動をしてくださった後援者の皆様や、連立を組んでもいないのに支援して下さった公明党の皆様に対するすまなさ。それらがないまぜになって、眠れぬ日々が続きます。
 なによりも、被災地に一歩も足を踏み入れていないにも関わらず「復興支援のため」と言えること自体、被災者の方々のみならず国民全体を愚弄するものではないのでしょうか。

 これに関わった菅直人総理をはじめとする人たちに、鉄槌を下さねばなりません。このような人たちは、政治家としても人間としても失格です。世の中はそのような者たちが往々にしてのうのうと生き延びていることもまた事実ですが、諦めてはなりません。
 綺麗事に聞こえるでしょうし、世の中そうは甘くないことも重々承知していますが、少なくとも私は人の心を弄び、善意を踏みにじり、恩義(自民党に対する恩義というよりも、お世話になった人たちに対する恩義という意味で)を忘れるような人たちを絶対に許すつもりはありません。「世の中を舐めている」という言葉はこのような人々のためにあり、必ず思い知らせなくてはなりません。〔後略〕


 自分に投票してくれた選挙人、選挙活動に従事してくれた党員や後援者、世話になった人々のことを考えれば、離党して政権入りなどできるはずがない、浜田も、また引き抜いた菅や亀井も、「政治家としても人間としても失格」だというのである。

 国会議員とは、果たしてそのように考えて行動すべきなのだろうか。

 そういう石破は、離党したことがないのだろうか。

 1993年7月の衆院選で石破は3度目の当選を果たした。しかしこの選挙で自民党は初めて下野し、非自民・非共産8党派による細川内閣が成立した。
 石破は12月に自民党を離党し、翌年1月に同じく離党者である西岡武夫らと会派「改革の会」を結成した。同会は8党派政権に接近し、石破は4月に小沢一郎、羽田孜らの新生党に入党し、連立与党の一員となった
 短命の羽田内閣を経て、6月に自社さ政権である村山内閣が成立し、新生党は下野。同じく下野した日本新党、民社党などと共に新進党を結成し、石破もこれに参加した。
 しかし1996年10月の衆院選を前に新進党を離党して無所属で立候補し当選。1997年3月には自民党に復党した。

 つまり、

所属政党が下野
   ↓
離党して与党入り
   ↓
その党が下野し旧所属政党が政権復帰
   ↓
離党して与党である旧所属政党に復党

という経過をたどったわけだ。
 これは、上記の石破のブログの記述に照らせば、かなり不名誉な経歴ではないだろうか。

 石破のホームページを見ると、プロフィールにこの離党と復党について全く書かれていないことに唖然とした。
 不都合な過去は、なかったことにしたいのだろうか。

 石破だけではない。自民党には、いったん離党し復党した者や、他党から加わった者が少なからずいるはずだ。
 小池百合子総務会長はどうか。高市早苗政調副会長はどうなのか。

 国会議員はたしかに、自分に票を投じてくれた選挙人の支持によってその職に就くのである。
 そして、当選に至るまでには、選挙活動に直接従事する党員や後援者の尽力があり、その他様々な人間の協力が欠かせないこともまた事実であろう。

 だからといって、国会議員が、常に彼らのことを念頭に置き、彼らの意向に背かないよう行動しなければならないとは言えない。
 国会議員は、自分に票を投じてくれたものの代表でもなければ、その選挙区の代表というわけでもない。
 いったん国会議員になった者は、一人一人が国民全体の代表者なのである。
 選挙とは、○○党の議員を何名選ぶかという作業ではなく、あくまで××という人物個人を選ぶものである。
 それがたとえ比例代表制によるものであってもである。それは便宜上採られた選出方法にすぎず、選出された議員を縛るものではない。

 だから、国会議員は、それぞれの局面で、国民全体の代表者としての立場に基づいて、己の信じるままに行動すればよい。
 もちろんその結果、支持母体からの支援を受けられなくなったり、選挙人から見放されて次の選挙では落選したりといったこともあるだろう。政治生命を失うという事態に陥るかもしれない。
 そのリスクは本人が負えばよいのだし、浜田自身そんなことは百も承知だろう。石破が最初に述べているように、「一国の国会議員の判断にとやかく言う」べきではないのだ。

 浜田は1日に行われた産経新聞のインタビューでこう述べている。

--首相が交代すれば与野党協力が進むという声は強い

 「議論としては分かる。大連立とかパーシャル連合とか。でも、誰も首相の首に鈴を付けられていない」

 --菅政権は8月末までというのが大方の見方。大した仕事はできない

 「決して望ましい状況ではないが、8月以降もずるずると菅政権が続く可能性はゼロではない。それに、今を無駄にしたくない」

 --自民党にいても復興対策はできるはず

 「そういう人は多いが、所詮は一年生議員。どんな提言をしても10年早いとなる。だから、対策本部の中に入って動かしていくことが重要で、その場を首相が与えてくれた」

 --自民党公認で当選した。議員を辞めて民間人として協力すべきでは

 「自民党鳥取県連は文句を言っているが、昨夏の参院選では借金して県連に寄付したし、党本部から来た金も私の口座に入ったけど、(県連が)引き出して相談なく使っている。その金を返せって言うのはどういうことか」

 --政務官が終わったら政治家を辞める気は

 「6年間の任期はまっとうする」

 --政府の一員だが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や外国人参政権にも賛成するのか

 「こんなことやったら国がますますおかしな方向になると思ったら、良心に従って判断する。無条件に賛成するわけではない」


 浜田としては、要するに野党の中でいつまでもくすぶっていられないということなのだろう。
 おそらくは元々自民党員でも熱烈な自民党支持者であったというわけでもなく、国際政治学者としてのキャリアを生かした政界入りがしたかっただけで、参加する政権が自民党によるものであれ民主党によるものであれ、それほどこだわりはないのだろう。

 石破としても、支持者への体面上、また党3役であり同じ県の選出議員である立場上、このように述べざるを得ないという面はあるのだろうし、公式ブログの記述が全て彼の本音だとは限らないだろう。
 しかし私は、浜田の人となりも、国際政治学者としての主張も政治家としての主張もよく知らないが、仮に浜田の心理が上記のようなものであればそれは理解できるし、彼を無節操とか変節漢とか「人間としても失格」などという言葉で批判すべきとは思わない。

 ところで、浜田の名で検索していたら、「もっと休むに似ている」というブログのこんな記事が見つかった。

鳥取県の危機(自民党公認候補・浜田和幸氏に関して)
国際政治分析によって陰謀論を補強する者


 自民党鳥取県連が彼の擁立を決定した頃に書かれたものである。

 ここに書かれていることが浜田の全てではないのかもしれないが、一面ではあるのだろう。
 暗然たる気分にさせられた。


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