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藤沢周平の世界 映画"蝉しぐれ”

2005年10月09日 20時30分32秒 | 映画・社会

 

映画”蝉しぐれ”を見てきました。
人情味あふれる藤沢周平時代小説を映画化されたものです。  今年に、やはり藤沢周平の”隠し剣、鬼の爪”も見ましたが、どちらも時代小説である藤沢文学の哀歓を存分に味わいました。

 

ストーリーは、ありふれたラブストーリーですが、そこには、青春、友情人との出会い恋、父から子に継承される生き方が、詩情豊かに表現されていました。

藤沢文学の代表作であるこの「蝉しぐれ」は、下級武士の”牧文四郎”と幼なじみの”ふく”との叶わぬ恋藩内の陰謀をからめて描かれています。謀反者の子として母を助け、汚名を挽回するも幼なじみの”ふく”が藩主の妾となり、共に後継者選びの派閥闘争に巻き込まれると言うものです。

黒土監督は10年の歳月をかけ、日本の原風景を全面に出し詩情あふるるものとなっており、絵にしたいような景色四季を通じて出てきます。

”北の零年”も北海道の景色が素晴らしく、映画の醍醐味はストリーだけではなく、画面の美しさも見所ではないでしょうか?

その風景は、映画では、東北の小藩を想定されていますが、実際の撮影は京都、千葉、水戸、庄内、新潟、長野、近江八幡等が写し出されているとのことです。

  当初の題名は”朝の蝉”だったそうです。   そしてヒロインの名も”佐久””なみ””くに”等変わり、最終「ふく」に落ち着いたそうです。
これは、藤沢周平氏自身の江戸時代へのこだわりが現れていると思います。

最後に、”文四郎”と”ふく”が出会い、”ふく”が「文四郎さんのお子が私の子で、私の子が文四郎さんのお子であるような道はなかったのでしょうか?」と文四郎に問いかけ、文四郎は「それが出来なかったことを、それがし、生涯の悔いとしています」と応えています。 長い年月を経て再会した二人が万感の思いを吐露する場面が、この物語のすべてを語っていると思います。