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観音経

2011年09月30日 | 仏教・仏像

日本で、般若心経に続いてポピュラーなのが観音経じゃなかろーか。

一昨日の伝法院講座真言宗常用経典概説の第三回目が、観音経解説だった。

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観音経とは通称で、正式には法華経に含まれる観世音菩薩普門品を指す。

法華経は、今から2000年前にインドの周辺地域で成立したと考えられており、アジアの広い地域で人気があったためにサンスクリット語、チベット語、モンゴル語、ウィグル語、漢語など様々な言語に翻訳された。
日本では経典を翻訳することはなく、漢文経典が読まれた。

漢訳された法華経は3つあり、

①竺 法護(じく ほうご)訳 「正法華経」 286年漢訳
②鳩魔羅什(くまらじゅう)訳 「妙法蓮華経」 406年漢訳
③闍那崛多(じゃなくった)・達摩笈多(だつまきゅうた)共訳 「添品妙法蓮華経」 601年漢訳

この中で鳩摩羅什訳の「妙法蓮華経」が法華経の中核をなし、法華経=妙法蓮華経となっている。

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話は逸れるが、
経典の漢訳と言えば、鳩摩羅什、玄奘三蔵、不空。
鳩摩羅什と玄奘三蔵は二大漢訳家とも呼ばれる。
玄奘三蔵は三蔵法師、不空は真言宗の第六祖、しかし鳩摩羅什は・・・?
まー、どのような坊さんだったかは分からないが、鳩摩羅什が中国そして日本の仏教に与えた影響は計り知れぬものがあると思う。
NHK学園で仏教美術を学んでいた時も鳩摩羅什の出典が多く、講師陣が親しみを込めて
「ラジュ~♪」
と呼んでいたのを思い出す。
「ああ、通はああやって呼ぶのかぁ・・」
なんて、妙なところで感心していた。

話を元に戻して、
鳩摩羅什による
法華経 観世音菩薩普門品第二十五
が、我々が観音経と呼んでいるもの。

普門品とは普門はあまねく開かれた門のことで、
あまねく方向にお顔を向け、すべての人々を救済せしめる観音菩薩の功徳を説く
の意。

ちなみに、観音さまには観世音菩薩観自在菩薩の2つがあるが、
観世音菩薩は観る+音で鳩摩羅什によるもの。
観自在菩薩は観る+自在で玄奘や不空によるもの。
日本全国にあまたの観音霊場があるけれど、観世音菩薩と呼ぶのが圧倒的多数だと思う。
ウチもそうだし・・・

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観音経の中核を成すのが、経典の始めに登場する
「善良なる者よ。もしも数え切れないほど多くの衆生が様々な苦難を受けた時、観世音菩薩の名を聞いて、一心にその名を称えるならば、観世音菩薩はすぐさまその声を観じて、一人残らずその苦難から救いとってくれるであろう」
ってもの。

様々な苦難とは、
七難・・・火難、水難、風難、刀杖難(傷害)、鬼難、枷鎖難(刑罰)、怨賊難(盗賊)
三毒・・・貧(欲)、瞋(怒り)、痴(愚かさ)

その上、苦難からの救済だけではなく、二求(2つの望み)を叶えてくれる。
二求・・・男児または女児をもうけること。

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それから経典は、
観世音菩薩は三十三の姿に化身して十九の説法を説く
と続く。

ちなみに、変化する・化身のことをサンスクリット語でアバターラと言い、それは大ヒット(?)映画アバターの語源だって。

●三聖身●
(1)佛身
(2)辟支佛身(自分独りで修行し、独力で悟りを開く者)
(3)聲聞身(小乗の僧侶たち)

●六種天身●
(4)梵王身
(5)帝釈身
(6)自在天身
(7)大自在天身
(8)天大将軍身
(9)毘沙門身
●五種天身(人間界)●
(10)小王身(一国の王)
(11)長者身(裕福な人)
(12)居士身(徳の高い人)
(13)宰官身(国に仕える人)
(14)婆羅門身(バラモン教徒)
●四衆身●
(15)比丘(16)比丘尼(乞食の仏教修行者)
(17)優婆塞(18)優婆夷(在家の仏教信者)
●四種婦女身●
(19)長者(女性で裕福な人)
(20)居士(女性で徳の高い人)
(21)宰官(女性で国に仕える人)
(22)婆羅門婦女身(女性のバラモン教徒)
●童男・童女身●

(23)童男
(24)童女
●人八部衆●
(25)天
(26)龍
(27)夜叉
(28)乾闥婆
(29)阿修羅
(30)迦樓羅
(31)緊那羅
(32)摩睺羅伽
(33)金剛身

(1)(14)までの一化身に一説法。
(15)から(18)までで一説法。
(19)から(22)までで一説法。
(23)(24)で一説法。
(25)から(32)までで一説法。
(33)で一説法。
よって、計十九説法となる。

それからも、観音様の功徳はまだまだ続き、先の七難からの救済プラス十二難からの救済となる!
すべて、観世音菩薩の力を念ずれば救済されると説かれている。

そして、フィナーレ・・・

妙音観世音 梵音海潮音
勝彼世間音 是故須常念
念念勿生疑 観世音浄聖
於苦悩死厄 能為作依怙

具一切功徳 慈眼視衆生
福聚海無量 是故応頂礼

妙音である観世音は、梵天の音、世間の音に優れているのです。
だから、常にその名を念ずるべきです。
観世音をよくよく念じて、疑いの心を抱いてはなりません。
観世音菩薩は浄らかな聖者であり、苦悩や災厄において最も頼みとなるのです。

観世音はあらゆる功徳を具え、慈眼をもってあらゆる人々を視ており、その福徳は大海のごとく無量なのです。
だから、観世音を心から礼拝すべきなのです。

佛説是普門品時
衆中八萬四千衆生
皆發無等等阿耨多羅三藐三菩提心

こうして、仏がこの普門品を説いた時、集まった八万四千の人々はみな無上無比の悟りの心を起こしたのでした。

つまりは、我々が観音様の名を呼ぶ・観音様を供養する・観音力を念ずると、
観音様は様々な姿となって我々の目の前に現れ、七難・十二難からの救済三毒からの解放、二求の成就のご利益がある
と説いた経典で、なんつーか、幼稚園児のマナーブック並みに分かりやすい。

分かりやすすぎるあまり稚拙にも思え、
「お経は分からないから有難い、とは良く言ったものよのぅ」
と思いながら聴講していたが、講師の最後の言葉でそれは払拭された。

「とても理論的とは言い難い、観音の絶対的な力を讃える内容に終始しています。
幼稚と言えば幼稚かも知れませんが、信じて繰り返し唱えることにより人間に力が宿るのです。
そして、これこそが信仰と言えましょう」

この言葉に、頭をカツン!と叩かれた気がした。

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そう、言霊と言う言葉があるように、人が考え・思い・信じて口から発した言葉は魂を宿すものなのだ。
観世音菩薩の功徳を信じ、一心に観音経を唱えるならば、観音経の言霊が良き方向に導いてくれるのではないか。

兎角、現代の日本人は理論武装しては真相の究明とやらに明け暮れ、小利口になっていると思う。
もっと単純でも良いのではなかろうか。

例えば、アメリカ人が何かと言うと星条旗に向かって胸に手を当てるようなこと。
国旗に熱い視線を送ることを習い性にした国民には、やはり強い愛国心が芽生える。
単純な繰り返しのようだが一個人への刷り込みは大きい。
そして、その集合体は強固で大きな力となって行く。

目の前の災厄から逃れたくて一心不乱に観音経を唱える。
「何を非科学的な!」と嘲笑されるかも知れない。
しかし、その姿こそが美しいのだ。
美しい輝きを見せた人は必ずや良き方向に導かれると思う。

理も大切だが、それと等しく心や念も大切にしたい。
・・・そう痛切した観音経解説だった。


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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
観音様とか、お不動様、お地蔵様という仏様は、と... (ナムナム)
2011-10-01 00:15:05
観音様とか、お不動様、お地蔵様という仏様は、とにかくその力を信じ、その力によって救われたい、救っていただきたい、という切なる願いによって、信じられているものナムね。
おっしゃるように、信心の力なむ。
小利口に合理的に考えて、信心や習俗を迷信と切り捨てることが合理性であり、文明的と思われがちナムが、祈りを捧げることで救われる、という気持の在り方というものが、逆に合理的なのかも知れないナム。
不可思議の存在ナムね。
科学を突き詰めると、宇宙は分からないし、DNAとかだって、どうしてこんな仕組みができたのかは不可思議ナム。
故に、不可思議の力を信じる、ということであって良いと思うナム。

よい勉強をされたナムね。羨ましいナム。

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29日の最終日に再度東京博物館に、胎蔵界曼荼羅... (デーモン檀家)
2011-10-01 01:15:30
29日の最終日に再度東京博物館に、胎蔵界曼荼羅を、見にいってきました。
そこで、空海 秘蔵宝やく 角川ソフィア文庫 マンダラとは何か NHKブックスを購入し現在勉強中?です。
愛宕下 真福寺は、まんだらをもらった同級生が、何年か勤めていたような気がしますが、わたしも虎ノ門に勤めていたので一度あそびにいきました。

密教美術展は二回目だったので、ブログ確認のため帝釈天の乗る象さんのふぐりを、かみさんと探しましたが、わかりませんでした。
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ナムナムさん (カメ)
2011-10-01 10:32:49
ナムナムさん

解明出来ないもの。
それは宇宙、そして脳。
解明しようとする時、片方は膨大に向かい、もう片方は極小へと向かう。
ああ、まんま仏教ですな~♪

前回の錫杖経も錫杖の威力(?)を讃えるような内容で、観音経と同じく
「信じる者は救われる」
(うーむ・・安易すぎる言い方だなぁ)
的な経典でしたが、次回の理趣経はどうなのでしょう?

それと、観音経は般若心経と等しく、唱えて・聴いて心地良いお経だと聞いております。
心地良いと言うのは、脳の何らかに働きかけているのでしょうねぇ。
音符がないのにそれが出来るなんて、本当に凄いことだと思うのです。
果たして心地良き旋律は、サンスクリット語もチベット語も奏でるものなのでしょうか?

講師の佐々木先生は、昔十一面観音の研究をされていたそうで、講義の最後に変化観音の話になり十一面観音の話に及んだのですね。
実は、自分が一番好きな尊像は十一面観音でして、ワクワクしながら話を続きを待ったら、哀しいことに時間切れ、講義は終了してしまいました(涙
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デーモン檀家さん (カメ)
2011-10-01 10:38:23
デーモン檀家さん

一昨日の記事で愛宕神社参道脇にあるアパート廃墟に触れましたが、マンダラをくれた友人さんは、そこに住んでおられたような・・・(笑

あの頃の真福寺は良かったですよね(トオイメ
現存していたなら、間違えなく「都内のパワースポット」と呼ばれて賑わっていたことでしょう(笑

ふぐり・・・見つからなかったですか?
東博側が慌てて前バリを貼ったのでしょうか?ヾ(ーー )オイオイ・・
白象の後ろ両脚の間に「おいなりさん」が見えるのですが・・・
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「ネンピーカンノンリキ」の繰り返しなどまさにリ... (ナムナム)
2011-10-01 21:45:53
「ネンピーカンノンリキ」の繰り返しなどまさにリズミカルで、錫杖を振りながら、太鼓を叩きながら、力一杯唱えれば、祈願の法要。
静かに唱えればお通夜にもオッケーなお経です。

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5文字の「偈文」は、中国製ではないかと思えるナム... (ナムナム)
2011-10-02 08:03:24
5文字の「偈文」は、中国製ではないかと思えるナムが、サンスクリットを偈文にしたとしたら凄いぞ中国(大昔は)とううことナムね。
サンスクリットの教典は、元々お釈迦様のお言葉を暗誦したことに始まっていて、とてもリズミカルな詩のようなものナム。
理趣経を2時間で、となると、歴史と構成と概略でナムかねぇ・・・。
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ナムナムさん (カメ)
2011-10-02 10:29:52
ナムナムさん

スゲ~
唱え方で祈祷にも通夜にもオッケーなのですね。

NHK学園講座にドップリだった頃、
「実はね、観音菩薩こそが一番怖い御仏なのです」
と聞いたことがあります。
あまねく衆生を救う観音様、しかしそれだけに効力が大きく、それを逆に使うとトンデモナイことになると。

祈祷と言うと不動明王、愛染明王、または薬師如来を思い浮かべますが、何の何の観音菩薩で祈祷の方が効力絶大かも知れませぬ。
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ナムナムさん (カメ)
2011-10-02 10:34:44
ナムナムさん

今回の観音経は2時間ノンストップ、しかも早いペースでの講義でした。
それでもイッパイイッパイ。
確かに、理趣経全部を網羅するのは無理でしょうねぇ。

ってことは、ナムナムさんが仰るように広く浅くになるのか、または何処かの部分だけ取り出したものになるのか。
その場合は百字の偈?
それとも十七清浄句?
(*^▽^*) ニョホホ
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ナムナムさん (カメ)
2011-10-02 13:56:38
ナムナムさん

今、「全スケジュール」を見たところ、マジで十七清浄句です!

「智山勤行法則に収録される般若理趣経を取り上げます。
十七清浄句に秘められた奥深い真言密教の世界を学びます。」

だそうで~♪
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カメさん (とちβ)
2011-10-02 21:35:00
カメさん
ありがたい、合理性などと次元の異なる、信じる概念、20歳の私は明確に拒絶しました。が、今はありがとうございます。
 とちβ
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