民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

『年中行事の民俗学』刊行

2017-06-01 15:44:43 | Weblog

谷口貢/板橋春夫編『年中行事の民俗学』(八千代出版 2017年6月20日 2300円)の執筆者への見本刷りが送られてきました。同時に書店にも並んでいるのか、それとも書店へはこれからなのかわかりませんが、ともかく刊行。年中行事研究が停滞している中での年中行事の本ですが、学生の教科書というコンセプトのようです。私が書いたのは「祝祭日と年中行事」というもの。国の定める祝祭日が、民の年中行事にどうやって割り込み変形させてきたのか、民はどうやって受け止めてきたかなどをまとめました。結論をいうなら、国が押し付けてきた天皇家の「家の行事」を、民はある部分を受け入れ、ある部分は受け流してやり過ごしてきたということです。それでも国は、戦後の祝日にこっそりと戦前の天皇家の行事を忍び込ませ、スキあらば復活しようと狙っています。日本国憲法が明治憲法に戻される前に、実は祝日は表の顔を変えただけで戦前から継続しているのです。

民はやりすごしてきたとまとめましたが、それでよかったか。根っこから引き抜かれて枯れてしまうか、接ぎ木されて別の木になってしまうか。あんまり暗い未来を想像したくはありません。