教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

正義のミカタ=視方

2010-07-19 09:00:57 | 
正義のミカタ (集英社文庫)
本多 孝好
集英社


☆高校時代に徹底的にいじめられてきた蓮見亮太。大学で、虐げられることの恐怖をいかに克服するか。「正義の味方研究部」というコミュニティに入部することによって、共通の善とは何か学んでいく。

☆功利主義的で、リバタリアンな大学生とぶつかりながら、ある正義を完遂していく。しかし、相手も部活やサークル。コミュニティである。集団と集団の葛藤は、スターウォーズさながらの闘いになっていく。

☆しかし、そこで蓮見亮太は、「正義の味方研究部」の正義観と自分の正義観のどうしようもない溝を感じてしまう。

☆「正義の味方研究部」から脱退しようと決意。しかし、部員はなんとか引きとめたい。そのために決闘をする。議論という闘い。腕力による闘い。そこには民主主義の最終手段活用への道のメタファーがある。

☆ついに亮太は脱退するが、その瞬間、「正義の味方研究部」の在り方が変わる。新たな多様な価値観を認めつつ、しかし正義とは何か、つまり「正義の味方研究部」から「正義の視方研究部」にシフトするのである。

☆小説だから、葛藤あり、小さな恋心あり、もちろん草食系的エロスのシーンもある。エンターテイメント的定番は当然。それゆえ、読みやすいのだが、正義に関しては、サンデル教授の分類する、功利主義、理性主義、共同体主義、リバタリアニズムなどすべてのメタファーが配置されている。

☆そしてその解決への希望は、デビッド・ボーム的なダイアローグの手法が織り込まれている。そこにはサンデル教授と同様に、アリストテレス=トマス・アクイナス的世界の現代化がある。量子力学的とでも言おうか・・・。

☆著者がそこまで巧んで編集したどうかはわからない。作家的な現代社会から見える未来の洞察がそうさせたのだろうが・・・。

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル,Michael J. Sandel
早川書房


ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ
デヴィッド・ボーム
英治出版


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