正義のミカタ (集英社文庫) | |
本多 孝好 | |
集英社 |
☆高校時代に徹底的にいじめられてきた蓮見亮太。大学で、虐げられることの恐怖をいかに克服するか。「正義の味方研究部」というコミュニティに入部することによって、共通の善とは何か学んでいく。
☆功利主義的で、リバタリアンな大学生とぶつかりながら、ある正義を完遂していく。しかし、相手も部活やサークル。コミュニティである。集団と集団の葛藤は、スターウォーズさながらの闘いになっていく。
☆しかし、そこで蓮見亮太は、「正義の味方研究部」の正義観と自分の正義観のどうしようもない溝を感じてしまう。
☆「正義の味方研究部」から脱退しようと決意。しかし、部員はなんとか引きとめたい。そのために決闘をする。議論という闘い。腕力による闘い。そこには民主主義の最終手段活用への道のメタファーがある。
☆ついに亮太は脱退するが、その瞬間、「正義の味方研究部」の在り方が変わる。新たな多様な価値観を認めつつ、しかし正義とは何か、つまり「正義の味方研究部」から「正義の視方研究部」にシフトするのである。
☆小説だから、葛藤あり、小さな恋心あり、もちろん草食系的エロスのシーンもある。エンターテイメント的定番は当然。それゆえ、読みやすいのだが、正義に関しては、サンデル教授の分類する、功利主義、理性主義、共同体主義、リバタリアニズムなどすべてのメタファーが配置されている。
☆そしてその解決への希望は、デビッド・ボーム的なダイアローグの手法が織り込まれている。そこにはサンデル教授と同様に、アリストテレス=トマス・アクイナス的世界の現代化がある。量子力学的とでも言おうか・・・。
☆著者がそこまで巧んで編集したどうかはわからない。作家的な現代社会から見える未来の洞察がそうさせたのだろうが・・・。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学 | |
マイケル・サンデル,Michael J. Sandel | |
早川書房 |
ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ | |
デヴィッド・ボーム | |
英治出版 |