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株高でも日本の年金に未来なし、田村厚労相は制度を理解していない - OECDは支給年齢引き上げを勧告

2013-05-14 | いとすぎから見るこの社会-格差の拡大
田村厚労相が株高で年金運用が大幅な黒字になり、
「余りある積立金になると確信している」と発言したようだ。

残念ながらこれは三重の誤りを含んでおり、
株高程度で日本の年金制度が改善すると錯覚する人物が閣僚である現実に
暗澹たる日本の未来を感じざるを得ない。

公的年金、例えばGPIFのポートフォリオで日本株は1割程度に過ぎない。
日本株が50%上昇したとしても、ポートフォリオ全体ではせいぜい5%前後。
これで「余りある積立金」になる筈がない。

また、PFの7割弱が日本国債であるため長期金利上昇の際に大打撃を受ける。
日本の財政が盤石で出生率が高止まりしているのであれば問題なかろうが
現実には全くそうではない。お先真っ暗である。

更に言えば、高齢層への年金給付には既に膨大な公費が投入されており、
事実上それは国債発行によって補われているという自転車操業だ。
(樋口美雄・慶大教授がはっきりその事実を認めている)

根本的には日本の抱える破壊的な人口動態の問題があり、
到底運用で取り返せる性質のものではない。

日本の年金制度とその現状に対する基本的な理解の欠如がないと、
「余りある積立金」などという能天気な発言が出よう筈はないだろう。

▽ 現状の年金給付は、膨大な公費投入がなされた「老人手当」同然のバラまき

『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(原田泰,新潮社)


▽ 日本の高齢化の速度は異常で、世界最悪の水準

『世代間格差:人口減少社会を問いなおす』(加藤久和,筑摩書房)


言う迄もなくこれは年金だけでなく公的医療保険にも共通する問題で、
早い時期から必要だった出生率向上・女性就労率引き上げ支援政策を完全に怠り、
富裕高齢層への過剰給付を削減してこなかった自民党の責任である。

 ↓ 参考

もともと厚生年金の3分の1が持続不可能、支え手より受給者が多い例も - AIJ投資顧問の粉飾以前の問題
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/f3270dc3552492055e6c7a68c996fced

健康保険組合の9割が赤字に、高齢者医療費への拠出増で破綻必至 -「早晩行き詰まり解散へ」
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/796550be193b05efd1e2180289906c5b

厚労相「年金に大変な運用益」 アベノミクス効果(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201305/CN2013051101001665.html
”田村憲久厚生労働相は11日、山梨県昭和町で講演し、公的年金の積立金運用について「(安倍政権の経済政策である)アベノミクスなどの影響で、見たことがない大変な運用益が出て、余りある積立金になると確信している」と述べ、株価上昇などを受け、2013年1~3月期は大幅な黒字になるとの見通しを示した。自営業者らが加入する国民健康保険(国保)の運営を市町村から都道府県に移す案に対しは、慎重な検討が必要との認識を示した。”

問題の発言はこれ。
年金の専門家は余りに現状を無視した発言に仰天しているだろう。
所詮は株高に便乗したポピュリズムか。

いつまで大臣にとどまっていられるか分からないのだから
難題は先送りする心づもりであることが透けて見える。


「年金支給年齢引き上げを」 OECDが報告書(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2303G_T20C13A4PP8000/
”経済協力開発機構(OECD)は23日、日本の経済政策に対する提言をまとめた対日審査報告書を発表した。2020年までの基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化を目標に、歳出削減や増税の計画策定を求めた。歳出の伸びを抑制するために、年金支給年齢の引き上げなどの社会保障改革が不可欠とも指摘した。
 報告では、13年の日本の実質経済成長率を1.4%、14年も同率の1.4%と予測。昨年11月時点の見通しと比べ13年は0.7ポイント、14年は0.6ポイント上方修正した。
 公的債務残高が国内総生産(GDP)比で200%に達する日本の財政状況は「持続可能性に懸念がある」と指摘。市場の信認を保ち、金利急騰を防ぐには「信頼のおける財政健全化計画が不可欠」と強調した。
 財政負担を減らすためには「年金の支給開始年齢の引き上げが最適」と指摘。30年に完了予定の支給開始年齢を65歳に引き上げるペースを加速したうえで、さらなる引き上げを求めた。
〔以下略〕”

呑気な大臣とは違い、OECDは問題の本質を分かっている。
(記事の最後を見る限り雇用問題と経済政策に対する理解は驚くほど低いが)
日本の財政とともに年金も持続可能性が著しく低いのである。

財政健全化には絶対に歳出削減が必要であり、
歳出削減には絶対に年金給付の適正化(つまり削減)が不可欠である。
これが高齢化した日本の「不都合な真実」なのである。
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