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流出雑記 

2009/10/29

2009年10月29日 | Weblog
難波の高架道路に沿ってしばらく歩いたところにひっそりとライブハウスがあった。
地下に降りると黒いドアの向こうから熱唱が聞こえる。
中に入ると慣れないボリュームに鼓膜が怖じ気ずく。
端の方に椅子を見つけてとりあえずそこに掛けた。
音楽を聞きに行くという文化が私にはどうも根付かず、数える程しか来た事の無いライブハウスに体が馴染まない。そこにいて自然な座り方を考えて、しばらくもぞもぞしていた。
二十人というバンドを見にきた。
どういうバンドかは形容し難いが、このバンドのヴォーカルはレオタード姿で現れ持ち時間の半分くらいは踊っていた。
音楽の事に詳しくないので演奏のことは説明できないが、良いなと思うメロディーが何カ所かあった。
楽器を演奏するために体を動かしている事と音が区別出来なくなるような瞬間を羨ましく思う。

ヴォーカルの踊りについては、現在の日本で一生活者として生きる身体、それにまとわりつく様々なものの中で生き、それによって構成されているのに、彼の身体に於いては同時にすべてが急速に腐り、堆肥と化しているように思える。
土着的ではないのに土気があるのはなぜかと考えていてそう思い当たった。
それはもちろん当人のエコ意識の有無にかかわらず、生活を取り巻くものへの執拗に意識的な愛着や憎しみが熱を帯び、発酵を招いているように思われる。
分解しきれなかった残留物質も孕んだまま長い手足が奇妙に加速する、彼を動かしているのは発酵の際の発熱のようにも思える。
偽らない身体が晒されていた。誰にでも出来る事ではない。

私には歌詞があまり聞きとれず、もう少し言葉を聞きたいと思った。