サイゴンに 散る花もなし 朧月
馬糞 Bafun
観光ゲリラの街サイゴン、商兵の作戦地帯サイゴン・・・。
日本製だといいながら、偽ホンダ、偽ヤマハのバイクが行軍する
街で、軍と民間の識別は難しかった。
外貨獲得部隊が展開する作られた街であり、街を偽装するセットの
ようであり、住民全員が配役を与えられた党員のようにさえも思えた。
朧月は、やまとの国の名月のようでもあったが、春を語る花はな
かった。
「残る桜も散る桜、この背中に、見事に咲かせた金さんの遠山桜、
散らせるもんなら散らせてみな・・・」という名啖呵の美意識など、とう
てい分からないであろう。
諸行無常の美意識を伝統に持つ日本人は幸せである。
この不幸な国ベトナムを救うためには、何より、ベトナムの優れた
若者を日本で教育することだ。
そのためにも、日本の教育を立て直さなければならない。
無常の美学を教えられる教師を育成しなければならない。
仁ということばがあり、愛という言葉があり、慈悲という言葉があるが、
美という言葉でも、仏神の子、人間の本質を語ることはできる。
美意識が、人間完成への道に通じているからである。
花鳥風月という道徳もあるということだ。
日本の子供たちに、そして、季節のない国の子供たちにも伝えた
い伝統である。
馬糞 Bafun