エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

いとこ会

2013年09月16日 | ポエム
いとこ会に出かけたのである。
場所は箱根のお山、強羅温泉のとある旅館である。



既に、台風が日本列島とりわけ関東直撃の進路を伺っている土曜日である。
箱根のお山には、秋の雲が棚引き、爽やかな大気に満ちていた。
当然、宴会の前に温泉である。
気候が良いのだ。

露天風呂には快適な時間が流れている。
ちょうど良い塩梅なのであろう、虫も居ないし、化が蠢いても居ない。
火照った身体を、木犀のチェアに委ね年齢的には比較的近いいとこと駄弁った。
なんとなく、気の合ういとこである。

このいとこと出かけ被災地で詠んだ句が、山河賞の次席を頂いたのであった。
宴会で、ビンゴをするのが習いである。
参加者全員が、景品を持ち寄る。
一人一品と呼びかけるのだけれど、実際は一人数品は持ってくる。
従って、ビンゴした順に景品入りの袋を選ぶのだが、袋には最低で3品、多いと5品は入っている。
楽しみな催しであるし、年に一度いとこ同士で近況を知らせ合う良い機会である。



このいとこ会、もうかれこれ30年は続いている。
結束は固いし、冠婚葬祭・・・とりわけ不祝儀では一致団結支え合う。

さて・・・誰が最初にみんなの世話になるのか、などと話す。
叔父叔母は、一人を遺して逝った。
叔父叔母たちは、ぼくらのいとこ会を使って、勝手に兄弟会をやっていた節もある。
けれど、その楽しい叔父叔母も一人になってしまった。

今年のいとこ会は、ぼくのおばあちゃんの事やらが話題に上った。
このおばあちゃんが居なければ、全員生まれてこれなかったのである・・・。
彼岸花でおばあちゃんの事を書いたけれど、正確に年齢が分かった。
88歳で亡くなったのであった。

ただし、法的には86歳となっている。
つまり、妹の戸籍がおばあちゃんの戸籍になってしまったからである。
妹が逝った時、役場の戸籍係りが間違って、ぼくのおばあちゃんの戸籍を抹消してしまったのである。
そんな事が平気で通用した時代もあった。
また、そんな事を受け入れてしまう大らかさとでも言おうか、懐の深さもあったのである。



さて、いとこ会であるが翌日は大概皆で観光をして回るのだけれど、台風の余波の大雨であった。
俳句を詠むどころではなく、朝食後記念の集合写真を一枚撮って解散。
それぞれ帰途に就いたのであった。







「箱根山息吹消したり黍嵐」







ぼくは、雨が降っているさまを俳句にして。
箱根の山を降りたのであった。




        荒 野人