エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

古墳と桜花

2013年03月31日 | ポエム
さきたま古墳群は、眠りから醒めた如く桜花と菜の花で彩られた。
石器時代、弥生時代、縄文時代そして古墳の時代と季節は巡ったのである。



花冷の一日。
春霖の一日。
そして花曇の一日であった。







「花冷の墳墓は温く佇めり」







そんな春らしき一日、ぼくはさきたま古墳公園に出かけたのであった。
もちろん人出は少ないだろうと読んだ。
その通りであった。



古墳に上った。
見下ろす。

春が横溢していて、善男善女、老いも若きも桜を愛で「生きる」オーラが溢れ出る喜びに満ちていた。
ここまで季節が先行して琴線を鳴らしていると、最早俳句を詠む事は出来ない。
「わっ、綺麗!」
と云う他、無いのである。



ただただ感嘆し、感動し、自然のリズムに身を任せるしか無いのである。
それが「お花見」の定義である。
その他の行為は「不浄」である。

ただ、この感動は散文では表せない。
短詩形でしか表せないのだ。

時間を挟んで成熟を待つ。
それが数時間か、あるいは数日か、はたまた数カ月いやいや数年か分からない。
ただぼくは蓄積していく。

その行為が、俳句を詠む事である。




      荒 野人


桜吹雪

2013年03月30日 | ポエム
桜吹雪との遭遇。
誠に偶然であった。

そんなに風が強い訳ではないのだけれど、花びらが舞う。



この場所である。
同じ場所の舗道には・・・。



雀やヒヨドリが啄ばんで落とした花が、点々と落花していたのであった。
今日は花びらが散る。

桜吹雪である。







「桜吹雪刹那の息の継ぎ処」



「桜吹雪疾風の如き風の幕」







毎年、桜吹雪を捉えようと思うけれど、なかなか上手くいかない。
今年は、まあまあかな?
一陣の風に感謝。



しかしこの風、疾きこと風神の如く去って行った。
刹那の出来事である。



      荒 野人

花筏

2013年03月29日 | ポエム
ほんの少しだけ、それこそ気持ちだけ足を伸ばして一駅向こうに出かけた。
有楽町線氷川台駅である。



ここの桜は、川に雪崩れるように咲いている。
最も、川はすっかりコンクリートで堅固に覆われている。
それでも、水面に映える桜は見事である。



花の時期、この場所は欠かせない。
何より、花筏が見られるのである。







「花筏漕ぎ入れ流る淀みかな」



「寄辺なき流れの果ての花筏」







予報を裏切って青空が広がった。
こうした裏切りは嬉しい。



水面に映る桜の砲列。



間もなく散る定めの桜。



散る鮮やかさや潔さに、ぼくたちは自らを投影する。
そして、その鮮烈さに憧憬するのだ。



       荒 野人

花散らしの雨

2013年03月28日 | ポエム
朝から雨が優雅に舞う。
篠つく雨である。
しっとりとして、けれど体をしとどに濡らしていく。



傘をさして歩いていても、緩やかに降る雨は横に舞ったり、縦に舞い上がったりして体に纏わりつくのである。
正に霖雨である。
だがしかし、情感溢れる雨である。

書斎の窓から、降る続ける雨を眺めている。
ベランダの柵から雨が滴る。
まるで生き物でもあるかのように・・・。







「花散らす雨粒一つ命名す」







花筏を見に出かけようと思ったけれど、今日は屋根に降る雨に閉じ込められてあげようと思う。
雨は生き物であって、いじらしいほど愛おしいのである。



今年初めて土筆を見た。

こんな日、雨粒の一つ一つに命名したくなる。
これは「伽耶子」、これは「祥子」、これは「和歌子」、これは「榮子」、そしてこれは「樹理と理李」など。
縁も所縁もないけれど、それぞれの名前のままに生きているだろう遠い人たち。



袖触れあった事もないイマージュの女性たちよ。
花散らしの雨に、きみたちは女神となって立ちはだかれよ。

けれど、季節の深化には抗うな。
なすがままに任せよ。

自然の摂理こそ、悠久の大義である。



     荒 野人

春爛漫である

2013年03月27日 | ポエム
春爛漫である。



お花見の好きな人々が暮らす列島である。
ソメイヨシノは全ての樹がクローンである。
接木接木で増殖して、いまや日本列島を代表する桜となった。



ソメイヨシノは東京都北区の染井(ソメイ)という地名の地区で産まれた。
八重桜で有名な飛鳥山や王子稲荷に近接する地区である。
江戸時代は「物見遊山」の名所であった。



この染井地区には、怪談話となっている「お岩さん」の墓所のある「染井墓地」がある。
この墓地には文豪の墓地も多い。
岡倉天心、幣原喜重郎、高村光雲、高村光太郎、高村智恵子、二葉亭四迷、水原秋桜子などなどである。

街を歩けば・・・。



おいらも桜だぜ!
と、山桜も満開である。

若葉とともに咲くのである。
そのコントラストが鮮やかな桜である。







「駘蕩たる桜花を散らす風の声」







空を見上げる。



天気予報と違って、多少の青空と暖かさが横溢した昨日であった。



いま・・・である。
もう直ぐ、花チラシの雨が降る。



そろそろ花筏が川面を彩るだろう。
今日は、花筏を見たい!

そんな気分である。



       荒 野人