エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

沈丁花

2016年03月31日 | ポエム
そろそろ終る。
沈丁花の事である。



そこはかとなく匂いを放つ。
花の場所など、それほど問題ではない。

かほりが、沈丁花の全てであると行っても良い。
その甘さは、円熟したかほりである。
妖艶なかほりである、のだ。







「沈丁花ひたすら焦がれ遠ざかる」







誰がなんと言っても、沈丁花は沈丁花であってそれ以上でも以下でもない。
ぼくは、決して沈丁花に恋はしない。



ひたすら、憧憬するのみである。
沈丁花は掌(たなごころ)には非ず。

ただ、世の救いとなって咲くのである。
であるが故に、沈丁花なのである。



     荒 野人

赤花の三椏

2016年03月30日 | ポエム
アカハナミツマタ、である。
前にこのブログで、赤花が咲いたら紹介すると書いた。

今日はその約束を果たそうと思う。



アカバナミツマタ、である。
普通、花は黄色である。

花の色が赤だからといって、特段品質に差がある訳では無い。
あっ、そうそう・・・。
品質と云うのは、和紙の原料としてのミツマタの事である。



これが良く目にする、ミツマタの花。






「いつになくミツマタの花赤かりき」







この赤さは、なんとも表現のしようも無い。
なかなかの化粧である。

化粧すると、途端に見栄えの良くなるものとは違う。
自然のままである。



この際、見慣れているミツマタ野花を見てホッとしよう。
通常ならざるものを見た後は通常のものを見るに、しくは無い。

何となく、安心するのである。
それがまた、普通のおじさんの感覚である。



     荒 野人

新宿御苑

2016年03月29日 | ポエム
誠に結構という他は無い。
桜の咲き具合といい、空気の澱み具合といい結構なのである。



誰もがウキウキとする。
その証左は空に向かって昇っていくシャボン玉である。



空は、雲が鮮やかな春を描いている。



シダーローズのシベリア杉の下にはローズが踏みしだかれずに、残っていた。



ぼくは一人、シダーローズを探して拾ったのである。



このヒマラヤ杉の木の下、である。







「煉切の床しき甘さ花衣」


「花冷や光と熱と未来の子」







桜の樹の下では、人は舞い上がってゆく。
同時にそれは、生きている事への讃歌でもある。

梶井基次郎は、桜の樹の下には「死体」が埋まっていると喝破した。
坂口安吾は、満開の下には山賊がいて鬼女がいると喝破したのであった。



ぼくは、疲れを癒す呈茶を頂いた。
筧の雫は、涸れていたけれど雰囲気は楽しめた。



菓子は、煉切の「花衣」。
白餡を包む皮のピンクが、求肥のように見えたけれど・・・。
煉切の餡であった。

黒文字で煉切をそっと押切、口に運んだ。
間に、抹茶を頂く。

至福の時間であった。



     荒 野人

ダチョウ牧場

2016年03月28日 | ポエム
昨日は、二人の孫を連れて埼玉県新座市にある「ダチョウ牧場」へと出かけた。
ここは、BBQ施設などもあり食事を含めて楽しめる。

ただし、獣特有のニオイが漂っている。
隣に養豚場があり、その臭いと相まってより複雑になっている。
苦手の向きにはお薦めしない。



子どもたちは喜んで、一皿100円也の餌を餌箱に投げ込んで楽しんでいる。
ダチョウもまた、その餌を喜んで食べている。

目が可愛い鳥である。



ダチョウの飼育は古代エジプトの壁画にも見られる。
特に羽根は古代エジプトにおいて真実と公正の象徴として、神話の神々やファラオの装飾品に用いられたのであった。
それゆえ、中世ヨーロッパでは騎士の兜の装飾品に使用されのであった。







「ダチョウてふ非ざるものや花五倍子」







昨日は、午前中はかなり風があった。
花曇りの上に、花冷えといって良かった。



ダチョウ牧場を辞して、光が丘公園に行く頃には風も収まってきた。
広く高い空が、暖かく見えるのであった。



花が長持ちするのは、間違いない。
満開にはしばらく時間がかかりそうでもある。

それはそれで嬉しい事である。



      荒 野人

再びカタクリの花

2016年03月27日 | ポエム
友よ!
再びカタクリを語ろう。



今だからこそ、語れる。
今で無いと、語れない。

春の儚い妖精であるからなのだ。



カタクリの花言葉は・・・。
「初恋」「嫉妬」「寂しさに耐える」である。



カタクリの花は、手鏡で見る。
それが作法である。







「カタクリの倦みし眠りの深さかな」







発芽1年目の個体は細い糸状の葉を、2年目から7-8年程度までは卵状楕円形の1枚の葉だけで過ごす。
鱗茎が大きくなり、2枚目の葉が出てから花をつけるのである。
毎年少しずつ鱗茎に養分が蓄積され、発芽から開花までには7-8年を要するのだ。



早春に地上部に展開し、その後葉や茎は枯れてしまう。
地上に姿を現す期間は4-5週間程度で、群落での開花期間は2週間程と短い。
このため、ニリンソウなど同様の植物とともに「スプリング・エフェメラル」(春の妖精)と呼ばれているのである。
種子にはアリが好む薄黄色のエライオソームという物質が付いており、アリに拾われることによって生育地を広げるのである。



     荒 野人