エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

金木犀と桜紅葉

2012年10月31日 | ポエム
金木犀が枯れている。
あんなに、人を喜ばせてくれていたのに樹上で枯れてしまった。
喜ばせてくれたのに・・・。

悲しい。







「哀しきや頭上で枯るる金木犀」







地上に落ちて枯れる花は、幸せである。
樹上で枯れる花は、限りなく寂しい。



香りも、色気もなくなって干からびていく。
そんな花に、ぼくは万感の思いを籠めて「ありがとうね!」と声かけた。

刹那!
馥郁とした表情が見えた。







「越し方を斜陽が差せり桜もみじ」







桜紅葉は、悲しい。
殆んど葉は散っていくけれど、赤く色づいた葉は樹上で頑張っている。

その頑張りが美しい。



秋の雲が遊弋する。
美しい秋は、まだまだ楽しめる。






      荒 野人

柊の花と銀杏

2012年10月30日 | ポエム
柊の花。
それは純白の花である。







「柊や四弁の花の落ちにけり」



「柊の花の向こうに風が吹き」







まるで木犀のような花である。
だがしかし、香りは放たない。

その分控えめであり、素として咲いているのである。



花が零れ落ちる。
黒い土に映える。

四弁の白い小さな花だ。
小柄でかつグラマラスな女性だ。
昔々「トランジスタ・グラマー」なんて言う言葉が流行った。

SONYのトランジスタ・ラジオが国民の頭にあった。
そこから「トランジスタ・グラマー」なる何とも艶めかしい言葉が産まれたのである。

ソニーが世界に打って出た商品である。



公孫樹が黄色く色づいてきた。
東京の公孫樹である。







「銀杏の落果の音の重さかな」







昨夜の雨で、大量に銀杏を落としている。
老夫婦が丹念に拾い集めていた。

かく言うぼくも拾い集めた。
熟した果肉を潰さなければ、あの臭いは発しない。

踏んずけたりすると、たちまちあの臭いが発散される、

臭いけれど、美味いのである。



水たまりに映った並木が揺れた。



       荒 野人


宝塔山古墳

2012年10月29日 | ポエム
夜来の雨が上がった。
秋晴れである。

大気が澄んでいる。



今日は「宝塔山古墳」の紹介である。
ホウトウザンコフンと読む。
ここもまた、稀有であるけれど石室内に入る事が出来る。

この古墳も又、蛇塚山古墳と同じ方墳である。







「なだらかな斜面の秋の古墳かな」







古墳の斜面は美しい。
眺めも良いのだ。
それほど、この地域で位の高かった人の墳墓であると知れるのである。



墳丘の下部に地蔵が祭られていた。
安曇野のように、男女二人の地蔵である。

和合の象徴として安置したのだろう。



頂上に碑が一つ。
ポツンと置かれていた。







「石室に吹き込む落ち葉魂の慰撫」







見事な石工技術である。



家形石棺である。
これもまた稀有である。

この古墳群だけで二基の家形石棺があるのである。

群馬県総社の古墳群は、一見の価値がある。
来週、ぼくは埼玉の古墳を見に行く。
そこもまた、東の石舞台として名高い場所である。



        荒 野人

箒木草と杜鵑草

2012年10月28日 | ポエム
箒木草・・・ははき草である。
種子は陸キャビア、トンブリである。

トンブリは、大好物である。
トンブリにたっぷりのオカカを載せ、マヨネーズで和える。
これだけで、ご飯が進む。

噛み応えのプリプリ感が良い。







「胸の内燃ゆるが如くはは木草」



「ほととぎす戯れおれば舌を出し」








杜鵑草・・・ほととぎすである。
鳥のホトトギスは「時鳥」と書く。

名前は同じだけれど、似て非なるものである。
植物vs動物である。

生垣を注意して見れば、桜紅葉の褥(しとね)になっている。







「生垣をしとねと落つる桜落葉」







もちろん大地も、桜紅葉の「終の棲家」である。
秋が深まってくる。
いまや中秋から、晩秋へと歩を進めつつある。

黄葉が徐徐に平地へと降りてくる。
晩秋が待ち遠しいではないか。



        荒 野人

銀木犀

2012年10月27日 | ポエム
銀木犀。
誠にしとやかな白である。

これほど見事な白が際立つ銀木犀は、寡聞にして見た事が無い。
なんだか嬉しいのである。



木犀の花言葉は「謙遜」「真実」である。
銀木犀は「初恋」である。

因みに金木犀は「あなたは、高潔です」とある。
木犀全般、金木犀、銀木犀、それぞれ美しい花言葉である。







「銀木犀そこはかとなく咲きにけり」


「銀木犀控えめに花零したり」







木犀は、中国原産である。
この間も書いたけれど、桂林の桂は木犀の意味である。

従って、桂林には木犀が多く、開花時期には木犀の香りに満たされる。
「山地水明」「薫風」の町である。

中国には木犀酒がある。
確か「桂花酒」と言ったか?

昔・・・中国の女性はデートの前に木犀入りのお酒を口に含ませ、吐く息を花の香りにしたという。
奥床しくも、香り立つような話ではないか。



     荒 野人