ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

宇宙よりも遠い場所・論 54 女子高生観測隊員 キマリの取材メモ 12話の補足として。

2019-01-21 | 宇宙よりも遠い場所

(画像はいずれも私が撮ったものではなく、ネット上からお借りしました)


 昨年(2018年)の10月に『宇宙よりも遠い場所』のディスクを4枚セットで購入したら、ほかのいくつかの特典と共に、「女子高生観測隊員 キマリの取材メモ」という小冊子が付いていた。
 Vol.1には監督のいしづかあつこ、脚本の花田十輝両氏へのインタビュー、Vol.2にはいしづかさんと、吉松孝博(キャラクターデザイン・総作画監督)、山根左帆(美術監督)、川下裕樹(撮影監督)各氏へのインタビュー、Vol.3には佐藤司(制作デスク)、古関孝生(設定制作)、尾上裕記(制作進行)、木村拓(監督補佐・制作進行)、眞木郁栄(制作進行)、中本健二(アニメーション・プロデューサー)各氏へのインタビューが収録されている。
 インタビューはすべて合同で、司会付きの座談会といったほうがいいか。
 貴重な資料なのだが、ぼくは届いたときにざっと卒読しただけで、そのあと読み返さなかった。このたびの論考はこのアニメを「物語」として読み込むという趣旨なので、かなり独自の解釈を含むことになるかもしれない。だから、なるべく制作サイドのお話に捕らわれぬようにしたかったのだ。
 最大の山場というべき12話まで済んで、有意義なコメントをたくさん頂いたこともあり、「もういいかな」と思って改めてちゃんと読んでみた。案の定、ほとんどの内容を忘れている。
 メールのくだりについては、脚本の花田さんが、「何年も使っていないメールアドレスを見つけて、遊び半分にログインしてみたところ、数百件ものメールが次々と受信トレイを埋めていき、それを見るうち不意にその頃の記憶が甦ってきて、まるで迷子になっていた自分を見つけたような気分になった」ことから着想した、という意味の話をしておられる。
 なにかの事情でしばらく放置していたパソコンを開けて、似たような経験をしたことは誰にでもあるのではないか(ぼくにもある)。それだけに、あの描写には生々しさが伴っていて、プライムビデオでの初見の際には、底のほうから揺さぶられる感じになった。
 以前にネットで、「12話を見終えて一時間ほど経つのだが、まだテレビの前から動けない。」という意味の書き込みを見た。ぼくも本放送で1話からずっと1週間ずつ観ていたら、たぶんそんな具合になったろうな……という気がする。
 ラストで、「これまで夜にならなかった南極」に太陽が沈んでいくシーンは、脚本にはなくて、いしづか監督が映像化のさいに加えたものだという。花田氏は、冒頭の「まだ……続いている。」のところで「朝焼けの南極の風景」と書き込み、「醒めない夢のなかにいる報瀬」と「延々と白夜がつづく南極の風景」とを重ねるところまでは想定していた。しかしラストで、報瀬が母の死に直面して、「夢から醒めた」あと、止まっていた時間が動き出し、「作中で初めて南極に夜が訪れる」シーンは、いしづか監督の演出によるものだというのである。
 このたびきちんと読み直して、いちばん感銘を受けたのはここだった。才能と才能がぶつかって「物語」が熟していくとはこういうことであろう。
 このお話も失念していたのだが、それでもいちおう、前回の記事には、忘れてたなりに画像だけは貼らせて頂いている。はっきりと真意はわからずとも、「この絵はぜひとも必要だ」という勘だけは働いたらしい。
 ほかにもいろいろ発見はあったが、総じていえば、ここまでのところ、懸念してたほど的外れなことは書いてないようである。安心した。このタイミングで読み返してよかったとも思う。
 とはいえ、「内陸基地」への日程など(当初は片道3週間と記していたが、コメントでのご指摘のとおり、片道約1週間とみるのが妥当と思われる)、あれこれとミスや「詰めの甘さ」はあるはずなので、ひきつづきご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。