“ヴィアジェ”というフランスの不動産システム、
なかなかおもしろいね。
「パリ3区の遺産相続人」62点★★★
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パリ・マレ区にやってきた
ニューヨーク在住のマティアス(ケヴィン・クライン)。
彼は疎遠だった父親の遺産で
パリの一等地にあるアパルトマンを相続したのだ。
負け犬的人生を送るマティアスは
「ラッキー!高く売れるじゃん!」と
ウキウキだったが
しかし誰もいないはずのアパルトマンには
老婦人(マギー・スミス)が住んでいて――?!
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人気の舞台劇の映画化だそうです。
もうちょっとウィットに富んだ
人間ドラマを想像していたんだけど、
うーん、意外とヘビーな方面に重心が傾きすぎていたかな。
ただ
“ヴィアジェ”というネタは実におもしろい。
フランスに200年以上前から存在するという不動産売買方法で
いわば老人付き(?)物件。
相場より安い物件だけど
ただし、持ち主が売買後も
亡くなるまで住み続けられるというもので
持ち主の寿命によって損得が出てくる、という
まあフランスらしい?シャレにならないシステム。
実際に映画中にも出てくる
仰天ニュースとかもあるようで、
たぶん、原作者もそうしたネタをおもしろがって
話を書き始めたんだろうなと想像できる。
ただ
ネタはおもしろかったのに
そこに作者自身の親へのトラウマかなにかが
どんどん膨れ上がってこうなったのでは――?と思ってしまうほど
ヘビーになってくんですよ(笑)。
人生うまくいかない中年男が
「億ションを相続できる♪」と
ウッキウキでパリにやってきたものの、
“ヴィアジェ”によって、
そこに住む権利を持つ老婦人を知り
さらに
自分の親父の不倫を知ってゆく。
そして主人公は
「愛されない子供時代を送ったせいで
オレの人生うまくいかなんだあぁ」と
恨みつらみを老婦人にぶつける……って
よく映画になったよなあ、と思うくらい重っ(苦笑)
で、「これ、どう収束させるの?」と思ったら
これ?という唐突さで(苦笑)
ただ80歳のマギー・スミスが(撮影時は79歳)
ノーメイクで、あるいはメイクダウンもして90歳越えの老婆を演じている。
その風格や“粋”は伝わります。
牡蠣にはシャブリを合わせ、
戸棚にはジゴンダスをストックする
サラリと日常なワイン趣味も、さっすがあ~。
★11/14(土)からBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。
「パリ3区の遺産相続人」公式サイト