これは予想以上におもしろかった~!
「黄金のアデーレ 名画の帰還」74点★★★★
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1998年。
ロサンゼルスに暮らす
82歳のマリア(ヘレン・ミレン)は
ある裁判を起こそうとしていた。
それは故郷オーストリアでナチスに没収された
叔母の肖像画を取り戻すための裁判。
その肖像画とは、かの有名な
金色に輝くクリムトの名画だった――!
だが、現在の名画の所有者はオーストリア政府。
彼らが「国の至宝」を手放すことなんて、あり得るのか?!
マリアは弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)に
相談を持ちかけるが――。
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かの有名なクリムト絵画を
オーストリア政府から取り戻そうとした女性の
実際の出来事を基にしたお話。
こういう実話ものって
割と正攻法で、まあ普通かな、ってことが多いんですが
この映画はおもしろかった。
実際、演出は手堅く、
過去と今を行ったり来たりする手法も普通なんだけど
クリムトのモデルとなったアデーレの話だけでもなく、
ナチスの暴挙や、つらい歴史の話だけでもなく、
返還を求める裁判の駆け引きのスリルだけでもない、という
単純構造でないのがいいんですね。。
最初は渋々、マリア(ヘレン・ミレン)を手伝うことになる
新米弁護士(ライアン・レイノルズ)や
彼らをウィーンでサポートする
若いジャーナリスト(ダニエル・ブリュール)の姿を通して
過去に向き合い、ときに前の世代が犯した過ちを認め、
それを償おう、正そうとする若い世代の勇気と行動を
浮かび上がらせた点が見事。
彼らの正義感に
「正しき人間のふるまいとは」を見せつけられ
グッときました。
「ミケランジェロ・プロジェクト」に
繋がっている話なのも興味深いところで
逆に公開のタイミング、よかったかもね。
さらにちょっとおもしろいお話を。
最新号の『週刊朝日』(11/24発売)おなじみ「ツウの一見」で
「美術館を手玉にとった男」について
国立西洋美術館の渡辺晋輔さんに取材させていただいたときの
こぼれ話なんですが
例えば展示会をしたり、絵画を購入するときに
美術館員にとっては
「それが贋作かどうか」よりも
「ナチスの没収品ではないか」のほうが
よりリアルに心配な点なんですって。
海外から作品を借りて展示会をするときなどは
「何があっても、必ず、その国に返すこと」が
契約書の必須事項にあるそうな。
この映画をみると
「なーるほど!」と思いますよ、きっと。
あ、本編の「美術館~」話もおもしろいので
ぜひご一読を!
★11/27(金)から全国で公開。
「黄金のアデーレ 名画の帰還」公式サイト