ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ハッピーエンドの選び方

2015-11-26 23:21:01 | は行

ほのぼの話を想定すると
ガゴン!と殴られますよ(笑)


「ハッピーエンドの選び方」72点★★★★


******************************

イスラエルのエルサレムにある
老人ホーム。

発明好きのヨヘスケル(ゼーブ・リバシュ)は
愛する妻レバーナ(レバーマ・フィンケルシュタイン)と
ホームで暮らしている。

あるとき
末期の病いで入院する親友を見舞った彼は
「もう楽になりたい」と願う友と
「楽にしてあげて」という妻の懇願に負けて
ある装置を発明する。

しかし、そのことが大きな波紋を呼び――?

******************************


宣伝ビジュアルからなんとなーく想起する
ほのぼのハッピー話ではないことは
事前にお知らせしておきます(笑)

例えば
「陽だまりハウスでマラソンを」
もそうだったんですが

昨今の高齢者の話は
現実に即してよーく考えられていて
簡単に「ハッピー!」とはいかない。

しかし、この映画では
そこにシニカルさとも違う
高齢世代ならではの、というか
独特の乾ききってヒリつくようなユーモアが挟まれているのがおもしろい。

「笑っていけない場面で、なぜか笑ってしまう」笑いにも
似てる気がしました。


本作の主人公ヨヘスケルが発明したのは
「人生を、自分らしく終えたい」と本気で願う人のための装置。

でも誰もがそう願っていても
実際には勇気がなかったり
「倫理的にどうなのか?」と、いろいろ立ちはだかるわけですね。

友人の頼みだから聞いたけど、
じゃあ、自分の奥さんだったら、果たして決断できるのか?と。

看る人、看られる人の感情も入り交じり
けっこうシビアな展開になる。
まあそこがリアルで、いいんですけどね。


舞台がイスラエルのエルサレムという
あまり馴染みのない場所だというのも興味深く

どこの国でも
高齢社会の状況は似たようなものだと
つくづく思ったりもしました。

ラストも、気持ちはよくわかる。
でも、やっぱり、やるせないなあ。


★11/28(土)からシネスイッチ銀座ほかで公開。

「ハッピーエンドの選び方」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする