ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

恋人たち

2015-11-09 22:53:41 | か行

「ぐるりのこと。」から7年かあ。


「恋人たち」72点★★★★


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高速道路の橋梁点検の仕事をしている
アツシ(篠原篤)は
3年前に、ある事件で妻を亡くした。

弁当屋でパートをする瞳子(成嶋瞳子)は
姑と夫に囲まれ、空虚な日々を送っている。

エリート弁護士の四ノ宮(池田良)は
学生時代からの親友の態度が、
微妙に変化していることに気づく。

3人のやるせない日々の
その先には、なにがあるのか――。


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「ハッシュ!」「ぐるりのこと。」の橋口亮輔監督、
7年ぶりの長編。


美男美女は出てこない。
彼らの暮らしも、状況も苦しい。

その状況が劇的に好転することなんてなく
どうにもならない。

やるせない。

だからこそ、心に響く。
これが現実だ、と。


「ぐるりのこと。」もそうだったけど
橋口監督の映画は

苦しんだ経験のある人間に
むちゃくちゃ刺さるんですよねー。


登場人物たちの
のたうちまわるほどの痛みや悲しみ
もがきやうめき、小さな喜びの感情までも

すべて、その生身の肉体から出てると
それも、監督の体を通じて、出ているんじゃないかと
リアルに感じられるのが
橋口作品の特徴だと思います。


今回刺さったのは
「本当に助けてくれる人は誰か」ということ。

特に奥さんを亡くして苦しむ
アツシのエピソードがキタ。

彼が頼りにしている
リリー・フランキー演じる先輩の
その「うわべだけ」っぷりと言ったら
ま~あ笑っちゃうほどリアルで(笑)

でも、アツシは思ってもみなかった人に
支えられるんですね。


自分の経験が、まったく同じでなくても
絶望や失望のなかで見える光って
本当にこんなものなんだよ、と思える。

グッときました。


ゲイの弁護士のキャラクターは
ちょっと中途半端かなとも思ったけど
主演の3人はいずれも
橋口監督のワークショップ出身。

特にアツシ役と瞳子役の二人は
ほとんどアマチュアだったそう。
……リアルっす。


「恋人たち」というタイトルも
考えさせて、いいなあ。


★11/14(土)からテアトル新宿ほか全国で公開。

「恋人たち」公式サイト
コメント (2)
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