誠実で、歴史的に貴重なドキュメンタリーです。
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「メキシカン・スーツケース <ロバート・キャパ>とスペイン内戦の真実」73点★★★★
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ロバート・キャパ、その恋人だったゲルダ・タロー、
仲間のデヴィッド・シーモア“シム”の3人の写真家が
1936年にはじまったスペイン内戦を撮ったネガ。
70年間行方不明だったそれが、2007年にメキシコで見つかる。
“メキシカン・スーツケース”と呼ばれるようになった
そのネガをめぐるドキュメンタリーです。
観る前は
キャパたち写真家を追いかけたり、
貴重なネガの行方を追いかけたりするミステリー仕立てなのかしらんとか
思ってたんです。
しかーし、これが違った。
スペイン内戦という歴史の記録に比重を置いていて、
でも、そこが実によいんですよ。
内戦の悲惨さ、亡命者たちの絶望、
そしてメキシコが彼らに救いの手を差しのべたこと……などなど
その場にいた3人の写真家の功績に多大な敬意を払いつつ
まさに彼らがカメラを向け、伝えようとした
市井の人々の戦争の記録を描いている。
これぞ
写真家の遺志を継ぐものだ、と思います。
タローやシムの写真が
キャパの名で世に出ていたことなども描かれて、
折しも今年2月に沢木耕太郎さんが『キャパの十字架』を上梓し、
解明したタイミングでもあり、興味深いです。
しかしなによりワシが感銘を受けたのは、
キャパの暗室技師であり
“メキシカン・スーツケース”を作った人物の存在。
カリスマ写真家の影でネガを完璧に分類し、世に残した
“究極の裏方”の存在とその功績を
明らかにしたことは刮目です。リスペクトする!
そして本作には
「賢者は歴史から学ぶ。学ばねば、同じことを繰り返してしまう」という
メッセージが込められていると感じます。
動乱収まらぬ世に向けた過去からの声。
胸に刻むべし、ですね。
★8/24(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。
「メキシカン・スーツケース <ロバート・キャパ>とスペイン内戦の真実」公式サイト