ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

だれもがクジラを愛してる。

2012-07-14 21:50:52 | た行

クジラ?ええ、愛してますよ。
愛してますとも?

「だれもがクジラを愛してる。」69点★★★☆

**************************

1988年10月。

アラスカに派遣されている
テレビ局のアダム(ジョン・クラシンスキー)は

偶然、3頭の親子クジラが
氷の下に閉じ込められている映像を撮る。

3頭は氷上にあいた穴から呼吸をしていたが、
寒さでどんどん穴はふさがっていき、
しかも開けた海までは8キロもある……。

映像は世界中に配信され、
大勢の人々が、クジラ救出のために乗り出した。

やがて救出劇は
アメリカ大統領、そして
ソ連をも巻き込む大騒動になっていき――?!

**************************


実話が基の作品です。

このニュースは知らなかったけど、
88年当時、日本でもかなり報道されたらしい。

クジラ3頭の救出の裏には、
政治的事情やかけひきもあったようですが、

まあともかく、世界中の人が人道的に動かされ、
そして米ソが協力し合ったという
前代未聞の“いい話”であることは間違いありません。


この映画のさじ加減は
ドリュー・バリモア演じる
環境団体グリーンピースの女性活動家の
扱いにかかっていたと思いますが、

「ウザい活動家」となりそうな彼女を
監督はうまく回避し、
映画全体の雰囲気を、シリアスオンリーではなく、
ちょっと軽快な感じに処理しています。

ただ後半はどうしても
救出劇がシリアスになっていくけどね。


とにかく伝わるのは「行動することの大切さ」。

困難な状態にある“弱きもの”を助けようとするときに
ただ「かわいそう」では、人は動かない。

そのことを利用しようとする政治家をも利用できる
知性や判断力が、
“実行する人”には必要なんだな、と思いました。


こんなに「だれもに愛されているクジラ」について
世界から目の敵にされている日本人が
この映画を受け取るべきか、
ちょっと複雑なところもありそうですが、

そこを含めて観ても
イイんじゃないかなと思います。

誰かを“悪い”とかいう話じゃなく、
アラスカ先住民たちの捕鯨描写もあり、

なにより、ここに描かれているのは
困難な状態にあるものを助けようとする、
人間の理由なき衝動、団結する絆ですから。


しかし24年もたったいま、
なぜいま、この話を?――が一番重要な点だと思うんですよ。

推察するに、
80年代後半~90年代は
ちょうど「エコ」が認識され始めた時代。

しかし、それから20年以上たったのに
環境は、動物はどうなった?
北極のシロクマたちの窮地は?

ちょっとは、振り返って考えなさい、
ということなんでしょうかね。


★7/14(土)からTOHOシネマズシャンテほかで公開。

「だれもがクジラを愛してる。」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする