ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ガンジスに還る

2018-10-24 23:21:19 | か行

 

バラナシ、行ってみたかったな。

(いや、きっとまたいつか、行くときがくるでしょう!

 

「ガンジスに還る」71点★★★★

 

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現代のインド。

中年男性ラジーヴ(アディル・フセイン)は仕事一筋、

常に携帯を手放なさず、忙しい日々を送っている。

 

そんなある朝、

父ダヤ(ラリット・ベヘル)が突然、言い出す。

「わしは死期の訪れを感じている。明後日、バラナシに行く」

 

――バラナシとは、ヒンドゥー教徒の聖地。

聖なるガンジス川を前にしたこの地で死ねば

「解脱」が得られるとされ、川べりでは日々、火葬が行われているのだ。

 

しぶしぶラジーヴは父に付き合い、

死を待つ人々のための「解脱の家」にやってくるが――?!

 

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インドの聖地「バラナシ」を舞台に、

1991年生まれの若手インド人監督が撮った作品。

 

歌ったり踊ったりのボリウッド風はなく、

落ち着いたトーンの色合いがやさしく、

映像も美しく

ふわっと笑うユーモアが散りばめられていて

 

 

もうちょっと笑いがあってもいいかなーと思ったけど、

ほどよいウェルメイド映画です。

 

まず

死期を待つ人の「解脱の家」って知らなかったし

おもしろい着眼点だと思った。

自分の死と向き合い、それを待つ、という行為はすごく理解できるし。

 

さて、どんなところ?と思うと

これが、またおもしろいんですよ。

 

医療設備はなく、食事もすべて自己責任。

そして滞在は15日まで――ってルールがある。

 

もちろん、そんなに都合良く人は逝けるわけじゃないので(笑)

父と、付き添いの息子は

そこに暮らすさまざまな人に出会うわけです。

 

ちょっと浮き世離れした、その空間で暮らすうちに

いつも携帯を話さず慌ただしい息子は

父に抱いていた心のおりをだんだんに濾過し、浄化していく。

 

ギクシャクしていた息子と父の関係も、少しずつほぐれていく。  

解脱したのは息子のほうだった、のかもしれない。

 

そういや

解れる(ほぐれる)の解も、解脱の「解」だなあと。

 

そして、「解脱」とはなにか、を諭す施設長の説明が非常にうまかった。

 

己の魂とは「波」のようなもの。

広い視点でふと見渡すと、それが「海」の一部だったと気づく。

それが「解脱」というものです――だって。

 

うん、なんか、一瞬、見えた気がしませんか。

 

★10/27(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「ガンジスに還る」公式サイト

コメント
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