昨日は、ネット観戦界がざわついた。
それは、竜王戦1組5位決定戦・準決勝の対阿久津八段戦で、やや不利と見られていた羽生名人が▲2二歩に手抜きで△5六銀と銀を取った直後のことであった。
高校の同窓会総会の打ち合わせを終えた後、見積書を作成、その合間にネットでこの対局をチラ観。
“羽生名人の非勢”と言われていたようだったが、この△5六銀の直後、巷の将棋ソフトの形勢判断の不利度が1000を超えたらしい。-1000を超えると“挽回不能”、いわゆる“敗勢”である。
≪多少の不利なら、羽生名人と阿久津八段の力関係なら十分逆転も有り得る≫と考えていたが、ああ、≪今日はダメかな≫と観念しかけた。
巷でも、△5六銀で「今期の“永世七冠”は終わった」「▲2二歩に手抜きはあり得ない(悪手)」などという落胆の声が上がった。
形勢判断はともかく、羽生名人においては、終盤の3一玉形の時に▲2二歩の桂取りを手抜きすることは時々あったように思う。なので、△5六銀を“有り得ない手”という感触はなかった。
実は、残念なことに、この後、入浴(さっさと入らないと後がつかえる)。
風呂から上がってネットを観ると、羽生名人が勝ったらしい。
△5六銀の後、ソフトの解析、それに指し手が進むと、マイナスの数値がどんどん小さくなり、ほぼ0(互角)になっていき、△5五角を見て、阿久津八段が投了。急転直下の逆転?であったらしい。
第2図以降の指し手は、▲2一歩成△同玉▲3三桂△同金右▲同歩成△同金▲3四歩△5五角(投了図)。
▲2一歩成以下、先手の指し手は自然な攻めの継続手に見える。ソフトの形勢判断も先手の阿久津良し(勝勢、優勢)を示していた。………この逆転に驚嘆の声が湧き上がった。
「『ponanza』を初めとするコンピュータ将棋の強さは人間を凌駕してしまった」と言われている。
先日行われた電王戦第一局を見る限り、ponanzaに人間が勝つのは至難の業のように思える。
しかし、第3回電王戦(2014年5月)で勝利した豊島七段は、コンピュータ将棋を研究してみて「コンピュータ将棋は中盤が恐ろしく強いが、終盤は中盤ほど強くない」という感触を述べていた。
これはどういうことかというと、「コンピュータ将棋は○○手先の局面を数値化して指し手を決め、それより先の局面は見ないことにより読みに穴が生じる」という弱点が終盤には露呈しやすいということである。
中盤は「駒の損得、駒の働き、玉の堅さ、手番」などの形勢判断の基になる要素を総合的に考えれば、形勢判断を誤ることはほとんどない。
しかし、終盤は詰みの有無が絶対的価値がある。なので、コンピュータの有効視界手数が30手であれば、30手を超える詰みは見えず、落とし穴(詰み)が待ち受ける道に邁進してしまったり、ソフトが示す形勢判断が真の形勢判断とかけ離れた数値を示すことが起こり得る。(昨日もソフトの分析が進む(視界距離を広げる)と、先手良しの数値は下がっていったようだ)
しかし、終盤までコンピュータが弱点を露呈させてしまうような形勢で留まれるかが、非常に難題なのである。
第2図から、桂馬を取って3三に桂を打つのは厳しそうに見えたが、桂取りを受けない一手を利用して銀を入手する方がポイントが高かったようである。しかも、△5五角も可能になっており、この△5五角が攻防に利き、とてつもなく価値の高い手だった。
実際、第1図付近での両対局者の形勢判断を訊きたいものである。
それは、竜王戦1組5位決定戦・準決勝の対阿久津八段戦で、やや不利と見られていた羽生名人が▲2二歩に手抜きで△5六銀と銀を取った直後のことであった。
高校の同窓会総会の打ち合わせを終えた後、見積書を作成、その合間にネットでこの対局をチラ観。
“羽生名人の非勢”と言われていたようだったが、この△5六銀の直後、巷の将棋ソフトの形勢判断の不利度が1000を超えたらしい。-1000を超えると“挽回不能”、いわゆる“敗勢”である。
≪多少の不利なら、羽生名人と阿久津八段の力関係なら十分逆転も有り得る≫と考えていたが、ああ、≪今日はダメかな≫と観念しかけた。
巷でも、△5六銀で「今期の“永世七冠”は終わった」「▲2二歩に手抜きはあり得ない(悪手)」などという落胆の声が上がった。
形勢判断はともかく、羽生名人においては、終盤の3一玉形の時に▲2二歩の桂取りを手抜きすることは時々あったように思う。なので、△5六銀を“有り得ない手”という感触はなかった。
実は、残念なことに、この後、入浴(さっさと入らないと後がつかえる)。
風呂から上がってネットを観ると、羽生名人が勝ったらしい。
△5六銀の後、ソフトの解析、それに指し手が進むと、マイナスの数値がどんどん小さくなり、ほぼ0(互角)になっていき、△5五角を見て、阿久津八段が投了。急転直下の逆転?であったらしい。
第2図以降の指し手は、▲2一歩成△同玉▲3三桂△同金右▲同歩成△同金▲3四歩△5五角(投了図)。
▲2一歩成以下、先手の指し手は自然な攻めの継続手に見える。ソフトの形勢判断も先手の阿久津良し(勝勢、優勢)を示していた。………この逆転に驚嘆の声が湧き上がった。
「『ponanza』を初めとするコンピュータ将棋の強さは人間を凌駕してしまった」と言われている。
先日行われた電王戦第一局を見る限り、ponanzaに人間が勝つのは至難の業のように思える。
しかし、第3回電王戦(2014年5月)で勝利した豊島七段は、コンピュータ将棋を研究してみて「コンピュータ将棋は中盤が恐ろしく強いが、終盤は中盤ほど強くない」という感触を述べていた。
これはどういうことかというと、「コンピュータ将棋は○○手先の局面を数値化して指し手を決め、それより先の局面は見ないことにより読みに穴が生じる」という弱点が終盤には露呈しやすいということである。
中盤は「駒の損得、駒の働き、玉の堅さ、手番」などの形勢判断の基になる要素を総合的に考えれば、形勢判断を誤ることはほとんどない。
しかし、終盤は詰みの有無が絶対的価値がある。なので、コンピュータの有効視界手数が30手であれば、30手を超える詰みは見えず、落とし穴(詰み)が待ち受ける道に邁進してしまったり、ソフトが示す形勢判断が真の形勢判断とかけ離れた数値を示すことが起こり得る。(昨日もソフトの分析が進む(視界距離を広げる)と、先手良しの数値は下がっていったようだ)
しかし、終盤までコンピュータが弱点を露呈させてしまうような形勢で留まれるかが、非常に難題なのである。
第2図から、桂馬を取って3三に桂を打つのは厳しそうに見えたが、桂取りを受けない一手を利用して銀を入手する方がポイントが高かったようである。しかも、△5五角も可能になっており、この△5五角が攻防に利き、とてつもなく価値の高い手だった。
実際、第1図付近での両対局者の形勢判断を訊きたいものである。