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Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

ドローイング320. 小説:小樽の翆251. return to forever

2020年12月01日 | drawing

 

 また珈琲ウォールストリートに来ちまった。

今日は、チック・コリアのreturn to foreverがかかっている。珍しくアチキの世代に通じる。

マスター「もし、旦那がひいきにしている芸妓が、そろそろ歳だしお店を構えたい、という話。続きをお聞きになりたいですか・・・」

「よくありそうな話ね。また、アチキの心を読むように、でも聞きたい」

マスター「芸妓は、医者と建築屋の二人がお気に入りだったんですわ」

マスター「それで、どちらにしようか迷った末に芸妓は建築屋を選んで、キスしてアンタを選んだんだからね、といったわけです。つまりその意図は、お店をだしたいから、お金をだしてね、というわけです。もし、お客さんが芸妓のいい人だったらお金を出しますか?」

「出さないですぅー!!」

マスター「それは、随分とはっきりしてらっしゃる、でもどうして?。芸妓のいい人になれるんですよ!」

「今時、お店出すといったって、一寸ポケットマネーで投資したぐらいで、簡単にお客がくる時代ではないし、それに設備や人件費や広告にお金がかかるし、また緻密に組み立てないとお店が成立しないでしょう。つまり昔のように旦那が一寸小金を工面して、路地裏で小さなお店でも、という時代ではなくなってきたと思う」

マスター「ほう、そうですかぁー」

「今、投資銀行が無利子、無担保で資金融資をするので、こちらを利用した方が賢い。もちろん借り入れのために事業目論見が必要だけどさ。私も、そんな目論見に関わったことがあるけど、それがないと今時どんな事業も成立しないよ。今は、そういう時代ですぅー」

マスター「ほう・・・」

「それに、小さなお店ほど、二人で一緒に努力しないと成功しないでしょう。だから一緒に苦労してもいいかってぐらいに心が通い合わないとね」

マスター「つまり芸妓がキスしたぐらいでは、アカンというわけですな」

「やはり口約束じゃダメでしょう。お互いに心が通い合ったら、じゃあ、こいつのために一緒に苦労してみるかと思うぐらいに惚れてくれなきゃね。それで初めて物事が動くんだろうな。こちらは、女にとって都合の良い、ドラえもんのお財布ではないのですから」

マスター「ほう」

「努力のしがいがあれば、戦略を練りに練って、銀行からお金を借りてきて、お店の設計をして、どこに広告をうったらよいかを考え抜いて・・・だよ。男の役割は・・・。

これって結構大変な作業だよ。今はみんなそんなことをして新しい商売をしているから、旦那から僅かばかりの資金をだしてもらって、なんていう商売じゃ失敗するのは目に見えている」

マスター「つまりこちらが努力のしがいがあるほど、芸妓が惚れてくれないと、動かんと言うわけですね」

「そうね、キスしてくれた位じゃ動かないよ。商売だって、誰でも、試行錯誤を繰り返し、様々な遍歴を重ねたあとで、失敗する人もいれば、成功するする人もいるでしょう。そんな彷徨と遍歴を一緒に経験して、まあ年季明けの芸妓と一緒に人生を歩いてゆく覚悟をさせてくれるなら別だけどさ。それこそreturn to foreverですよ。男と女が出会って、心を通わせて、それが永遠への回帰といったら、綺麗すぎるかな」

マスター「昔の芸妓の根性じゃ、今の商売はできないというわけですね」

「うん、今はビジネスライクだもんね」

マスターの腰をおっちゃったかなぁー。

昔の芸妓と旦那、忘れ去られた商店街の旦那の発想みたいだ。それに今時、遊んでいる資金は、すべて投資運用にまわすから、昔のように小金を用立てる、なんてありえるのかなぁー。

・・・

さて小樽の坂を下っていった。

街は、もう師走だ。

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