小樽は、夜半から激しく雪が降り始めた。これまでの粉雪が屋根に積もる程度ではなさそうだ。みるみるうちに積もってゆく。そして夜には立派な雪国の風景に一変した。
そんな時にコロナ禍で、カフェにゆくと過激なぐらいにエアコンを効かせてくれる。
アチキは、カフェで、そのエアコンの乾ききった空気をもろにあびて、昼寝をしてしまった。
眼が覚めたら、体全体が怠く喉が痛い。翌日になると熱が37.5°あるではないか。コロナにかかったか、いや経緯からすればエアコンの乾ききった空気を浴びて1時間後に発症しているのだから感染症でなく他の病気だ・・・、と逡巡としているうちに、翆が病院へ来い!、というのででかけた。最初に体温を計られ、37.5°と体温計は表示され、アチキの回りは警戒心の塊になった。
早速X線で肺の撮影をおこない、コロナにかかった肺ではないという診断がなされ嫌疑は晴れたが、それでもモニターを通じての隔離診療だ。
結局扁桃腺炎と診断され、抗菌作用のある抗生物質フロモックスと解熱剤をもらった。医者の見立ては正しく、2日後に38.5°の発熱があり、解熱剤を服用した。それで1週間は病の床にあった。そして回復した。そこまでは、いつも通りの扁桃腺炎の症状だった。
次の週から、歯が痛み出した。翆の病院には歯科がない。そこで街のクリニックにかかる。歯の痛い原因がわからないまま、抗生物質ジスロマックと痛み止めのロキソニンを処方してもらった。
さらに翌週には鼻炎がはじまった。じゃあ次は、耳鼻咽頭科に出向き、またまた抗生物質ジスロマックを出された。抗生物質の同時服用はいいことがないと医者はいうが、医院も診療科も別々だから、個々に薬が出されるという医療の構造的悪循環だ。
そうしていたら、今度は股間が痒い。いんきんた虫でもできたか。じゃあ皮膚科だ。いんきんではないし、というのでグリメサゾン軟膏を処方してもらう。
あとは、抗生物質を飲みながら、股間に軟膏を塗りながらの暮らしだ。
翆「高熱をだしたから、身体のあちらことらが、ひずみを起こすのよ」
そしたら、別に翆とやり過ぎたわけではないが、排尿に痛みを感じる。
今度は泌尿器科だ。そして診断されたのが、これまで抗生物質を多数飲んできたから、最近の薬に対する効果がなくなることがある。こうした抗生物質への耐性をもった細菌を耐性菌という。つまり耐生菌が繁殖し膀胱炎になっていると診断された。これに効果がある薬は限られてくるし、もしくは点滴だろう、と泌尿器科の医者はいう。
そこで体内に発生している耐生菌に狙いを定め、ミノマイシンを処方してもらった。これを飲み続けて、ようやく膀胱炎も治まった。
喉から始まり、最後は膀胱炎でペニスから細菌が出てゆくまでに、内科、歯科、耳鼻咽頭科、皮膚科、泌尿器科と渡り歩き、ようやく身体は完治した。
そして、ペニスから耐性菌が輩出されて薬漬けの日々は幕を閉じた。
人は、病にかかると、知恵のない人のように医者の間を右往左往する。まして信心がないから、ヤコブ伝に書かれた疑う人、あるいは安定のない人のようだ。二心どころか多心で、抗生物質に頼っりきったのだから、神から見捨てられてもよいぐらいだ。
そんな話を翆にしたら、笑われた。
翆「じゃあ、神を信じるしかないですねぇー」
・・・
小樽も、本格的に雪が降り出した。積もる積もる・・・。
ヤコブ書1章2-11節
5.あなたがたの中に知恵の欠けた人がいるなら、その人は、だれにでも惜しげなく、とがめることなくお与えになる神に願いなさい。そうすればきっと与えられます。
6.ただし、少しも疑わずに、信じて願いなさい。疑う人は、風に吹かれて揺れ動く、海の大波のようです。
7.そういう人は、主から何かをいただけると思ってはなりません。
8.そういうのは、二心のある人で、その歩む道のすべてに安定を欠いた人です。