書道家Syuunの忘れ物

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それでも、日本人は「戦争」を選んだ・加藤陽子著‥を読む2

2010-09-29 22:21:11 | 映画、書評など

それでも、日本人は「戦争」を選んだ・加藤陽子著‥を読む2

第1・2章日清戦争・日露戦争
ここの項目では、実際の日清戦争というものの背景に迫ると言うことはあまりしていない。言い換えれば賄賂に入ってしまって出口が見えない論考である。
ここで生徒に質問を投げかける。
「民権派や福沢(諭吉)が、日清戦争に双手をあげて賛成しているのを見ると、少し変な気分がしませんか。」
生徒‥‥「別に変とは思わない。当時の人々に、戦争『反対する』、『反対できる』なんて気持ちはなかったのでは‥‥。」
ということにたいして「民党=反政府=戦争反対、というような図式は、あまり頭に浮かばなかったですね。」ということをわざと書いている。
そして妙だと思うのは「日清戦争というものは帝国主義戦争の代理戦争だというところでは、不可避だったと思います。」と述べる。
それならどこの国の代理戦争かというと、日本はイギリス、清国はロシアだという。
同じ様に日露戦争も「日清戦争は帝国主義時代の代理戦争でしたが、日露戦争もやはり代理戦争です。」と妙な論には首をかしげざる終えない。
その日露戦争はどこの国の代理戦争かというと
「ロシアに財政的援助を与えるのがドイツ・フランス、日本に財政的援助を与えるのがイギリス・アメリカです。」と書いている。
こういう風に、日清、日露戦争の意義を歪曲して日本を卑下するというのは「やはり」という部分である。
日清戦争がイギリス、ロシアの代理戦争などと考えても妙な話だが、日露戦争がドイツ・フランス/イギリス・アメリカの代理戦争だとしたらポーツマス条約が成り立たない。
ロシアにドイツが支援していたというのは知らなかったし、第一次大戦の前哨戦と言える1914年のタンネンベルクの殲滅戦で半数のドイツ軍がロシア軍を破るという史実を見れば信じられない。
そして、フランスは元々ロシア貴族がフランス語を話すという関係からか、フランスで多く公債が売れということでフランスが直接支援したわけではない。
又、米国が支援したと書くものの、米国はロシア、日本の戦艦を共に作っていたし、ユダヤ人銀行家のシフと米国政府とは直接関係がない。
その他、日露戦争に関しては、スヴェーチン(日露戦争史は、1990年代になって解禁されたアレクサンドル・スヴェーチンという軍事思想家の日露戦争論「最初の段階にある20世紀の戦略」【(1937)、1938年処刑による封印。】)という貴族の著書を紹介している。このスターリンによって粛清されてしまった元将校の著書は、ソ連崩壊と共に表にで出来たと思うものの大した目新しさはない。
そのスヴェーチンの著書から「なにが新しい戦争だったのか」というのを「陸軍と海軍の共同作戦」としているものの乃木大将は、海軍の言い分をことごとく退けているはず。
そして、その理由としての例として出している秋山真之の手紙も事実は全く無視しているから「陸軍と海軍の共同作戦」と言うものも無理がある。
昔から、海軍と陸軍とは仲が悪いと言うのは定説である。それで海兵隊という海軍の陸兵というのが存在する。
日清戦争というところに戻ると下関条約についての論考がある。
ここで著者はどうも下関条約に関する意味が読み込めていないのではないかと思われる。「条約の第一条に書かれた言葉は『清国は朝鮮国の完全無欠なる独立自主の国たることを確認す』だったわけです。‥‥中略‥‥なんだか不思議な感じのする文章です。」
朝鮮というのは独立国になったことがない国であり、中国に朝貢するにも奴隷くらいしか無かった国。そういう半島国家という国をまともに独立させて、ロシアなどの驚異から防ぐことぐらいは考えつきそうなものだ。
そして重要ポイントの「北清事変」例の義和団事件を簡単に飛ばしてしまうどころか日本が出で来ない。
この部分だけを見ると「北清事変」を鎮圧したのがロシアであると思えてしまうほどなのは奇妙である。
その部分は「ロシアは中国の首都である北京にもたくさん兵を出していました。ロシアは、列国の連合軍(日本も参加していました)が義和団を鎮圧するまで、自分の権益を守るためだよ、ということを理由に軍隊を出すのです。」
史実は、派遣を渋っていた主力部隊は日本軍の「日本軍は陸軍大臣桂太郎の命の下、第五師団(およそ8000名)を派兵し、その指揮は福島安正に委ねられた。(Wikipe)」であった。しかも各国軍隊は略奪をしながら進撃したために進みが遅く、一番後から投入された日本軍が一番早く到着すると言う次第。ロシア軍は略奪に忙しく間に合わなかったはずである。
そして、その規律が厳正な日本軍を見てイギリスとの日英同盟と繋がる。
ところがそう言うことは一切書いていない。
そして日露戦争の部分では「山師の」ベゾブラーゾフの話しが出てくる。
これを以前のエントリーから再掲してみると、「1903年7月1日から10日まで『旅順会議』と言うものがツァーリ、アレクセーエフ提督(関東州長官)、クロパトキン、ベゾブラゾフその他の実力者を一堂に集めて極東政策を協議させた。この会議で、クロパトキン(陸軍大臣)は『満州と遼東半島の権益を守ることに優先させる』と言う事で一致し、強く戦争を支持したベゾブラゾフは事実上失脚するのである。」要するに、ベゾブラーゾフは日露戦争とは関係がない。
そして、日露戦争というのは「ロシアは満州には一切手を触れさせないで後には併合し、韓国も後にはその一部とするという意図」が一貫している。
国際政治学では「セキュリティ・ジレンマ」という専門用語があるという。
これによれば、日本がロシアに戦争を仕掛けるというのは当然という解釈と言うことが成り立つ。

この後の論考は止めよう。
なぜならこの様な本を読んでも意味がないからでもある。


それでも、日本人は「戦争」を選んだ・加藤陽子著‥を読む1

2010-09-29 00:19:40 | 映画、書評など

それでも、日本人は「戦争」を選んだ・加藤陽子著を読む1

この本を読んで「いゃーな」気持ちになるか、ならないかで自身の「戦後民主主義・毒され度」というのが測れる本だとは気がつかなかった。
全部をひとくくりにして見れば、小中学性の歴史参考書の自虐史観を詳しく慇懃に述べたと言うことに近い。従って、「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」という題とはほど遠い筋道であるのみならず、日清戦争から始まる負の部分のみを強調する。
その負の部分を強調するために、なぜ「日本は戦争を選ばざる終えなかったのか」という主題から横道にそれて、ゴミ箱を漁(あさ)るような論考はどう考えても納得出来ない部分が多い。
特に4章「満州事変と日中戦争」以降の戦時体制下になると顕著になる上に、筋道から必要でもない細かな事象や妙なキーワードからこの著者の政治的立ち位置(スタンス)というものが垣間見られる。
例えば「共産党が公然と活動を開始したことに対し危機感を強めた田中内閣が検挙を断行する。つまり、戦争に反対する勢力が治安維持法違反と言うことで、すべて監獄に入れられてしまったことですね。‥‥中略‥‥共産党の大検挙が行われている(検挙者1500人のうち461人起訴)。もう根こそぎ検挙という感じであります。」
この部分だけ見ても、共産党=平和勢力という妙な言い回しであることが分かる。
その他キーワードは「地主」、「資本家」、「ルソー」そして、「南原繁」という人物まで持ち出してしまう。
この「南原繁」に関して必要もない「短歌」を紹介しているだが、「南原繁」とは戦後に排除された人達の代わって東大総長になる人物。
あの吉田茂首相が「これは国際問題を知らぬ曲学阿世の徒、学者の空論に過ぎない」と言わしめた全面講和を主張した人物である。
この南原繁氏を崇拝しているような人物が解説する歴史にバイアスがかからない筈はない。
そう言う歴史の解説であるから、序章で「日本国憲法」肯定論が出て来してまう。
表題「なにが日本国憲法をつくったか」
「日本国憲法と言えば、GHQがつくったものだ、押しつけ憲法だとの議論がすぐに出できますが、そういうことはむしろ本筋ではない。ここで見ておくべき構造は、リンカーンのゲティスバーグでの演説と同じです。」
‥‥と言うことで(不要と言われる)憲法の前文の「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって‥‥」を引用している。
表題「戦争相手国の憲法を変える」
「日本国憲法というものは、別に、アメリカが理想主義に燃えていたからつくってしまったというレベルではない。結局、どの国が勝利者としてやってきても、第二次大戦の後には、勝利した国が敗れた国の憲法を書きかえるという事態が起こったろうと思われるのです。」
「戦争相手国の憲法を変える」というのは確か国際法違反で、MacArthurも自伝から日本国憲法を作ったことを書かなかったくらいである。
いずれにせよ、著者は日本国憲法という占領政策として一週間でつくられた憲法を「理想主義に燃えていた」と言い切ってしまうところに戦後民主主義としての一面を覗かせるものである。
そして、歴史を論ずるに当たって、過去を現在の感覚で判断するこれは禁じ手である。

以下 その2へ

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